4.プロフィール
「うわ…珍しい、先輩がニヤニヤしてるっ!」
「おっ!良いところに来たな、ふふふ聞きたいか?」
(うわぁ…ニチャッてるぅ)私は一瞬そっと扉を閉めようかとも思ったが、ウズウズニヤニヤしている先輩の話の腰を折るのも悪いと思い、指定席であるソファーの上で…正座をして衝撃に備えた……。
「ランキングに載ったんだ」
「え?」
「俺の書いてた小説がランキング入りしたんだ」
おもむろに机に肘をつき口元を隠し、そして粛々とした雰囲気を醸し出してはいるが、ニチャり感が隠しきれていない先輩。
「すごいっ!先輩っ!おめでとうございますっ!」
「いや、うん。下位なんだけどな…。でも思ってた以上に、結構…いやかなり嬉しくて」
癖なのかな?先輩が眼鏡を外して拭き始めた。
月並みだけど私も自分の事の様に嬉しくなり、心がほっこりなってニヤニヤしていると、
「お前のおかげでもあるんだ、SNSの…コネクトから読みに来てくれる人が結構いて、感想とかレビューとかしていってくれる事が増えたんだ」
「そうだったんですね!良かった…少しでも役に立てたんなら私も嬉しいです!」
「うん、…ありがとう、感謝してる」
(うん、ってー!うんって言った?待ってぇ可愛いかよ!)脳内の私は正座で前に突っ伏し、ソファーをバンバン叩いて悶えまくっていたが、平静を装い先輩に問いかけた。
「やっぱりコメントとか嬉しいんですか?」
「勿論だ!モチベに繋がるし、厳しい言葉であっても読んでくれてんだし…不思議と素直に受け取れているな」
「へぇ…先輩大人ですね!」
「いや…俺は所詮素人だからな、どんな意見でも有り難いと思っているんだ。でもシンプルに褒めてくれる人もいるから、それは素直に嬉しいかな」
「そっそうなんですか?アドバイスとかじゃなくても?」
「ああ、逆に嬉しいまである。ほら見てみるか?」
そう言って先輩はノートパソコンを持って私の隣に座って感想欄を見せてくれた。
「な?結構厳しい指摘も多いけど、この人いつもシーン込みで感想言ってくれているんだ。どこどこのセリフが面白かったーとか、主人公の怪我を心配してくれたりとか、投稿一発目からずっと読んでくれているみたいでさ、こんなん見たら頑張って続き書こうって単純にそう思えるんだ」
「へ、へーソーナンダー!せっ先輩!先輩のペンネームもアイコンも可愛いデスネーッ!」
「あ…これな、あいつらもペンネームで投稿してたし…この写真うちで飼ってる猫なんだ」
「え?先輩猫飼ってるんですか?えーいーなー!じゃあペンネームはその子が由来なんですか?」
「いや……それとはまた……別」
少し言葉を濁す様な先輩に私はその先を聞けずにいると、
「もうすぐ応募したコンテストの結果発表があるから、それまでには完結させたいんだ、入選とかを考えているわけではないけど…まぁテストもあるし区切りかな?」
なぬ?何それ聞いてない…さっきの話もそうだけど、私は先輩の事を何も知らないし…踏み込んで聞けない事も多い。当たり前の事なんだけど、『モヤモヤ』してしまう。
正に一喜一憂……。机に戻って行った先輩を見つめながら私は自分の中のままならない感情を持て余したまま、手の中のスマートフォンの画面に視線を落とした。
ー ● 春野 桜猫 ー
趣味で小説を書いています。
ジャンル→ファンタジー(下記リンク)
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『平凡勇者は自らチートを掴み取る!』
〜Fランク冒険者として薬草採取していたら
いつの間にか魔王討伐に駆り出された男の話〜




