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森のクジラさんに会おう。


 ティティラファリカに支度をするように言われ、楓は動きやすい服をと思ったが、ディジニール製の服はぜんぶ、動きづらいロングスカートだ。

 夫人が、自分の魔法付与のかかった服を貸してくれるというので借りた。


 膝丈のスカートにレギンス、身軽に動ける付与がかかったブーツを着用して、隠蔽効果が付与されたローブを羽織る。


 そして夫人とホールに出ると、鎖帷子と籠手をつけた、中世の騎士の姿っぽいをしたアレクライトとゼランローンズが立っていた。


 そしてその横には男装姿の月華。彼女は重たそうな鎧などは身につけておらず、皮の籠手をゼランローンズにつけてもらっている。工事現場の職人さんがつけている腰袋に、武器になりそうな工具と、回復薬っぽい試験管のような瓶や水筒が入ってる。


「これで殴れば、いつもの3倍強く殴れるのか?」

「違う、防御の付与が掛かっているものだ」


 朝の様子からは考えられないくらい、月華がいつも通りだ。ゼランローンズが何かしてくれたのだろう、と楓は安心した。

 が、実際は関西弁の毒ヘビに、毒気を抜かれたのだった。


 アレクライトを見ると、左右に帯剣してる。

 双剣使いという、厨二心をくすぐる装備に、ちょっとワクワクする。だが、楓は後方支援部隊なのでその活躍を見ることは無い、という事に気づいていない。


 シェリッティア家の主人、ザーナカサブランはガチガチの重装備だった。フルプレートメイルというやつだろう。

ゲームのタンクや重騎士といった職業の人が、着けてる装備だ。

 ティティラファリカが、雨除けの付与を馬と人にかけ、馬や馬車にみんな乗り込んだ。


「ゆくぞ!!」


 地面が揺れそうな声をザーナカサブランが上げて、騎乗の面々が駆けていく。

 楓は後方部隊の幌馬車に乗って向かう。

 馬車の中にはメイドさんが3人と、ティティラファリカも乗っている。

 回復薬や解毒剤、日を跨ぐ戦闘に備え、野営用品と食料が積まれて、ベルトで壁面に止められている。


 ティティラファリカは楓をじーっと見つめてる。その視線に気づき楓が背筋を伸ばす。


「カエデちゃん……貴女昨日より魔力強くなってない?」

「へっ?!」


 楓の声が裏返る。魔力など持っているわけがない。魔法など使えない地球の人間だ。


 だがティティラファリカの話によると、楓の魔力はとても圧縮されてるもので、昨日は一般女性拳大の大きさだったが、今日はゼランローンズの拳大になっていると言う。

 その魔力はいまだ圧縮されたままで、大きくなっているとのことだが、本人はまったくそれらしいものを感じない。


「圧縮魔力は、周囲の空気中に漂ってる魔力に擬態する性質があるのよ。だから魔力がある位置をじっくり見つめないと発見できないわ。だから男どもが気づかなかったのね……カエデちゃんの魔力が固まってるのは、ココだものね」


 そう言って楓の豊満な胸を突く。

 野郎が気付くという事は、胸を凝視する事になるので、ムッツリの烙印を押せる。

 アレクライトとゼランローンズは紳士だった、ということか。と楓は安心する。


「でも、何も感じませんよ?」

「多分、今まで魔法に触れてこなかったからね。鯨退治が終わったら、魔力を体に循環させる訓練してみる? そうすれば、魔法が使えるようになるかもしれないわ」

「は、はい。お願いします」

「ティティラファリカ様は、シェリッティア家にお嫁に来られた方です。魔導特化家系に嫁げる実力をお持ちの方ですので、魔法の腕に関してはご安心ください」


 メイドがティティラファリカについて、安心させる言葉を述べる。が、シェリッティア家の凄さがイマイチわかっていないので、笑顔で頷くだけだった。

 だが、楓の中のヲタクメーターは、振り切れんばかりに上がっている。


 一方、騎乗隊は馬に強壮剤を与え、猛スピードで駆ける。ものすごい勢いで駆けてるにも関わらず、その馬の横を併走――もとい併翔するスカイサーペントの姿がある。


『クマ人間とさっきの姉ちゃん、もう来たんか!』


 ゼランローンズとその後ろに乗ってる月華のそばまできて、隣を飛んでいる。

 一番最初に「ごめんやで」と言ってきた小柄のヘビだ。


『なんか、食べれば食べるほど強くなるらしくて、すぐに討伐隊が組まれたよ』

「ホントに会話してら……」


 ピキュピキュ言い合うヘビと月華を見て、アレクライトは驚きと呆れが混じっている。


『せやで、あいつら遠慮っちゅーもん知らんねん』

『そういや、何とかカントカの、大きさや色ってわかるのか?』

『ディゴットフェルゥや、多分、森の物食ってるから緑か茶色やろ。ワシらの巣ぅ壊しよった時は、まだワシくらいの大きさで、黄色やったけどな』

「ヘビ太たちが逃げてきた時の情報だが………」


 月華はスカイサーペントからの情報を伝えていく。

 皆が口々にヘビへ礼を述べる。ヘビは人間の言葉が喋れないが理解はできるようだ。そして、ヘビはしゅるりと月華の首に巻きついて休みだした。


『ワシ……15分……くらい……しか飛べ……へんねん……。ちょお……肩……借りてるで……』

『体ちっこいしな……ってか避難しなくていいのか?』

『ワシらが、ディゴットフェルゥの事教えてん。見届けるんが、スジっちゅーもんやろ』

『見届けるより、森の中にいる魔物へ、避難を呼びかけて欲しいんだけど……』

『無理や。言葉通じひん』

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