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第二十六話 共に踊るもすれ違い

ヴィリアンヌと踊るために策を練ったリバシ。

それがヴィリアンヌの誤解を深めている事も知らず、ダンスの時間は始まるのでした。


どうぞお楽しみください。

「生徒諸君! 社交会を楽しんでもらえているだろうか! ここからの時間はダンスを楽しんでもらいたい!」


 リバシの言葉に、生徒達はざわざわしながらそれぞれが相手を探します。


「ではヴィリアンヌ嬢。お手を」

「はい」


 壇上から急いで降りてきたリバシは、ヴィリアンヌの手を取りました。

 ノマールの引き立て役になろうと考えていたヴィリアンヌの思考は、その瞬間に真っ白になります。


(おっおお踊るのよね!? リバシ殿下と、手に手を取って……! どっどどどうしましょう!? 最初のステップは右足から……! み、右ってどちらですの!?)


 その動揺にリバシは、自身の提案を後悔していました。


(この次にノマールと踊るのを考えたら、落ち着かなくなるのも無理はないか……。酷い提案をしてしまったが、ヴィリアンヌが他の男の手を取るよりは……!)


 そんな内心を押し隠して、二人はにっこりと微笑みます。


「ではこちらに」

「はい」


 会場の真ん中に二人が立ったところで、楽団が演奏を始めました。

 リバシの手がヴィリアンヌの腰に添えられます。


(きゃああああ! で、殿下の手が! 手が! 私の腰に! これまでダンスは何度もしてますのに、何故こんなに頭の中が熱くなるのでしょう!)

(腰細い! それにやはりヴィリアンヌの匂いは頭が痺れるほど魅惑的だ……! もっと強く抱き寄せたら……! いや! これ以上怖がらせるわけには……!)


 二人とも頭が真っ白になりました。

 しかしそこは王族と貴族。

 幼い時からダンスを叩き込まれてきたリバシとヴィリアンヌは、朦朧としながらも音楽に合わせて華麗に踊ります。

 それを見ていたダンス指導の教師は、感嘆の声を上げました。


「音楽に完全に身を委ねている……! そして普通なら次の動作を意識する事で生じる、動作の微かな引っかかりさえ全くない流れるような動き……! 素晴らしい……!」


 生徒の中には踊りを止めて、二人のダンスを眺める者さえ出始めます。

 しかし二人は皆の注目など知る由もなく、ただただ共に踊れる喜びに浸っていました。


(あぁ、幸せ……)

(時よ! このまま永遠に……!)


 やがて曲が終わり、二人はぴたりと動きを止めます。

 凄まじい拍手が巻き起こりますが、二人はお互いを見つめ合ったまま動きません。


(あぁ、やはり私はリバシ殿下を愛しているのですわ……。叶うのならばノマールではなく私を見てほしい……! そのためなら私は何を捧げても惜しくはありません……!)

(もうこの手を離したくない! いっそここで婚約の意思を伝えてしまおうか……! 断られても構うものか! 王族の力を濫用してでもヴィリアンヌを私のものに……!)


 そのただならぬ様子に、会場は段々と静かになっていきます。

 その輪の外で、


(行くのです殿下! ここが男の見せ所ですよ! あぁ、大人の権謀術数にさらされ続けてまともな恋など叶うべくもないと思っていましたが、遂に……!)

(これは! リバシ殿下がヴィリアンヌ様の事を……!? ノマールさんの件はヴィリアンヌ様の勘違いだったのですね! 良かった……!)


 アッシスとカルキュリシアが感極まっていました。

 皆が熱を持って見守る中、


「リバシ殿下、ヴィリアンヌ様」

「うおっ!?」

「ぴゃい!?」


 そんな空気を感じないキュアリィが、二人を現実へと引き戻しました。


「次の曲はヴィリアンヌ様がノマールと、リバシ殿下が私と踊るのでしたよね」

「えぇ、そうね」

「あぁ、そうだな」


 二人は一瞬で笑顔の仮面を被ると、すっと手を離しました。


「ちょ、ちょっとキュアリィ……! 今のは……! 申し訳ありません! リバシ殿下! ヴィリアンヌ様」

「いや、何も謝る事などありませんよ。次はヴィリアンヌ嬢とノマール嬢とで踊ってほしいとお願いしたのは私ですから」

「えぇ、よく教えてくれたわねキュアリィ。ありがとう」

「えぇ……?」


 良い雰囲気を邪魔したとしか思えないキュアリィの行動を詫びたノマールでしたが、二人が全く怒っていない事に首を傾げます。

 事実二人は怒るどころではありませんでした。


(無理矢理にでも手に入れようなどと、何を考えているのだ私は! ヴィリアンヌの望まない婚約など、お互いの不幸にしかならないではないか! もっと心を通わせて……!)

(私は何とはしたない事を……! リバシ殿下はノマールをお好きなはずなのに、あんなに見つめてしまって……! キュアリィ、助かりました! ありがとう!)


 そんな動揺を必死に抑え込んだヴィリアンヌとリバシが、それぞれノマール、キュアリィの手を取ったところで、我に返った楽団が二曲目の前奏を奏で始めます。

 それを見つめながら、アッシスとカルキュリシアは深々と溜息をついたのでした。

読了ありがとうございます。


キュアリィが余計な事したように見えますが、そもそもリバシが策など練らずに、

「他の男となんて踊らないでください。貴女は私だけと踊ってほしいのです」

って言っていれば『完ッ!』だったんです。

まぁそんな事になったら、ヴィリアンヌは公衆の面前で大爆発していたでしょうから、結果オーライ?


そんなわけで、二人の恋のすれ違いと従者ズの心労はもうちょっとだけ続くんじゃ。


次話もよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここでキュアリィの空気読めないスキル炸裂とは! 容赦ないですね、神(作者)様は! 従者2人の心中お察しします。 [一言] ノマール嬢は気づいているっぽいですね。 お願い、ダンスしながら教…
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