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第二十三話 開式のすれ違い

いよいよ学内社交会当日。

会に望む気持ちがすれ違ったままのリバシとヴィリアンヌは、無事に会を始める事ができるのでしょうか?


どうぞお楽しみください。

 学園の大ホール。

 ほぼ全校生徒が集まった学内社交会の会場は、明るい賑わいに包まれていました。


(これだけの生徒が私とヴィリアンヌの共催である事を知れば、悪い虫が近づく事もない……!)


 壇上で満足そうに頷くリバシの横顔を、ヴィリアンヌは複雑な表情で見つめます。


(あぁ、リバシ殿下があんなに嬉しそうに……。そのお力になれた事が、私は嬉しく思いますわ……。たとえこの恋が今日終わるのだとしても……)


 それを横目で見たリバシは、溜息を押し殺すのに必死でした。


(最後の打ち合わせの時から、ヴィリアンヌの憂いが晴れない……。ここまでしたのだから、実害のない害意など問題にならないと思うが、そこまで悔いているのか……)


 お互いが相手を思いやり、それがために心が沈んでいましたが、学内社交会は始まろうとしています。

 リバシは気持ちを立て直し、集まった生徒達に声をかけました。


「生徒諸君! 私とヴィリアンヌ嬢の催した会に集まってくれて感謝する! これよりの時間は皆学年や身分の壁を越えて楽しんでほしい!」


 会場からは大きな拍手が巻き起こります。

 続いてリバシは、ヴィリアンヌへ水を向けました。


「私と思いを同じくしてこの企画に協力してくれたヴィリアンヌ嬢からも、開催にあたって一言お願いしよう!」


 これは当然の流れで、なおかつ打ち合わせもしていたものでしたが、リバシは気が気ではありません。


(この場でノマールへの謝罪をするようなら、何としてでも止めなくては! ノマールの伯爵家養子入りを祝う主旨は、最後に話すと何度も確認しているが……)


 表情は崩さないままじっと見つめるリバシに、ヴィリアンヌはにっこりと微笑みます。


(それでもリバシ殿下の幸せのために、この会は成功させないといけないのです……! お願い、今だけこの胸の高まりよ収まって……!)


 ヴィリアンヌは壇上に上がり、会場を見回しながら話を始めました。


「今日はリバシ殿下が生徒間の絆を深めるべく、一から企画されました。その暖かいお心遣いを噛み締めながら、存分に楽しんでもらいたいと思っ……!?」


 ヴィリアンヌの言葉が止まりました。

 頬に熱いものが流れている事に気付き、それが自分の涙だと認識してしまったのです。

 どよめく生徒達。

 すかさずリバシが前に立ちます。


「皆、驚かせて済まない。今日は交流の他にもう一つ意味があるのだ。周知ではあるが、平民であったノマール嬢が、ヴィリアンヌ嬢の心遣いの結果、伯爵家の養子になった」

「リバシ殿下、それは最後に……!」


 ヴィリアンヌの言葉は、会場の感嘆の声にかき消されました。


「その事を皆の前でお披露目をして、改めて学園に歓迎したいとヴィリアンヌ嬢が言ってくれたのだ」

「! いえ、それは……!」

「だがここまで秘密にしていたのには訳がある」


 ヴィリアンヌの否定を遮るように、リバシは言葉を続けます。


「会の前に明かすと皆が楽しめなくなるのではという危惧があった。しかしヴィリアンヌ嬢は、この会が無事に始められた事で感極まったのだろう」

「殿下……」

「皆を驚かせて済まない。だが!」


 納得する流れの生徒達に、リバシがさらに声を上げました。


「ヴィリアンヌ嬢はノマール嬢のため、これまで様々な配慮をし、努力を重ねてきた! そんな彼女を責められる者などいるだろうか!」

「……!」


 涙を流した事への言葉に聞こえるその裏に、ヴィリアンヌへの思いを込めた熱い叫び。

 一瞬圧倒された生徒達が、一人、また一人と拍手をします。

 会場を包み込む万雷の拍手の中、満足そうに頷いたリバシがすっと手を上げました。

 拍手が鎮まり、リバシが穏やかに口を開きます。


「ノマール嬢には最後に話をしてもらおうと思うので、どうか彼女をもてなしすぎて、喋る事がなくならないように配慮してもらいたい」


 会場に笑いが起き、空気が和らいだところで、リバシは改めて開催を告げました。


「皆、存分に楽しんでくれ!」


 その言葉に生徒達がめいめいに動き出します。

 その動きを眺めつつ、リバシはヴィリアンヌの肩を支えながら控え室へと向かいました。


「リバシ殿下……! 申し訳ありません……! 私のせいで段取りまでめちゃくちゃに……!」

(これでこの会の中で、リバシ殿下がノマールに近づく事は難しくなる……! それが申し訳ない……! それに少し安心している自分が許せませんわ……!)


「大丈夫です。気持ちはわかりますから」

(この後機会を見てノマールに真実を告げ、謝罪するとなると、恐ろしくもなるだろう……)


「! り、リバシ殿下は、私の気持ちをご存知で……!?」

(そ、そんな……! では私は好意を知られた上で利用された、道化だったという事ですの……!?)


「……はい。ずっと思い悩まれていたようですから……」

(あれだけノマールの名前に動揺していればわかる。できればそれを解放してあげたかったが、今日は難しいだろう……)


「それを知って、私をこの会の協力者に選んだのですか……?」

(弄ばれて利用されたと知っても、リバシ殿下の事が嫌いになれない……! 第二夫人、いえノマールの世話役でも、いっそ侍女でもいいからお側にいたい!)


「強引かと思いましたが、あなたとノマール嬢の仲を取り持ちたくて……。あなたの望む形でなかったかもしれないのは申し訳ないのですが……」

(あ、あれ!? 何か感情が好意に変わった!? 私何言ったっけ!?)


「……! ご深慮、理解いたしました。リバシ殿下……!」

(私の好意を知りつつ望まない形……! つまり私をお飾り正妃にして、ノマールを寵愛するという事……!? あぁ、それでもお側にいられるなら……!)


「あの、ですが無理をなさらないように……」

(また絶望だ! 何なのだこの感情の起伏は!)


「いえ、リバシ殿下のためでしたら、私にできる限りの力を尽くしますわ」

(私にできる事は、ノマールへ批判や中傷が向かないよう、盾となり支えとなる事……! 形だけでもリバシ殿下のお側に置いていただけるなら、この命に代えても……!)


「あ、あぁ。ありがとう……」

(こんな決意、死地に向かう兵士のようだ! どうしても今日ノマールに真実を告げるつもりなのか……! これを押しとどめる事はできない……!)


 にこやかな微笑みの裏の悲壮な決意の感情を感じたリバシは、それ以上何も言えませんでした。


「さぁ、会場へ戻りましょう」

「そうですね……」


 吹っ切れたようなヴィリアンヌの背を、リバシは混乱極まる頭で後を追うのでした。

読了ありがとうございます。


リバシの策はことごとく裏目に出てますね。

リバシの好感度が心配になるレベル。

彼の得意分野は謀略だからね。仕方ないね。


気持ちはどうあれ会は進みます。

次話もよろしくお願いいたします。

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[一言] 誰かホントのこと教えたげて!
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