【3-1】お待ちかねのポイント消費
【☆初心者応援ログインボーナス☆】
【3日目――――回復材セット(N、R、SR、SSR)】
その表示が出てから、何日か経った日の夜。俺は酒飲み友達である第二王子、カールハインツ・リドル・ファルエンドの私室で酒盛りをしていた。
しかし初心者応援て……ストーリーを挟んだせいなのか、もう自分が初心者のような気がしないのだが。
まぁ貰える物は貰っておく。インベントリで確認したのだが、SSRの回復材は100%回復、だがSSRの効果は数値では測れなかった。
具現化させてカールに見せたのだが、その時の反応が。
「こ、これ……ゴゴッゴゴッドポーションじゃないのかい!?」
「ゴゴゴッドポーション? なんだそれ? というか落ち着けよ」
「ゴッドポーションだよ、ゴッドポーション! 神が落とした奇跡の雫、こんな貴重な物をどこで……」
「どこでって……ログボだけど」
なんとこのSSR回復材、生きてさえすれば体が欠損しても治るという奇跡のポーションらしい。
その名もゴッドポーション。売れば数百万どころの話ではなく、数千万はする可能性もあるとか。
だが残念な事に、ゲーム化ギフトの影響下にある回復材は店売りできない。
そもそもハイポーション作成時に、ごく低確率で生まれる偶然の産物らしい。市場には出回らないし、知っている者も少ないとか。
「なら王家に献上しようか? 売らないって事ならセーフだと思うんだよな……」
【いやいや、アウトだから。売買と同じだよぉ? 使用目的以外の譲渡は認めませぇん!】
「……いやごめん、ダメっぽい」
「よ、よく分からないけど、流石に何千万もするポーションなんて受け取れないよ」
よほど驚いたのか、自身を落ち着かせるように度数の高い酒を一気飲みするカール。
こりゃ今日もダメだな、そう思いながら俺も酒を煽った。
結構なタダ酒を頂いているし、支払いの代りに提案したのだが、遊戯神に却下されてしまった。
【基本的に具現化アイテムは自分で使用してくれる? 仲間に使用するとかならいいけどさぁ……あくまでゲーム化しているのは君なんだからね?】
ゲーム化で生み出された物を世界に流すなと、そういう事だろうか?
回復材は具現化素材なので、やろうと思えば世界に流通させる事ができる。
しかしそれを行うと、流通経済がおかしくなるのだろう。
売買をして金を稼ぐ事と同じか。流石にそうなれば神が介入してくるよな。
しかし俺が見境なく使用する事はいいのだろうか? そう思ってインベントリから回復材(SSR)を探してみたのだが、見つからなかった。
【ちなみに回復材(GOD)っていうのもあるよ! 死んでも生き返る凄いポーションさ】
「(いいのかよそれ……)」
【まぁ他の神達に却下されたから、世界には存在させてないよ】
回復材(SSR)ですら存在の個数を制限しているらしい。
研究者たちは躍起になってゴッドポーションを生み出そうとしているらしいが、いくら頑張っても作れないとか。
そんな個数制限のある貴重なポーションの一つがログボで……いいのだろうか?
【じゃ返して? 他の所に落とすから】
「(……いや、貰える物は貰っておく)」
返せと言われると返したくなくなるのはなぜだろうな。これはいざという時の切り札としてありがたく貰っておこう。
ともあれゲーム化ギフトの影響化にある物は扱いに気を付けないとな。神(運営)の怒りを買ってしまっては垢BANになる可能性があるし。
「いやそれよりも、大丈夫か?」
「なにがぁ?」
「飲みすぎだろ、大丈夫かよ王子様」
「だいじょぶだいろぶ……」
だいじょばねぇよ。呂律回ってねぇし、どう見てももう限界だろう。
最近激務らしく、睡眠時間が少ないとカールは言っていた。だったら寝ろと言ったのだが、飲まないとやってらんねぇと言うから付き合ったが。
「一緒に吞んでくれ……友がいるって……ぃなぁ…………Zzz」
「はいはいお休み……」
ついに寝てしまったカールをベッドまで運び、風邪をひかないようにと布団を掛けてやった。
枕元のサイドテーブルには起きた時に飲むための水を……って俺はお前の彼女かよ? というか恐らく朝はメイドさんに任せれば大丈夫だろう。
そんな事を思いつつ酒飲みに戻った俺は、カールの寝息をBGMにインベントリを開き操作していった。
さてまずはステータスポイントの振り分けだ。ストーリークリアーで5レベルアップしているので、STpは50。
更にクリアー報酬で貰った成長材(SR)を使用して8レベルアップ。これで合計130STp。
【STp――――130】→【STp――――20】
【LV――――40】
【HP――――120】+30
【GP――――150】+50
【STR――――62】+15
【VIT――――40】+5
【AGI――――40】+10
【INT――――12】
【LUK――――10】
う~む……INTとかLUKって振るべきなのだろうか?
INTって多分、魔法の強さとかに影響するんだよな? だとすれば俺にとっては不要ステ。
でも護衛が魔法を使う可能性が0ではない。ラリーザみたいな美人魔女がランダム召喚される可能性もあるが……とりあえず保留だな。
あとはLUK。確か遊戯神が言っていた、コマンドバトルで敵の攻撃を回避したいならLUKを上げろと。
普通は素早さを上げるものだと思うが……コマンドバトルでの敵の攻撃って、確率でミスるようになっているのか?
