第十五話 帰り道でのすれ違い
二回目の茶会を終えての帰り道。
リバシは自分の振る舞いに思うところがあるようです。
どうぞお楽しみください。
「アッシス」
「はい殿下」
茶会から帰る馬車の中、リバシは向かい側に座る側仕えのアッシスに声をかけました。
「今回の成果、お前はどう見る」
「恐れながら殿下」
アッシスは溜息をつきながら、言葉を続けます。
「慰めてほしいなら素直にそう言えばいいではないですか」
「ちっ違う! そんなつもりは毛頭ない! ただ客観的な視点からの意見は必要だと思っただけで……!」
動揺するリバシを微笑ましく思いながら、アッシスは口を開きました。
「では忌憚なく申し上げます。ヴィリアンヌ嬢に良いところを見せたい気持ちはわかりますが、ご自分で用意させた銘柄を誇らしげに当てるのはどうかと」
「あ、あれはヴィリアンヌが緊張していて、万が一間違えたら今日の茶会が台無しになると思って……」
「そうでしたか。しかし緊張された原因は、殿下が『さっき甘いのが好きだと言っていたよな?』という威圧をしたからではないですか」
「威圧のつもりなんかなかった! 甘いのが好きなら砂糖でもミルクでも入れたらいいと思っただけで……!」
「それも元はと言えば、ヴィリアンヌ嬢に『平民であるノマール嬢は学園に相応しくないと言っていたのに、キュアリィ嬢に命じて助けたのは何故だ』と詰問したからですよ」
「うぐ……」
言葉に詰まるリバシに、アッシスは優しい口調で続けます。
「殿下が策を弄せば弄すほど、ヴィリアンヌ嬢は恐怖と警戒を強めます。どうぞ素直な好意をそのままお伝えください。そうすればきっとヴィリアンヌ嬢も心を開かれるかと」
「そ、そうは言ってもだな、無策で相対するような危険な行為は……」
「殿下、ヴィリアンヌ嬢は敵ではありません。政敵と同じように考えていては失礼に当たりますよ」
「うぐぐ……」
リバシは奥歯を噛み締めた後、息を吐きました。
「……しかしだな、ヴィリアンヌの事を考えると、これまで経験した事がないほど不安に襲われるのだ……」
「殿下……」
「策を練れば多少は不安が収まる。だからヴィリアンヌが敵ではないとわかっていても、失礼な事だと分かっていても、何かしらの手を打たなければ落ち着かない……」
うつむくリバシの隣に移動したアッシスは、その背を優しく撫でます。
「少しずつ変わっていきましょう。まだお茶を二回共にしただけです。慣れてくれば落ち着いて対応できるようになるでしょう」
「……そうか……?
「いずれ殿下の優しさもヴィリアンヌ嬢に伝わる事でしょう」
「そうだといいが……」
自信なさげに小声で答えるリバシ。
(思ったより重症だなこれは……)
アッシスは気分を変えさせようと軽口を叩きます。
「まぁその間に女神と称えられるヴィリアンヌ嬢が、他の男に言い寄られるかもしれませんから、あまりのんびりもしていられませんけどね」
途端にリバシからにじみ出る黒いオーラ。
「そのような輩は家ごと潰せばいい。簡単な事だ」
「……そういうところですよ」
アッシスは深々と溜息をつきました。
その頃リバシの馬車の後ろを走る、ヴィリアンヌの馬車の中では。
「まるで私が困っているのを見透かしたかのように、さらっと助けてくださったの! そんなおつもりはなかったのかもしれないけれど、その時のお声がまた素敵で……!」
「……ヴィリアンヌ様。その話は五回目ですし、何なら私もその場に控えていたのですが……」
「だってもう話さずにはいられないじゃない! それに同じお茶が好きだという事もわかったし、今日は最高の一日だわ!」
「馬車から降りる時、抱き止めてもらえましたしね」
「……きゃあああ! そ、そうでしたわ! 逞しくて、お優しくて……! それに良い香りがして……! わ、私ったら何てはしたない事を……!」
「……よろけて抱き止めてもらうだけでこれでは、先は長そうですね……」
顔を真っ赤にして頬を押さえるヴィリアンヌに、カルキュリシアは深々と溜息をつくのでした。
読了ありがとうございます。
リバシー! 後ろ後ろー!
リバシの悲痛さをよそに、ヴィリアンヌはもうメロメロです。
ただ、今の状態でリバシが愛を告げたら確実に壊れるので、徐々にリバシが距離を詰めるのが良さそうです。
次話もよろしくお願いいたします。




