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【2ー14】僕と女王






「……どうなってんのよ」

「う~む」


「え、あたし寝てた? 確かに気を抜いていた事は認めるけど」

「護衛が気を抜いてんじゃねぇよ……」


 道中、魔物の襲撃は三度ほどあった。


 その度に護衛のヴェラが……ではなく、俺が召喚した護衛が魔物を蹴散らしていた。


 ギフトの馬車結界を使用して効果の程を確認したり、休憩地や野営地の場所も確認できた。


 何の問題もない道程だった。ヴェラがサボっていたこと以外は。



「……あれ何よ? 幻かしら?」

「いや、幻ではないだろう」


 ヴェラがいう幻とやらに近づいていく。


 俺達の接近に気が付いた幻は、なんと俺達に話し掛けてくるではないか。



「ようこそヒーメルンの街へ。もう少しで門を閉めますので、お早めに」

「あ、はい」


「あっはいじゃないわよ!? ヒーメルン!? もう着いたって言うの!?」


 騒ぐヴェラに対し怪訝な顔をする門番さん。その門番さんに愛想笑いをした俺は検閲場所へと進む。


 検閲場所へと至ってもヴェラは、信じられないっと言った表情を崩さない。


 どうやら彼女にとってはあり得ない事が起きているようだが、俺も聞いていた話とは違って驚いている。



「はい、通って大丈夫ですよ。ようこそヒーメルンへ」

「あ、はい、どうも」


「あっはいどうもじゃないわよ!? ちょっとアンタ、ここ本当にヒーメルンなの!?」

「は、はい? えぇ、ここはヒーメルンですが……」


 再び騒ぐヴェラに対し、何だコイツ……みたいな表情をする検閲官さん。


 その検閲官さんに、ウチのアホがすみません……みたいな表情をして謝罪を入れた。


 検閲場を過ぎてヒーメルンへと入場を果たした俺達は、入ってすぐの定期馬車などが停まるという場所に馬車を止め、街の中を見渡した。


 ちなみに面倒になりそうだったので、俺が召喚した護衛は送還済みである。



「ほ、本当にヒーメルンだわ……」

「そうなのか、俺は初めて来たからな」


「あ、あり得ない……だって、だって……」

「…………」


「早すぎでしょ!? まだ日付も変わってないわよ!?」


 ヒーメルンには明日の夜に到着予定だった。


 フェルナもヴェラもそう言っていたので、俺もそのくらいだと思っていたのだが。


 予定より、ほぼ一日早く到着してしまった。



「高速馬車でも明日の朝に着けていれば早い方よ!? なんなのよアンタの馬車は!?」

「いやでも、ほぼノンストップで来たしなぁ」


 昼飯は馬車に乗りながら食べたし、快適だったから休憩なんて必要なかった。


 休憩場所も野営地もチラッと確認して場所を頭に叩き込んだだけで、ほぼ素通りだ。


 馬車を降りたのはトイレ休憩の一回だけ。魔物の襲撃も馬車結界をチェックした時以外はすぐ終わった。



「いや、馬車というより……この馬が異常なのね」

「「――――」」


「ほぼ休憩なしでここまで……不気味すぎる、可愛げもないし」

「お前より可愛いっての」


「なんですってぇ!?」

「じょ、冗談だよ」


 ほんとすぐ怒る奴だ、馬車の上では大人しくて可愛かったのに。


「俺の従馬は普通の馬だよ、ちょっと表情が変わらないだけで、ちゃんと疲れてる」

「嘘よっ! ぜんっぜん疲れてないじゃない!」


 ヴェラはそういうが、嘘ではない。ちゃんと従馬の仕様はサポセンに確認済みだ。


 従馬にもちゃんと体力がある。しかし疲れても表情などには現れず、見た目は変わらない。


 体力の限界まで走らせると、護衛と同じように靄となって消えてしまうらしい。


 普通はそんな走らせ方は馬の寿命を縮めるし、疲れれば馬が走る事を拒否するだろう。


 それが俺の従馬にはない。寿命などないし、疲れても止まる事はない。


 体力の限界を迎えさせても再召喚で元通り。動物愛護法に引っ掛かりそうではあるが。



「なんてふざけたギフトなのかしら……」

「この距離なら休憩なしで走らせられる事が分かったな」


「そのうち馬がストライキを起こすわよ?」

