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念話電話


 楓はふと思い出したように、ホログラムを作り出した。

 辺りに桜の花の映像が舞い散る。楓が辺りを散らす花弁の映像を出して、ティティラファリカがそれを検証する。


 無害の力なので検証しても大丈夫だろう、と事前にアレクライトとゼランローンズから了承を得た。


「カエデちゃんの魔力は、周囲に霧散するように拡がってそれが見える物として浮き出す効果があるようだわ……」


 体から離れた魔力を行使できるはずがない、と言われているが、ゼランローンズは出来るのだ。

 息子が無駄に器用なので、それを考えると、できる人がいてもおかしくはないが、自分にできない事があるのは、魔導師として悔しいと、夫人は素直に感想を述べる。


 月華はふと思いついて、部屋の端へゼランローンズと行き、ゼランローンズに耳打ちをする。ゼランローンズは伝言を携え、楓にところへいく。


「――と、言う事なのだが、俺にはよくわからないが、楓さんは何か掴めましたか?」

「えぇ、月華の言いたい事はわかりました。あの、それより敬語……やめません? アレクとも砕けた感じで話してるし、ゼランローンズさんとだけは、まだお互い敬語ってのも、おかしいかなって……」


 秘密を持ち合う仲なのだ。もう少しだけ距離が近くてもいい気がして、楓から提案する。

 現に彼は数日前から月華と砕けた口調で、呼び捨てにしあっている。未だに楓とゼランローンズだけが敬語同士なのだ。

 ゼランローンズは頷き、握手をするときのように手を出して口を開く。


「ならば、ゼラと呼んで欲しい。カエデ」

「わかったわ、ゼラ」


 握手を交わし、稀人と保護者というよりは、友人同士と接して行くようお互いしよう。

 そして楓は月華からの伝言を実行すべく、覚えた魔力を感じ取り操る。

 自分の魔力を糸のように伸ばすイメージで、月華の方まで伸ばす。

 ゼランローンズとティティラファリカが、その魔力を観察する。魔力が月華までたどり着くと、楓は声を乗せるイメージをする。


――月華の床に座って、胡座はよくないわよ? しかもスカートで!


 その声を聞いた月華は、うんうんと頷いて立ち上がる。楓の伸ばした魔力で声が届いた。

 月華がいそいそと楓の方へ戻ってくる。


「届いた! お説教じみた何かが届いた!」


 楓は月華の返事を聞いて、お互いにハイタッチをする。


「だけど一方通行よね、コレ」

「ゼラと魔力を伸ばしあってみたらどうだ?」


 月華は髪に巻かれてたリボンをしゅるりと解き、両端を楓とゼランローンズの手に握らせる。

 真ん中を指差して、ここまで魔力を伸ばしあってみればいい、と指定する。


 ティティラファリカは、なにが起こってるのかわからないので、月華の腕をからめとって説明をするよう口を尖らせる。

 ゼランローンズの親であるが、可愛らしい雰囲気なのでちょっと和む。


「紙で作ったコップに、ピンと張られた糸をくくりつけると、離れた場所に音が伝わる『糸電話』という遊びがあるんです」


 魔力を糸に見立てて音を乗せる。喋るより念じて、魔力に言葉を載せる。念は魔力で乗り、伝わるかもしれない。

 音……周波数を届けるという事の、真似事を魔力で出来るか、やって貰ったのだ。


 周波数と言われても電気を使っている製品がないし、ラジオやオシロスコープなどないこちらでは、数値や波形を見ることができないので、イメージができないだろう。

 原始的な糸電話の説明をしておく。


 糸電話くらいはあるかと思ってみたが、電話の概念がないので、子供の昔遊び的な物としてすら、存在してなかった。

 ティティラファリカはメイドに糸電話を作らせて試してみると、声が届いたのかきゃあきゃあ騒いでる。


 楓とゼランローンズは魔力電話(仮)を使って会話をしてるのか、リボンの両端を掴んだまま目を閉じて、頷いたりしてる。


「なるほど……互いに許可し合えば、会話も可能のようだ」


 楓とゼランローンズの間で、メッセージアプリの許可でも行ったかのような感じだ。楓にはこの方法が一番しっくりきたようだ。

 試行錯誤して、魔力での念話を可能にした。

 そして、リボンから手をを離して、ゼランローンズは月華の髪に結ぶ。


「だけど体から離れた魔力を使える人なんて、わたくしが知る限りだと、ゼラとカエデちゃんくらいだわ」


 どうやら実用性に欠けるようだ。

 手から離れた魔力を扱えないものが多い、そのうちの1人であるアレクライトも首を捻ってる。

 月華も理論はわかるが、自分ではうまく魔力を伸ばせない。

 月華はふと思いついたように顔を上げる。そしてアレクライトを担いで、部屋を飛び出していった。


「何故、女性側が担いでるのだ……」

「お姫様抱っこじゃないだけヨシよ、アレク的に」

「(月華はまた突拍子もない事を思いついていそうで、怖いんだけど……)」

「(おそらくカエデたちが居た世界から、ヒントを得てるのだろうが……やはり、何をやらかすか予測はつかないか?)」

「(まったくもってつかないわ。月華は理系……工学系っていう分類の人間で、機械に強い感じがするのよね。そこから何かヒントを得て、アレクを巻き込んで何かをしようとしてるっぽいわ)」

「(こちらでいう、魔導具の作成や構造に、明るいような方々の部類と思っても?)」

「(うん、そんな感じ。だからガチガチに詳しい事まで分からなくても、何となく理解して『イメージが大事』な魔法に起こせるんだと思うわ)」

「(発想が柔軟なんだな……羨ましい)」


 早速、念話を使いこなす2人は、ため息をついた。

 とりあえず、『規格外』が、やらかす何かを見届けようと後を追った。


 夫人はメイドと、2時間ほど糸電話で盛り上がっていた。


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