7.発覚
「ありがとう、代わりに怒ってくれて…」
え…先輩聞いてたの?どこから?私が誤魔化すかどうか悩んで言葉に詰まっていると、
「余計な心配かけてごめんな、でもお前があいつに啖呵切って言ってくれた事は、全部嬉しかった。俺の小説…読んでくれてたんだな」
「データ貰ったし、それに本当に面白かったから。先輩?さっきの…あの人が言ってた事気にして無いですよね?きっとあの先輩は嫉妬しただけですよ!気にしちゃダメですからね!」
「大丈夫だよ、気にならないと言えば嘘になるが…。俺あいつの気持ちも痛いほどわかるんだ、お互い同じとこに居て同じ想い抱えていたから。読んでもらいたい、ランキング入りたい、タイトル欲しいってな。だから気持ちの整理に少し時間がかかるかもしれないけど、多分大丈夫だと思う」
「そっかぁ…男の友情ってやつですね!コンテストはこれからも沢山ありますもんね!」
私はホッとした事もあり、安易に先の話をしてしまった。
「うーん、多分あいつらもだと思うけど、これが最初で最後の挑戦だったんだ」
「え…どうして?」
「お前…俺達が三年って事忘れてるだろ?受験に卒業就職活動……これからどんどん忙しくなるからな、遅いくらいだよ」
私は我に返った、そう…現実を突き付けられてしまった。足に力が入らなくなる感覚?ショックで目の前が真っ暗?ううん、私はただ動けなくなって思考が停止した。まだずっとずっと先だと思ってた、もっともっと仲良くなれると思ってた……のに。
お祝いムードから一転、、、どころか私は転がり回りたかった、駄々を捏ねてでも先輩を引き留めたかった。この気持ちも先輩に対する気持ちも全部全部ぶちまけたかった。
この世の終わりの様な顔をした私の顔を見た先輩が心配して声を掛けてくれる、やめて優しくしないで…私泣いちゃう。
「俺より辛そうにしてんなよ、俺は大丈夫だから気にするな!」
やめて先輩、それ以上鈍感発動しないで…私すごい事言っちゃいそうになるから。
「感想欄見てみるか?もっとすごい事書き込まれてるんだぞ?あ!あの人も感想くれてる…………」
「あの人?ああ…ずっとコメントくれてるってた…」
(それ実は私なん……)
「これもしかしてお前?お前が『迷い猫』…さん…」
「え?なっ…なんで?どうして…ちっ違いますよ?」
「いやお前だ、このコメントの内容…主人公が泣いたとこを読んで思わず助けたくなったって書いてるっ」
「さっきも言いましたが、世の中弱っている男性が好きって人もいますってぇ!私だけじゃないですよ?」
「いや…違うんだ、主人公泣いていないんだ。こっちは……。主人公が泣いたのはお前に渡したデータの方だけで、サイトに投稿した方は……かっこつけて誤魔化したんだ」
「そ…そんなぁ」
「ずっと、最初から応援してくれてて…俺ずっとこの人のコメントに励まされてたんだ。勝手にお前との共通点探してたし、似てる所見つける度に…そんな事あるはずが無いのに、同一人物だったら…なんて思う様になってしまってたんだ。
でもそんなの応援してくれてるこの人にもお前にも悪い気がして……ってなんだよ!お前かよー、なんで隠してたんだよ!」
「ごっ…ごめんなさい隠してて!でもっでも本当に悪気があった訳じゃ」
「分かってるよ、そんな事びっくりしただけだよ。でもなぁ、受賞と同じぐらいの衝撃だぞ?わかるか?」
「そっ…そんなにっ?」
「当たり前だろっ!好きな子がずっとずっと前から応援してくれてたなんて…俺の心臓どうする気だ!」
「んなっ!!!!!!????×⌒≡>√▲↑×」
「責任、とってくれるよな?」
(その顔やめてぇーーー!!!!!!)
ーこれが…先輩の初めての脅迫という名の告白ー




