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おネェちゃんに任せなさい☆


 旅の支度さえできれば問題ないと、ゼランローンズは思っていたので、おネェもといディジニールに託したようだ。


 金が無い状態で、過度のお洒落は身に過ぎることだと、2人は慌てて伝える。

 ディジニールはクスクス笑って気にしないように言ってくる。


「あのね、この世界の男は、女の子にオシャレをさせてナンボって感じなのよ? 女の子じゃ、独り立ちだってきびしいもの。女の子が無能って言ってる訳じゃ無いのよ? 女の子を働かせる男が、無能ってことよ。とはいえ、今まで野郎に負けず働いて稼いできた貴女たちには、受け入れることの辛い価値観だろうけどネ……」

「それは、恋人やら妻になる人にしてやることで、拾った異世界人にする事ではないと思うんですが……」


 月華はこの世界に馴染めなさそうな予感に、ため息をこぼしお茶を飲む。隣にいる楓も頷いている。

 目の前にいるおネェはニンマリと唇に弧を描き、月華を見つめ口を開いた。


「んじゃ、ツキカがゼラちゃん、カエデがアレクちゃんの恋人になればいいのね。オッケーオッケー♪」


 何がオッケーなのかわからないが、外堀を埋め立てて造り上げそうな勢いを、いつでも発揮しそうなおネェを止めておかねば、と楓が慌てて首を振るう。


「だ、ダメです! 相手にも選ぶ権利があります!!」

「大丈夫よん、夜這い吹っかければ、責任とってくれるわよ」


 大丈夫の意味がわからない、と楓は慌ててそんな事するわけないと首を振るった。月華も頷いた。


「ま、シェリッティアの家は異世界人――稀人を大事にするから、アンタたちは大人しく大事にされてなさい」

「でも、やっぱり働かないと……生活費だって自分で稼ぎたいし……」


 自分の価値観が、この世界には合ってないのは、よく理解したつもりだが、納得はしていない。

 助けてくれるのは嬉しいが、その恩に報いる事が出来るのだろうか……ぐるぐるとネガティブな気持ちが渦巻く。

 そんな楓の隣で、月華はクッキーを頬張り何かを考えてる。

 おネェはさっさと面倒見られてしまいなさいと、口をへの字に曲げていた。


「そうだわ! アタシはアンタたちの友達よ! 友達が困ってるからアタシは助けるの! アンタたちが助かればアタシは嬉しいからWin-Winね!」

「雑だな、おまけにずいぶんと強引だな」

「ふふん、なんとでもお言いなさいな! そ、友達だからいいのよ! それにアンタたちを着飾ってみたいのよ! 腕がなるわ!!」

「ちょっとディジニールさ「ディーかディジーって呼んでちょうだいな」


 友達だから愛称呼びは当然でしょ! とグイグイくる。

 おネェのパワーに圧倒されながらも、楓はディジーと呼んだ。

 ディジニールはうんうんと満足げに頷き、ニッコリ笑う。


「カエデもツキカも、愛称で呼ぶには短い名前よねぇ?」


 ディジニールは2人を愛称で呼びたいようだ。

 社会人になってから、あだ名などで呼ばれる事は、昔より減った。

 今の時代、いつセクハラが発生するかわからないので、あだ名呼びは控えるようにと、通達があるくらいだ。

 楓のいた小さな会社はそんな事なかったが、友人の会社には、毎年春になると通達があったらしい。


「苗字で呼ばれてましたからね。あっても苗字2文字で呼ばれる、とかくらいでしたね」

「家名よりも名前の方で呼びたいわぁ」


 さっきから、ディジニールと楓ばかりが、会話をしている気がしなくもない、と2人は月華を見ると、彼女はまだ何か考えてるようだった。


「ツキカ、さっきから黙っちゃって〜、女子トークに参加なさいな!」

「ん? あぁ、双子って何だろうって考えてたから……」


 そう。ディジニールは、ゼランローンズと双子と言っていた。

 共通点はあまりない。190センチを超える大男と、175センチくらいの背で細めの男が、双子だという。


 声はゼランローンズの方が低音で、ディジニールは喋り方が明るいのか、さほど低音に聞こえない。

 同じと思われるのは髪の色くらいだ。

 金色の目のゼランローンズに対し、ディジニールは桃色だ。


「ゼラちゃんは運動好きだから伸びたのよ、たぶん」


 雑な回答と思われるが、あまり深く考えても仕方ないし、どうせすぐに忘れてしまいそうだ、と月華は考えるのをやめた。そして口を再び開く。


「んで、お茶をのんびり飲んでるが、この後は何かあるんですか?」


 ディジニールに手紙の内容を教えてもらったが、その内容も、弟に支度を頼むという事しかわからない。

 この後、自分は何の行動をしておくか知りたい事を告げると、ディジニールは指を、チッチッチと言いながら、左右に振るう。


「旅支度のアイテムを買うのに、うちの商会の従業員を呼んだから、それを今、待ってるトコロよ」

「ディジーの商会って事は、商売をなさってるんですか?」

「そうよぉ、王都の流行にティア商会あり! 貴婦人がたはティアのドレスを持つ事が、社交界のステータス! ってぐらいまでのブランドに上り詰めたわぁ。ちなみに、アタシは服のデザイナーもやってるのよ」

「……ディジニール様、もうすぐ到着とのことです」


 控えていたメイドが声をかける。

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