第十二話 再エスコートでのすれ違い
二回目の茶会に向かうリバシとヴィリアンヌ。
前回のダメ出しをリバシは気にしている様子です。
どうぞお楽しみください。
「アッシス」
「はい殿下」
喫茶室に向かう馬車の中、リバシは側仕えのアッシスに声をかけます。
「前に言っていたエスコートの際の手だが、やはり部屋まで繋いだままが良いのか?」
「はい?」
「いや、前回手をすぐに離すのは、気がない意思表示と言っていたではないか」
「……」
主の言葉に、アッシスは溜息をつきました。
「殿下のなさりたいようにされればよろしいかと」
「い、いや、私がどうしたいかというのは置いておくとしてだな。一般論としてどうかと聞いている」
「そうですね。一般論でという事でしたら、恋仲の男女であれば繋いだまま部屋まで、というのが普通ですね」
「恋仲であれば、か……」
考え込むリバシ。
少しして頭を横に振ります。
「殿下、何を諦めているのですか」
「いや、無理だろう。ヴィリアンヌの怯えた顔しか思い浮かばない」
「だからこそですよ」
「何?」
目を丸くするリバシに、アッシスは静かに答えます。
「手に限らず身体が触れる時間というのは、少なからず安心を感じるものです」
「そう、なのか……? いや、確かに子どもなどは不安な時、他人の手を握る事があるな……」
「えぇ。ですから手を繋ぐ行為は、機会があれば積極的に行うべきなのです」
「う、うむ……」
リバシは半信半疑で頷きました。
馬車は無事に喫茶室へと着きました。
リバシはヴィリアンヌの馬車へと向かいます。
「ヴィリアンヌ嬢、到着しました」
「ありがとうございます、リバシ殿下」
「さぁ、お手を」
「……はい」
扉を開けたヴィリアンヌに、リバシはすっと手を差し出します。
ヴィリアンヌは、その手を取りました。
(ううう、やはり緊張が伝わる! だがこの手を握る事がこの緊張を解くのなら、繋いでいるのは吝かではない! ……それにこの手は繋いでいると、私の心も……)
(あああ! またもリバシ殿下の手が! で、ですがここで動揺するわけには……! カルキュリシアが教えてくれた作戦を……! うぅ〜! えいっ!)
「きゃっ!」
「おっと」
ヴィリアンヌがよろけて、リバシに向かって倒れ込みます。
リバシはそれを抱き止めました。
「も、申し訳ありません!」
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ……。あの、リバシ殿下は……」
「大丈夫です。ヴィリアンヌ嬢は軽いですから」
「まぁ……!」
「では参りましょう」
「はい」
二人は身体を離すと、そのまま喫茶室へと向かいます。
(柔らかかった! 柔らかかった! それに良い匂いがした! もう手を繋ぐどころじゃない! と、とにかく部屋に入って落ち着こう!)
(こ、これで良かったのかしら!? カルキュリシアは体勢を崩したふりをして胸に飛び込めと……。脅迫の意思を薄めるために有効と言っていたけど……。た、逞しかった……)
二人のほわほわした空気を、少し後から続くアッシスとカルキュリシアは、微笑ましい気持ちで眺めていたのでした。
読了ありがとうございます。
本日のMVPはカルキュリシア。
リバシは不意打ちに、策を練るとか心を読んだりするどころではなくなっていますが、その方が良い気がしますね。
次話もよろしくお願いいたします。




