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147 街道上の戦い

  

 新たに登場した4人は、それぞれブルー、ブラック、グリーン、イエローのスーツを纏っていた……

 イエローはすこし小柄で、女性じゃないかしら。


 ぽかんとしているわたしをよそに、4人の戦士たちはサッと飛び上がって戦いに参戦した。


 (これが現実なワケないよ……)

 人間の格闘ではあり得ないようなバシン!ドカッ!グシャッ!って音を背後に聞きながら、わたしはヨロヨロとアパートに向かった。   

 アパートからふたりの女の子がこちらに向かってくる……やっとまともな人が、と思ったのもつかの間……ふたりとも赤白の巫女姿だ。しかも双子……


 「川上様!」


 巫女さんのひとりが叫んでる。慣れない呼ばれかたなのでわたしの名前だと気付くのにちょっとかかった。

 「えっと……お知り合いでしたっけ?」

 「呑気になに言ってるんです?早くアパートに待避してください!アルファ!あなたは鮫島さんたちを支援して!」

 「あいよー」

 アルファと呼ばれた双子の片割れは、巫女服の裾を翻しながら華麗にジャンプした――またしても、20メートルくらいも高々と。

 「いつもすぐ現れるのにサイファーはどこに――」巫女さんは川越市内の空に気付いてハッと息を呑んだ。

 「ハイパワーが……タワマンを攻撃している……!」

 ええそうなの、とかなんとか言うべきかもしれないけれど、相変わらずわたしだけちんぷんかんぷんな状況だ。

 

 UFOに怪物に戦隊ヒーローでお次は超能力巫女?

 いったいこの世界ってどうなってるの?

 わたしは何に巻き込まれてるのっ!?

 

 「怖すぎるんですけど……」

 「川上様!早くアパートへ!」

 「あ、アパートに逃げ込んだってどうにもならないでしょう?ほんの数十メートル先であんなのが戦ってるのに……」

 「そんなことありませんよ!あのアパートには強力な結界が張り巡らされているのです。安全です」

 「なに言ってるのか意味不明だよ……」

 「あなたこそどうかしてしまったんですか!?サイファーも鮫島さんもあなたのために懸命に戦ってるんです!ナツミさんはもっと皆さんを信頼していたでしょうに!」

 「だからそのへんの事情が分からないんだってば!」

 「ナツミさんあなた……」巫女さんは口を手に当てて驚愕の表情になった。「まさか、記憶喪失かなにかなんですか――」

 ズ・ズーン!

 国道のほうで轟音が響いて、わたしは思わず両腕で頭をかばって縮こまった。

 巫女さんは片腕を顔にかざして轟音のほうに振り返った。

 民家の壁が崩れ落ちて電柱が道路に倒れていた。黄土色の粉塵で視界が遮られてしまったけれど……


 その霞が晴れると、赤いスーツ――鮫島さんが大の字で道路に倒れていた。

 「鮫島さん!」

 わたしと巫女さんは同時に叫んで、10メートル先に倒れてる彼に向かって駆け出した。

 彼は片肘をついて起き上がりかけていたけれど、ちょっとしんどそうに見えた。

 鮫島さんがわたしたちに気付いて必死に手を振ってる。

 「君たち……!こっちに来るな!」

 破壊された壁の向こうから銀色の怪物が姿をあらわした。


 (あーこれヤバいやつだ)


 わたしは一瞬だけそう思ったけれど、まだ半分夢だと思ってたからか、へんに危機感が薄かった。

 それに、巫女さんが鮫島さんと怪物のあいだに立ち塞がってる。わたしだけ逃げるわけにはいかない。

 わたしは鮫島さんの傍らに跪いて背中を支えつつ、接近してくる怪物になかば見入った。

 

 「あんたのお相手はわたしだよっ!雑魚ども!」

 アルファと呼ばれてたもうひとりの巫女が怪物の横っ腹にタックルした……全身のトゲトゲなんかものともせず。

 しかも怪物はかなりの勢いで弾き飛ばされ、月極駐車場のライトバンに衝突して車体を粉砕した。

 怪物はライトバンの残骸からむくりと身を起こすと、姿にそぐわない少年の声で言った。

 「ヘルミーネ!この裏切り者……!」

 「裏切ってゴメンね。だけどあんたたち雑兵はわたしの敵じゃないでしょ?さっさと逃げ帰って〈後帝〉(ハインドモースト)に御報告申し上げなさいよ……「ヘルミーネは元気そうでした」って」

 「マザーシップを失ったあなたが如何ほどのものですかね?そのかりそめの体は僕たちとたいして変わらない性能でしょう?」

 アルファは指先で「C」の字を作った。

 「これくらいの、ちょっとの違いが大きいのよねー」

 「そのちょっとの差は数で補いましょう!」

 

 わたしたちの頭上に急に影が落ちて、わたしたちは思わず空を仰いだ。

 あのでっかいUFOが真上に浮かんでる……!

 わたしはタワマンのほうを見た。そちらのUFOもいまだにタワマンを攻撃してる。つまり、二隻目……。


 「ナツミさん……」

 鮫島さんがなんとか立ち直って、ふらつく足取りながらなんとか踏みとどまった。わたしの肩に手を置くと、言った。

 「アパートに行くんだ!ドアを閉めて、騒ぎが収まるまで身を隠しなさい!」

 「わたしだけそんなことできません!」

 頭上のUFOから小さな黒い点がいくつも吐き出されていた。

 人間……中学生の制服姿の少年たちだ。「敵」の仲間だろう。

 「ナツミさん早く!」

 

 そのとき、わたしの中でまたあの奇妙な感覚が起こった。視界が黒い枠つきのテレビ画面みたいになって……

 それから、わたしじゃないわたしがわたしの声で言った。


 「勇者鮫島ウシオよ、わらわの力をそなたに授ける。これを使え」


 わたしは、いつの間にか右手に握っていた七支刀を掲げた。


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