ボンクラ
読み飛ばしても大丈夫なやつ。短いです。
照れがあり、目を閉じたジュエルの唇に、柔らかい感触が伝わる。
ジュエルは瞬時にそれが唇だと理解して、ついばむ様にキスを返す。
次第にキスにも水音が混じり、気がつけばソファではなく奥側の寝転がれる場所に移っていた。
そこでも、お互いの唇を貪り合うのはやめない。
いちゃついていた間に、大きめの街についた。
街並みが可愛いので、ジュエルは馬車の窓越しにスマホで写真をパシャパシャ撮っていた。
そしてツブヤイッターを起動して、写真のアップロードを掛けようとしたら、スマホの上部には圏外と記されていた。
王子がどうしたのか訊ねると、圏外でツブヤイッターもオンスタも起動しない事を相談した。
「恐らくそれは、ジュエルのいた世界の魔導具なのだろう。残念ながらこちらでは起動できぬ……力になってやれず俺は何て不甲斐ないんだ……すまない……」
悲しさを、顔や言葉で表してジュエルの手を取り見つめると、ジュエルが顔を赤面させ首を振る。
ジュエルに、自分を心酔させるべく、甘い言葉を吐き、優しく触れ抱きしめる。
王子は自分勝手でボンクラと呼ばれているが、聖女を手に入れる為に、女性が喜ぶ振る舞い、仕草、視線などを徹底的に勉強し、その成果を現在如何なく発揮をしている。
とても無駄に近い努力家だ。
———聖女に憧れ敬い心酔した自分の様に、聖女には自分に溺れてもらいたい。
聖女への執着は狂気の域だ。だが自分でもわかっているので、口に出さないよう気をつけている。
小さい頃、聖女という存在を知って、自分が成人するくらいに聖女を呼べる年になると習った。
魔物の発生を抑え、弱らせるなど、この世界の誰にもできない所業だ。
魔物を屠ることはできないが、この世界の人を助ける役目を担う彼女は、まさに聖女だ。
——ようやく逢えた。
短めの黒髪は伸ばしてもらおう。すこし平坦な顔をしてはいるが充分に愛らしい。
幼さを残している顔立ちなのが、庇護欲をそそる。
聖女がこのような愛らしい人でよかった
心から安堵するとともに、自分に酔わせる方法を様々な方向から考える。
街にある宿で2人は同じ部屋で、一夜を共に過ごし明かした。
ゆっくり朝食を取り、王子は部下に、服屋でドレスを調達してこいと命じる。
ジュエルが着れそうな服のサイズは、街に溢れてるので、流行の物だって簡単に手に入るだろう。
聖女の服のままでいて欲しくはあるが、寒そうだ。
雪が長く続くこの地方で、それは可哀想なので、冬用の服を用意するから着て欲しい。
王都に着いたら仕立て屋を呼んで、似合うドレスを沢山作ろうと提案する。
ジュエルは目を見開いて喜びキスをする。
王子もキスを返し、再び2人は寝台に行きドレスが届くまで、互いを貪った。




