表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/126

【2ー6】タワーディフェンスバトル






「お、おいアンタ! 御者なんだろ!? 馬車に乗せてくれ! 怪我人がいるんだ!」


 切羽詰まった様子で男を担いでいる大男が、俺の元にやって来るなりそう言った。


 確かこの大男は大きな盾を持っていた気がするが、見当たらないので捨ててきたのだろうか?


 担がれている男はリーダーの男だろう。彼らの後ろには腕を怪我した様子の女性の姿、肩で息をしている小さな男性の姿があり、犠牲者は出ていないようだ。



「いやでもあれ、放っておいていいんですか?」

「仕方ないだろう! 俺達に出来る事は何もない!」


 パッと見、数十体の小さなゴブリンに大きなゴブリンが四体ほど。涎を垂らしながら駆けて来る様子は気持ち悪いの一言だ。


 恐怖より気持ちの悪さが勝る。恐怖を感じないのは、今しがた召喚した二体の護衛が強そうな見た目をしているからだろうか?



「――――」


 護衛その一。なんともムカつくがイケメンがランダム生成されてしまった。


 腰にはよく見る長さの剣があり、邪魔じゃないのかと言いたくなるマントのような外套を纏っている。


 しかし髪色がピンク、更にピンク色の泥棒髭を生やしている。


 その綺麗な顔にピンクの泥棒髭って……ランダム生成の弊害を諸に受けた残念イケメンである。


「――――」


 護衛その二。はい来たランダム生成SSR。緑を基調とした露出高めの衣服を纏った女戦士だ。


 弓矢を携えるその女戦士の耳は、なんと尖っているではないか。


 エルフである、本当に耳が尖っている事に感動を覚えた。


 当たり前のように美形で、当たり前のように貧乳で、当たり前のように黒髪のエルフである。



「いや珍しいね? 黒髪エルフって」

「――――」


 あぁ、会話してぇ。こんな素敵エルフとお喋りしてみたい。


 護衛召喚の上位ギフトは言葉を発するらしいから、それを取得するまでは我慢か。


「めっちゃ美人……なぁ、頭撫でてもいい――――」


「――――おいアンタ! なにイチャついてんだよ!? 早く馬車を出してくれ!」


 いつの間にか馬車に乗り込んでいる青銅級パーティー。御者の許可なく馬車に乗り込むとは、なんて礼儀がなってないんだ。


 そんな彼らを無視して俺はゴブリン達の行く手に立ち塞がった。馬車の中から怒号が飛んでくるが、無視である。


 この数であればレベルアップに使える。先日のゴブリンと護衛との戦闘を考えるに、全く問題ないと思われるし。



『バトルシステムを選択してください』



【ターン制コマンドバトル――――選択不可】

【リアルタイムアクションバトル――――選択可】

【タワーディフェンスバトル――――選択可】

【カードバトル――――選択不可】

【放置バトル――――選択不可】



 ……あれ? コマンドバトルが選択不可なんだが、もしかして強敵か?


