38.5 余談 おかえり ただいま
本当に余談です。
「兄様 おかえりなさい」
それは城下に出ていたシエルにロジエが言った一言。
「ただいま」
返したシエルの言葉にじりっと胸が妬けた。
『おかえりなさい』『ただいま』
まるで夫婦みいたいじゃないか!?
俺も言われたい。言いたい。レクスはそう思った。
「レクス様。兄様がお菓子を買ってきてくれました。一緒にいただきましょう?」
「あ、ああ。俺はちょっとシエルと話したい事があるから、用意しておいてくれるか?」
「はい。分かりました」
「シエルちょっと一緒に来てくれ」
部屋を出て、レクスが口を開く前にシエルが一言。
「……あのさぁ。そういうことは結婚してからいくらでもできるだろう……」
察しのいいシエルには自分の望んだことが分かったらしい。心底呆れたように言って、去って行った。
「ロジエ、入るぞ」
「どうぞ」
部屋の入り口に佇み、そこから中に入ろうとしないレクスをロジエは首を傾げて見ている。
「あー……ただいま……」
「? おかえりなさい?」
レクスが斜め下を向きつつ告げた言葉に不思議そうにしながらもロジエはにっこり笑って返事をした。
レクスは一気に距離を詰めロジエを抱きしめると
――― 絶対こいつと結婚しよう ―――
と改めて誓った。




