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神の子  作者: 柘榴石
78/80

58 終わり

 ――― 心地いい


 とても温かくて安らぐ匂いがする。

 お陽様のようだ。


 もう少しこうしていたいけれど、瞼の裏が明るく感じるから朝なのだろう。

 どうしてか身体が気だるくて上手く動かせない。

 ロジエはゆるゆると瞳を開けた。


 瞳が映したのは陽光を浴び、明らかにほっとした顔のレクス。

 ああ、彼に抱かれているからこうも心地いいのかと理解して、ロジエは華なりと微笑んだ。

 途端、ぎゅうと強く抱き締められる。


「良かった……」


 痛いくらいに抱き締めて、良かったと心から安堵されるような事を自分はしてしまったのだろうか。

 身体どころか頭も上手く働かないようだ。


「……レクス様?」

「ああ、 どこか痛むか?」

「どこか……私 何を……? 身体が動かないんです」

「限度を超えて魔力を放出した所為らしいぞ」

「魔力……」


 ロジエはゆっくりと辺りを見回した。

 瓦礫と化した元は豪奢と思われる部屋。それを片付ける人々。一面は壁がなく其処から朝陽が光の道のように差し込んでいた。

 その光を見て全てが甦る。


「ゼノは」

「光に溶けた。お前が倒してくれた」

「……いえ……止めはレクス様でしたよ。何よりもレクス様と兄様が力を合わせたからこそです」

「いや、お前がいたからこそ俺達は共に戦えたんだ」

「私はお二人がいたからこそ立ち向えました。それにプロド様も」

「ああ、皆がいたからだな」

「はい」


 再びぎゅうと抱き締められる。

 本当にどうしてこうも彼の抱擁は心地好いのだろうか。

 優しく包まれるのも、力強く抱き締められるのも、全てが嬉しい。


「兄様、は……?」

「いるよ」


 声のした方を見れば、シエルが微笑んでいた。


「兄様、褒めて欲しいです」

「良く頑張ったね」


 シエルは優しくロジエの頭をなで、秀でた額に口付けた。ロジエを抱く大きな手に一瞬力が入ったが、気付かない振りをして「はい」と答え、微笑んだ。


「レクス様」


 ロジエは腕の中でレクスを見上げた。


「うん? どうした?」

「御褒美が欲しいです」

「珍しいな。何が欲しいんだ?」

「………」

「なんだ?」


 ロジエが口だけ動かしたので、レクスは耳を近付けた。


「……して下さい……」


 ロジエの小さな声を何とか聞き取って、驚き、顔を見れば愛らしい顔をほんのりと朱に染めた。


「人がいるぞ?」

「でも、今して欲し」


 最後まで言葉にすることなく

 輝く朝陽を後ろに二人の影が重なった。

サブタイトル『終わり』ですが、終わりません。

あと2話あります。

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