まぁどちらにしろ保留。護衛召喚をメインで戦うんだし、黙って戦闘系のステータスを上げてやった方がいいだろう。
「いやしかし、これで護衛が10体も召喚できるのか」
ヤバすぎる、もはや一個小隊じゃないか。数の利を生かしてターン制コマンドバトルでボコボコに、なんていう事も可能だろう。
俺はニヤニヤしながら酒を片手に、いよいよメインの振り分けへと移行する。
【GIp――――305】
「ははは……305!?」
なんだこの数字? ストーリーの報酬は200なのに……ってそうか、レベルアップ分か。
1レベルアップに付き5GIp。ストーリー報酬と成長材で大幅にレベルアップしたから、これだけの数字となったのだろう。
これだけあれば護衛召喚のレベルを大きく上げられる。
【GIp――――305】→【GIp――――105】
【護衛召喚Lv4】305→275【護衛召喚Lv5】
【護衛召喚Lv5】275→240【護衛召喚Lv6】
【護衛召喚Lv6】240→200【護衛召喚Lv7】
【護衛召喚Lv7】200→155【護衛召喚Lv8】
【護衛召喚Lv8】155→105【護衛召喚LvMAX】
「マックスキターーーッ!?!?」
「な、なんだぁ…………? むぅ…………Zzz」
「おっと、すまんカール。つい」
ピッタリ200ポイント使用で護衛召喚がレベルマックスに。ちょっと使い過ぎた感があるが、まぁいいでしょう。
何と言っても俺のメインウェポンだからな。これを鍛えずして何を鍛えるんだって話だ。
さて残りのポイントだが、次に優先度が高いのは従馬召喚と、そしてメインである御者ギフト。
御者ギフトは運行への影響もそうだが、新たなギフト発生の可能性もあるから上げておきたい所だ。
【GIp――――105】
【ジョブギフト】
【御者Lv3】
【スキルギフト】
【護衛召喚LvMAX】【眠々打破Lv1】【馬車結界Lv1】【従馬召喚Lv2】
まぁまずはやはりジョブギフトだろう。馬車改造というギフトがあるはずなので、それを取得してみたいとの思いが強い。
【御者Lv3】105→80【御者Lv4】
ここでは特に変化なし。以前のような解放アナウンスはなかった。
しかしそれは、レベルを5にした時に訪れた。
【御者Lv4】80→50【御者Lv5】
【新たなスキルギフトが解放されました】
【新たなユニークギフトが解放されました】
そんな文言がインベントリに表示された。その文字を眺めながら酒を飲む。俺も少し酔ってきたせいか、頭が上手く回らない。
……ユニークギフト? 聞いた事があるようなないような……特定の条件を満たしたら解放とかだっけ?
まぁ確認すれば済む事だと、ギフト一覧を表示させてみる。
【馬車改造――――スキルギフト。成長馬車を改造する事ができる:消費GP0】
【守護者召喚――――ユニークギフト。召喚者を守護する絶対服従者を召喚する:消費GP75】
……ついに来たぞ。恐らくこれは運営が言っていた、護衛召喚の上位ギフトだ。
護衛召喚で呼んだ護衛よりも強力な者を召喚できるのだろう、消費GPの多さから考えても間違いない。
それに何と言っても、上位ギフトは言葉を発するとの事だ。これは取得せずにはいられない。
「まずはユニークを取得……って50GIp!?」
取得するには50GIpが必要らしい。スキルギフトの馬車改造ギフトの取得ポイントが10なのを考えると、桁は同じだが桁が違う。
もちろん馬車改造ギフトも欲しい。だが現時点では、どちらか一つしか取得できないっ!
「う~んう~ん……どうすれば……う~ん……ダメだ、頭が回る……」
「――――あの、ゴノウエ様? 大丈夫ですか? ご気分でも悪いのでしょうか?」
酒を飲み過ぎたのか、成長馬車の購入をしていない事をすっかり忘れて唸っていると、部屋の入口から俺を心配するような綺麗な声が聞こえてきた。
そちらを向くと、そこにいたのはこの国の第二王女、エカテリーナ・リドル・ファルエンド。
恰好が見慣れているドレス姿ではなく、ネグリジェに羽織りものという楽そうな恰好をしていた。
そんなエカテリーナは部屋の中に足を踏み入れ、散らかっているテーブルの上、幸せそうな顔をして眠るカールを見て溜め息を吐く。
「はぁ……飲み過ぎではないですか?」
「あ、はは……ちょっとカールに付き合っていたら、深酒に……」
「こんな幸せそうな顔をしているお兄様、初めて見ました」
カールが完全に眠っているのを確認したエカテリーナは俺に近づいて来ると、座ってもいいかと尋ねてきた。
俺は慌ててテーブルの上を掃除し、椅子を引いてエカテリーナを座らせる。
向かい合って座るエカテリーナが微笑んだのを見た瞬間、酔いなど吹っ飛んでしまった。
夜遅くにそんな格好で男の部屋に来るなよ……ってそうか、ここは兄の部屋だったな。