「ないない、俺の従馬は優秀だからな」


 そう言いながら二頭の馬を撫でてやる。もちろん喜ぶどころか何の反応も示さないが。


 しかし今度からは、疲れたら止まって知らせるようにと命令を出しておこう。



「さて、じゃ帰るか」

「は、はぁ!? 冗談でしょ? いま着いたばかりよ!?」


「言っただろ、試運転だって。着いたらすぐに戻るつもりだったよ」

「それは聞いたけど、一日も早くついたのよ? 時間なら大丈夫でしょ?」


 それは確かにヴェラのいう通りである。


 予定では野営を行って色々と確認してみるつもりだったのだが、野営地についた時はまだ陽が高かったからな。


 そこで飯を食うつもりだったから腹も減っている。飯くらいは店で食うのもいいかもしれない。



「じゃ飯食ってから帰る?」

「だから帰らないわよ! 今日はこの街に泊まりましょ?」


「そんな金ねぇよ……」

「嘘でしょ? 安宿なら1万も掛からないわよ?」


 お前に10万も払う事になったから金がねぇんだよ!


 そう言ってやりたいが、そんな事を言ってもこの守銭奴はどこ吹く風という顔をするだけだろう。


 しかしそうだ、俺はコイツに10万も払って護衛として雇っているんだ。


 雇い主には従ってもらうぞ、守銭奴ヴェラ・ルーシー。



「泊まってもいいけど、宿には泊まらん」

「はぁ? じゃどこに泊まるってのよ?」


「もちろん外で野営だ。客がいる想定で、野営の予行練習をする」

「なんでわざわざ街を出て野営をしなきゃないのよ……」


 だから予行練習だと言っているだろうに。この街へ来る場合は必要なさそうだが、いずれその機会はやってくる。


 そうと決まればさっそく野営地に移動しようか。



「じゃ、行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ってよ、本気なの? 面倒よ、野営なんて」


「ルーシーさんを客に見立てて野営をする。面倒事は俺がするよ」

「はぁ……もういいわ、分かったわよ! その代わり、扱き使ってやるんだから!」


 折れてくれたというより、自棄糞気味になっているヴェラと再び門へと戻った。


 検閲場では、何だコイツら……という顔をされたが、特に理由も聞かれなかったので街を出る手続きを行う。


 いくら快適だったとはいえ、10時間以上も馬車の運転をしたんだし疲れもある。


 俺だって本当は飯食って酒飲んで暖かいベッドで寝たいが、今回は仕方ない。


 滞在時間わずか数分で、俺達はヒーメルンの街を後にした。




 ――――




「お水持ってきて」

「はいはい」


「お肉焼いて」

「ひぃひぃ」


「スープ熱すぎる」

「ふ~ふ~」


「少し寒いわ」

「へーへー」


「へっへくちっ」

「ほっほっほっ」


「笑ってんじゃないわよ! 客がくしゃみしたんだから、早くちり紙持ってきなさいよ!」

「お前客じゃなくて女王様じゃねぇか!?」


 野営地に着いてから女王様化したヴェラ。なんで俺はコイツに金を払ったのか分からなくなる。


 予行練習になったのかならなかったのか微妙なラインだったが、まぁよしとしよう。


 その後は護衛を召喚し、ヴェラは馬車の中で、俺は寝袋で寝る事になった。


「馬車に近づいてきたら殺すわよ?」

「雇われ護衛が寝る気満々かよ……」


「あなたが言ったのよ? 今日は客でいいって」

「なんか微妙に違う気がするが」


 女性と二人きりの野営とか、もっとキャハハうふふするもんじゃないのかよ。


 めっちゃ食うしめっちゃ飲むし、足は組むし腕は組むしふんぞり返るし、終始女王様だったヴェラ。


 本番では俺が扱き使ってやる……そう思いながら俺も寝床についた。



【好感度――――17】

【関係性――――下僕と王】

【状態――――満腹】

【一言――――コイツはありかも、下僕として】



 あっ少し好感度が上がってる。ストーリー中でも好感度は上がるのか。


 っておい、他の項目よ。



お読み頂き、ありがとうございます

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