表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/199

36  ナツミちゃんクライシス

いわゆる「鬱展開」ですが、大逆転の時は近い!?


 コンビニで公衆電話器を見つけ、自宅にかけた。


 留守電だ。


 わたしは一瞬パニックになりかけたけど、やがて両親が旅行中だと思い出した。2週間前、北海道周遊ツアーに行くと言っていた。

 ママのスマホに電話しかけ……思いとどまった。せっかく楽しく旅行中なのに心配させられない。

 まだ何日か帰ってこないはずだ。


 お昼には自宅で足を投げ出し、壁にもたれて脱力していた。

 (本気でタカコの家に転がり込むか……)

 そう思ったとたん、何度めだか分からないけどスマホが使えないと思い出して、また脱力した。公衆電話まで歩く、と思うだけで気が滅入った。

 座布団に寝転がった。


 わたしは疑心暗鬼、というじつにわたしらしくないネガティブスパイラルに陥っていた。


 陰謀。

 誰かが陰謀をしかけているんだ。

 わたしを追い詰めようとしてる。

 あの中国人と、巌津和尚が結託してるの?ひどく馬鹿馬鹿しい仮説だけど……

 だんだん腹が立ってきた。

 

 それにおなかも空いた。


 買い置きのカップラーメンを作って食べた。カップ麺は久しぶりだ。

 冷静に考えると一日二日は買い足さなくても過ごせそうだ……ちょっとわびしい食卓になるけれど、サイが来る前に戻ったようなものか。

 となると、たいへんなのは週明け以降。


 陰謀を疑ういっぽうで、わたしはまだ、明日かあさってになれば「間違い」が是正されるのではないかとどこか期待していた。

 だって理不尽すぎるじゃない?嫌がらせされる理由なんて……

 あるか。

 銀行やケータイ会社まで手を回せる途方もない相手だ。

 まさか政府の秘密組織とか?

 それで想像できたのは国会議事堂の地下御殿で300年も生きてる見た目14歳くらいの巫女さんとかそんなイメージだった。なんというか、我ながら感性がアレだ。

 でも真面目に考えただけで心が押し潰されそうなのだ。誰かがピンポイントで小市民をリンチできるなんて、そんな世の中恐ろしすぎるじゃないか……


 きっとそいつらはサイを差し出せとわたしにメッセージを送ってるんだ。


 負けるもんか。


 でもどうしたらいいのか全然分からない。



 すこし眠ったらしく、目が覚めたときは夜になっていた。わたしは明かりを付けようとして、電気を止められたことに気付いた。


 「もう!なんなんだよおっ!」

 わたしは今度こそ打ちのめされて、思わず叫んでいた。真っ暗な家の中でひとり、かなりヤバいよね。

 だけどもう歯止めがきかなかった。

 スマホの明かりを頼りに台所の引き出しからろうそくを探し、チャッカマンで明かりを灯すあいだじゅう癇癪ですすり泣いた。


 ようやく明かりが付いても、わびしすぎて余計に悲しくなった。


 幽霊でも出そうに静まりかえった部屋で、ろうそくの揺らめきに照らされてカーネイションが浮かび上がっていた。


 「サイ……」


 わたしはテーブルに突っ伏して泣いた。

 泣くだけ泣いたわたしは、疲れて眠ってしまった。

   


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