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アレク先生の魔法講座初級編

 楓の方から、別の方向へぐりんと首を向けると、視線の先の人物は、アレクライトと絶対に目を合わさないように、外の景色を見てる。     


「ツキカ?」

「ん? なに? 久しぶりの、冬らしい、冬の景色を堪能してるんだけど?」


 視線を向けず月華は上擦った声で答える。その声色が答えだと言わんばかりに。


「なにやってんだよ、お前! 秘匿するって言っただろ! 力をポンポン使うなって!!」

「お前、眼鏡属性だったのか? それはすまんかったなぁ?」

「眼鏡属性ってなに!? そんな魔法属性ないよ??」

「眼鏡を掛けてる人に劣情を抱く性癖の男の事」

「れつじょ……?! せいへき?!」


 頬どころか耳まで赤くしたアレクライトを、ニヤニヤしながら見る月華はどこぞのオヤジか? と言わんばかりだ。

 月華は閃いたと言わんばかりの顔をして口を開く。


「あぁ、違うか。アレクは、おっ……」

「ツキカは外の風浴びてこい!」


 室内前方の引き戸を開けると、ゼランローンズが手綱を握って座っている。その横に無理やり押し出した。そしてピシャッと引き戸を閉め、内鍵をかける。

 月華がなにを言おうとしたのかわかっていない楓は、小首を傾げてその様子を見ているだけだった。とりあえずイジってるという事だけ理解した。

 イジリに耐えかねたアレクライトは会話を続けさせないために、月華を離したのだな、と。


「で、カエデはツキカに、目を治してもらったのかな?」

「えぇ、朝ごはんの後に紅茶を頂いたのだけど……」


 温かい紅茶の湯気で眼鏡が曇ったので、眼鏡を外してくもりを取るために振っていたら、月華は楓に目を閉じるよう言ってきたので閉じると、目蓋を月華の手が覆って、暖かい風のような感覚が流れてきて、目を開けても大丈夫と言われたので開けると、月華の顔がハッキリ見えたのでビックリして周りを見渡すと、視界がクリアになっていたという。


「生きてる万能薬かよ……アイツ……」


 この世界では、落ちた視力を治療する術はない。なので眼鏡を掛けている人も一定数いる。


 筋肉痛を治し、呪いを解き、視力を回復 もう治す事に関しては何でもアリ。だけど魔法でないのなら何なのだろう……説明がつかない。と、アレクライトは口をへの字にする。


「魔法だったとしても不思議だわ。魔法のない世界から来たのよ、私たち。魔法は空想の産物だもの」

「カエデ、手を借りていい?」


 頷いた楓の手を取り指を絡め握る。アレクライトはそこからゆっくり魔力を流す。何かが楓の手を覆う。


「これがオレの魔力。浄化の魔法をかける時に流す魔力。属性は持たないから何も感じない。何かがある感じはするけどね。んで、次が雷属性」


 ピリピリとした感覚が手にまとわりつく。

 何かはあるけどそれを表す言葉がない。アレクライトが手を離すとその感覚は霧散する。


「こんな感じで術者の手を離れると、魔力は霧散するんだ。魔力は表面から体内に浸透しないものなんだ。雷で魔物を貫く事はできるけど、自分の手から出すんだ。離れたところに出す事はできない」


 霧散して消えた魔力は空気に還り、使って減った魔力は呼吸からジワジワ取り入れゆっくり回復する。

 魔力の積載量は体の大きさではなく、体質によるという。


 体を治療する――内側を治すという事は、手が当たらないから出来ないものなのだ。

 そして魔力を譲渡するなどして、急速回復させる事もできない。

 と、アレクライトは説明してくれる。


 魔法は万能ではなかった。


 魔力を蓄積する魔石が見つかって、魔力を流すことができる鉱物から魔力回路をつくり、火の魔法を人工的に起こすことが出来るように、水をスイッチ1つで出せるように、部屋に風を送れるようになった。


 人々の暮らしは一緒なのだ、利便性を求めて研究して、形にして、暮らしが便利になっていく。


 そう考えると楓は少し気楽になった。どこも人々はあまり変わらないのだと。


「ただ、ゼラは魔法の使い方が巧過ぎて、この枠に当てはまらない。あいつは離れた場所にも魔法を起こせる。今この馬車が暖かいのは、あいつの魔法のおかげ」


 離れたところへの魔法の出し方は、使いたい属性の魔力に変化する前の予備魔力を出して、魔力が使いたい所へ伸びたら先端にある予備魔力を解放すれば、手から離れた位置で発動するらしい。アレクライトは自分には出来ないので、らしいとつけて説明する。


 離れた、と言っても予備魔力の糸で繋がっているので厳密に言えばくっついてるのだが、目の前で炎を出すのと5メートル離れた位置で炎が出るのは大違いだ。


 そういった説明を受けて、楓は魔法といえども、不思議現象がありつつ物理的な現象なのだなと、ぼんやり自分の中で理解した。



 2時間くらい馬車に揺られていた頃に、馬車が急に止まった。

 電車や車の急停車のような衝撃はなく、速度が徐々に落ちて次第に動かなくなったので、止まったのが分かった。

 しかし、停まるといった言葉もなく速度が落ちて、停車したことは異変である。


「どうした?」


 アレクライトは、室内前方の引き戸についてる小窓を開けて、ゼランローンズに訊くと、彼は苦い表情で口を開く。


「野盗だ」


 魔物を避ける街道を通っていても、野盗は人間のため避けれないので遭遇する事もある。それが今起きた。


「カエデさん、外に姿を見せないように。アレクが外に出たら内鍵をかけて……ってツキカーーーー!!!!」


 身の安全を守るれように楓に指示してる側で、月華は野盗に向かって飛び出していったので、ゼランローンズは思わず絶叫した。声がちょっと裏返っている。


 アレクライトは、馬車の内窓の小窓を閉めて、外から室内が見えないようにし、楓にすぐ鍵をかけるように伝え外に出て行った。

 楓は言われた通り鍵をかける。少しだけ震えながら、小窓をほんの少しだけ開けて外の様子を覗き見た。

ひと気の無いところに出た奴らなので、野盗扱いしています。

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