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ヤミンvs二特

 なんだかルスリーに仕組まれたっぽい感の試合が始まった。


 対決は3回戦。

 俺たちそれぞれが騎士団の代表と一対一で戦う。

 俺たちが強いことさえ分かればいいので、2勝したほうが勝ちとかは特に無い。


 内容は俺たちに合わせてくれることになった。

 まあ、ヤミンが剣を持って戦うなんてことになったら負けるの確定だし。


 というわけで、最初は弓矢対決。


 城の裏庭に連れ出された俺たちは、騎士たちの弓の練習場まで連れてこられた。

 はるか天まで伸びる城を見上げると、城壁の上の方にいくつもの白黒の丸い的が取り付けられている。

 

 3射して、この的を射抜く勝負だ。

 遠くのほうが点が高い。


 ルスリーは満足そうに手を腰にあて、誰を代表として出すか相談している騎士たちを眺めている。


「こうなること分かってましたね?」

「そりゃもう様式美じゃからな。」ルスリーは満足げに笑った。

「様式美って。」

「増長しとる騎士の鼻頭をへし折るのは転生物の黄金律じゃろ?」

「自分の騎士団なのにそんなこと言っていいんですか?」

「まあ、うちの連中は世間を知らんし、今後アアルの人々の強さがどうインフレしてゆくかを知らん。冒険者たちの時代が来ることも知らん。一度強者と戦って、自分たちが可愛そうな被害者ではいられないということを知っとくべきなんじゃよ。」

「強者って。俺たち多分30レベルが貰えるか貰えないかくらいの実力ですよ?」

「・・・・?」ルスリーが眉を潜めて俺を見つめる。

「なにか?」

「お前、今のこの世界では30レベル超えなんて屈指の強さじゃぞ?」

「えっ!? 王都の冒険者レベルの平均って50とかじゃなかったでしたっけ?」

「そりゃ、『プレーヤーたちの』平均じゃろ。APCだけならわしが最後に居た頃ですら平均30にはいっとらんかったのではないかの。」

「ええっ?」

「そもそも開始当初のアルファンなんて、プレーヤー含めてもそんなもんじゃったろ。」

「でも、ルナって剣士レベル70レベルくらいって話じゃなかったですっけ?」

「あいつは転生者だし特別じゃ。それに70レベルはコスプレ中の話じゃ。通常時は50レベルくらいじゃないかの。」

 え? 【コスプレ】ってそんなすごいスキルなの!?

「エイイチにしたって60レベルを貰ったばっかじゃし。あいつの仲間にしても40くらいじゃ。」

「そんなもんなんですか?」

 エイイチの仲間ってランク一位じゃなかったっけ?

「ワシの知る限りAPCじゃと、レンブラントが一番強いんじゃないかの? やつでも50レベルくらいじゃな。他の騎士隊長たちはそこまではいっとらんはずじゃ。だからエリーの30レベルは他の隊長格と比べて格別弱いというわけではないのじゃ。」

「そうなんですか・・・。」


 うえ。

 もしかして俺、実は強いのか?

 アルファンでは100レベル超えばっか見てたから、強いと言われてもまったく現実感がわかない。

 

 そうこうしてる間にヤミンが弓と矢筒を受け取った。

 公平を期すため弓矢は騎士隊のと同じ物を使う。

 公平って言ったけど、普段使い慣れてるの使う騎士団のほうが有利じゃね?


「ちょっと癖をみたいので試し撃ちしてもいいですか?」ヤミンがルスリーに尋ねた。

「無論じゃ。」ルスリーが二つ返事で頷く。


 ヤミンが早速二本ほど近くの的を狙う、も、大きく外れる。


「ん。OK。」ヤミンは満足そうに言った。


 OKなのか?

 騎士団の連中、矢が外れたのを見てニヤニヤ笑っとるぞ?


「準備ができたなら始めようか。」エルマルシェがやってきて言った。

「いつでもどうぞ?」ヤミンが挑発的に返事返す。

「サリア。前へ。」エルマルシェはヤミンを相手にすることなく部下を呼び寄せた。


「はい!」

 縦ロールの女の子がこっちへと小走りでやってきた。

 鎧と服が高級だ。どっかの貴族なのだろうか。


「彼女は弓に関しては一流。私よりも優れてございます。【弓】10レベルございます。馬上からでも10メートル先の的に命中させることができます。」エルマルシェがルスリーに部下のことを説明した。

「ふむ、サリアよ、その方の力を存分に発揮するが良い。」

「お任せ下さい。騎士というものがどれだけ凄いかを冒険者の方々に教えて差し上げますわ。」得意そうにサリアが胸を張った。

「お前の研鑽を殿下に見せてやれ。」エルマルシェも檄を飛ばす。

「はい!」サリアが得意そうに顎を上げた。


「ふむ、まずはヤミン。先に見せてみろ。」ルスリーがヤミンに先攻を命じた。


「はい。」

 ヤミンは王女から名前を呼ばれたものだから、緊張した様子で前に出た。


「ヤミン、頑張れ〜。」リコが無邪気に応援する。

「おう!」


 ヤミンはリコに小さく手を降ってから的を見上げ、矢を弓につがえた。

 ヤミンは弓を軋むくらいに力いっぱい引き絞ると、一番遠くにある的を狙い矢を放った。

 

 サクっ。

 一本目は一番遠い的に命中。

 はっきり見えないが真ん中に近そうだ。


 サクっ。

 二本目も命中。

 二番目に遠い的。

 これも真ん中らへん。


 最後の一本。


「やべっ!」

 ヤミンは声を上げたが、矢は的にしっかりと三番目に遠い的に命中した。

 やべって言ってたけ真ん中じゃなかったのかな?


「やったね、ヤミン!」リコがぴょんぴょんとヤミンに飛びつく。

「さすがヤミン。こんくらいは朝飯前か。」俺もねぎらう。

「動いてなきゃね〜。でも、最後、真ん中外しちゃったし。まだまだよ。」


 ふと横を見るとさっきまでにこやかに微笑んでいたサリアが青い顔で俺たちの話を聞いている。


「次、サリア。」ルスリーが声を上げた。


「ひゃい。」


 ビクリとしてサリアが前に進み出る。

 手と足の動きがちぐはぐだ。

 完全に飲まれている。


 サリアは不安そうにこちらをチラチラと伺った後、弓を引き絞り始めた。

 ヤミンが最初に当てた一番遠い的を狙ってるっぽい。


 サリアは思い切って矢を放った。

 だが、矢は的に届きすらせず落下した。


 サリアは続く二射目を構えて弓を引こうとするも、そのまま泣き出してしまった。


「ごめんなさいぃぃ・・・無理ですぅ・・・。」


「うむ。弓勝負はヤミンの勝利じゃ。」

 ルスリーがヤミンの勝利を宣言した。

「サリアよ。今後、弓をつがえる機会も来よう。ヤミンにしっかりと教えを乞うように。」


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