第十一話 準備のすれ違い
二回目の茶会当日の朝。
リバシはアッシスに準備の進捗を確認します。
しかしアッシスはその準備に対して、思うところがあるようです。
どうぞお楽しみください。
「アッシス」
「はい殿下」
朝の自室でリバシは側仕えのアッシスを呼びました。
「今日の放課後の手筈は整っているな」
「はい。殿下の仰る通りにいたしました」
「よし。今回の茶会の到達目標は、ヴィリアンヌの好みを知る事だ。準備は整った。これで私の勝利は揺るがない」
「しかし……」
アッシスの呆れたような言葉に、リバシは鋭い視線を向けます。
「……何だ。何か不満があるなら言ってみろ」
「先に金を払って注文しておいた菓子の盛り合わせやお茶の飲み比べを、店の厚意と称して出させる小細工は本当に必要なのですか?」
「必要だ!」
リバシは当然だと言わんばかりに胸を張りました。
「前回の茶会の時に菓子を分けたら喜んでいたが、ヴィリアンヌは自分から注文しないだろう! しかし私が沢山注文するのは不自然だと言うから、この方法を取った!」
「お茶の飲み比べは?」
「カモミールはあまり好みではなかったようだから、好みを探るために必要だ! なおかつ話す時間が長く取れる!」
「直接聞けばよろしいのでは?」
「それができれば苦労はない!」
机を叩くリバシ。
アッシスは溜息を隠しません。
「しかしこれは、相手に悟られず好みや苦手なものを知って、政敵の優位に立つための方法ですよね?」
「仕方がないだろう! ヴィリアンヌについては情報が足りない! これまでの敗因は情報の不足が主な原因だ! 情報さえ握れば一気に攻勢をかけて……!」
「落ち着いてください殿下。ヴィリアンヌ嬢は敵ではありません」
「う、うぬぬ……。だとしたらどうすれば……」
「いや、小細工をしなければ良いと思うのですが……。女性は自分の好みなどに関心を持たれる事を喜ぶものですよ? ですから会話の中でそれとなく聞けば……」
「無理だ! 何度想定しても遠慮がちな態度で言葉を濁されて、私はその気まずい空気を変えられず茶会が終わるのだ! だからこの方法しかない!」
「……わかりました」
いかな政敵にも危機的状況にも、その明晰な頭脳で対応してきたリバシ。
それがうまく機能していない事に、アッシスは落胆と安堵の混じった溜息をこぼします。
「おい! また女慣れしてない事に呆れているな!?」
「はい」
「ぐぬぬ……! 女慣れなど経験と知識の集合に過ぎん! 見ていろ! すぐに克服してみせるからな!」
「そう考えているうちは、おそらく無理ですね」
「ぐーっ! 私を甘く見ているな! その言葉、すぐに後悔させてやる! 教室に向かうぞ!」
「はいはい」
恋心を甘く見ているリバシを、心配と安心の両方で見つめながら、アッシスは荷物を手に後を追うのでした。
その頃のヴィリアンヌ。
「ヴィリアンヌ様。朝食はもうよろしいのですか?」
「えぇ……、何だか胸がいっぱいで……」
「ちゃんと食べないと、授業中お腹が鳴ってしまいますよ」
「……! で、ではもう少しだけ食べますわ。……はぁ、でも今日のお茶会の事を思うと胸が苦しい……」
カルキュリシアは、専属看護師として心配そうにヴィリアンヌを見つめます。
「この分ではお茶会も、お茶を一杯いただくので精一杯ですね……」
「えぇ……。でもあれこれ無遠慮に食べ飲みして、はしたないと思われない方が良いはずですわ」
「まぁそうですけれど」
ヴィリアンヌは窓の外を見て溜息をこぼしました。
「あぁ、楽しみなのに怖い……。逃げたいのに早く行きたい……。不思議な気持ち……」
読了ありがとうございます。
デートにいらん小細工を持ち込もうとする、あるあるですねぇ。
かつてデートにポータブルDVDプレイヤーを持ち込んで、誕生日サプライズぶちかました阿呆がいるとかいないとか……。
相手の女性は苦笑いを浮かべた! 何故だ!
……坊やだからさ(震え声)。
リバシの小細工は果たして功を奏するのでしょうか?
変なフラグが立っていますが!
次話もよろしくお願いいたします。