 あのデカいゴブリン、めちゃ強かったり? なんか一気に怖くなってきたんだが。


 逃げた方が良いかもしれない。そう思ったが念のためコマンドバトルをアクティブ状態にしてみると、選択不可な理由が表示された。



【パーティー登録者以外が戦闘に参加しているため選択できません】



 登録者以外が戦闘に参加……? いやしてないよね? 俺と護衛は登録済みだろうし。


「おいッ! 頼むから早く出してくれ! 金なら払うから!」


 ……もしかして、アイツらも戦闘に参加していると見なされてんのか? 全く言っていいほど戦闘の意思が感じられないが。


 まさか馬車にいるからだろうか? 竜のクエストみたいに控えの選手みたいな扱いなのかもしれん。


「まぁどちらにしろ、この数でコマンドバトルは選ばんけど」


 一ターンで何回攻撃される事になるのか、システムにボコされてしまう。


 ここは黙ってリアルタイムアクションバトルを……と考えた時、もう一つのバトルシステムの事が頭を過った。


 タワーディフェンスバトル。あまりやった事のない種類のゲームだが、記憶では拠点防衛みたいなシステムなはず。


 ここでいう拠点というのは馬車の事だろう。持ち駒を要所に配置し、迫りくる敵を倒して拠点を防衛するゲームだ。



「……面白そうだな」

「おい! なにが面白そうだってんだ!? まさか戦うつもりなのか!?」


「そこで大人しくしてて下さい。絶対に馬車から出ちゃ駄目ですよ?」

「ほ、本気なのか? あの数だぞ!?」


 別に彼らを守りたいからの発言ではない。彼らが戦場に出てしまうと、外的要因とみなされバトルシステムがリアルタイムアクションバトルに強制変更されてしまう。


 広範囲攻撃が出来ない状態で、この数を相手にする場合の最適なバトルシステムはタワーディフェンスなのだ、多分。



『タワーディフェンスバトルで戦闘を開始します』



【出撃ユニットを選択後、任意の場所に配置してください】


【出撃ポイント:30】


【ヨルヤ:出撃コスト・2】

【護衛A:出撃コスト・10】

【護衛B:出撃コスト・10】



「いや俺の出撃コスト安すぎだろ」


 まぁ正しいコストだが。システムは俺が使えないゴミユニットだと気づいているようだ。


 というかこれ、俺って出撃する必要なくね? 邪魔にしかならないと思うんだが。



【補足:出撃ポイントは時間経過と共に回復していきます】

【注意:同じユニットを二体以上配置する事はできません】

【注意:出撃ユニットが戦闘不能に陥った場合、再出撃はできません】



 注意書きを流し読み、まずはエルフちゃんを選択してみる。


 すると急に俯瞰的視点となり、戦場全体が見渡せるようになった。なんて凄いシステムなんだ、まるで大空を飛んでいるような感覚である。


 神視点という訳か。高所恐怖所じゃなくて良かったよ。


「彼女は遠距離攻撃だからな……えぇと」


 ユニットを配置できるのであろう場所が光り輝いている。前衛、中衛、後衛のような形で配置を行えるようだ。


 黒髪エルフたんを中衛の位置に、ピンク髭を前衛の位置に配置する。経験値が入らない可能性を考慮して俺も出撃する事に、もちろん後衛だ。


 もしかして配置したら瞬間移動でもするのかと思ったが、体が勝手に動いて小走りで持ち場に移動させられた。


 なんとも言えない感覚だ。足が地面に縫い付けられた時と同じように、自分の意思ではなく足が勝手に動いた。



「よし……じゃあ、バトルスタートだ!」


 配置を終えた俺はバトル開始を合図する。


 するとアナウンスが出た途端に停止したゴブリン達が、一斉に動き出した。


 コマンドバトルと同じく、一度システムが適用してしまえば行動が制限されるようだ。配置完了を待ってくれるなんて優しい奴らだな。



「な、なんだアイツら? 急に一列になったぞ」


 扇状に広がっていたゴブリンの群れが、規則正しく一直線に並びだした。


 列を成して向かって来るゴブリン達、一匹たりとも列を乱していない。未だに動かず列の順番を待つゴブリンがいるほどだ。


「……恐ろしいな、バトルゲーム化」


 これがタワーディフェンスバトル化か。


 列など成さずにさっきみたいに扇状に向かって来ればいいものの、決められた道筋を進む事しか出来なくなっている。



「――――」


 しばらく様子を見ていると、エルフちゃんが動き出し弓を引いて狙いを付け始める。恐らくゴブリンが彼女の射程に入ったのだろう。


 美しい……戦場に咲いた一輪の薔薇とは彼女の事だな。


「ギャッ――――」

「グゲッ――――」

「ブギャ――――」


「――――」


「デギャッ――――」

「グワバッ――――」

「グゲェェ――――」


 キモい……次々にゴブリンの死体が出来上がっていく。


 しかし彼女もまた強すぎである。前線にいるピンクは、さっきから剣を構えているが未だに敵が到達していない。


 こんなんただの作業ゲーやん……と思っていた時、ついにピンクにも仕事が回ってきた。


 ホブゴブリンの登場である。


「グッ……グッ……グッ……グッ……ウガァッ――――」


 ホブゴブリンの退場である。


 エルフちゃんの射程に入ったホブゴブリンは、彼女の攻撃を四発も耐えて見せた。


 しかし耐えたながらも進んだ先にいたピンクイケメンに斬られて終了である。


 残りのホブゴブリンに対しても、全く同じ行動で撃破する護衛達。


 程なくして全てのゴブリンが地に伏せた。


 ――――♪――――


 賑やかなBGMが脳内に流れ、戦闘終了を合図してきた。なんとも呆気なく終了してしまったが、いいのだろうか。



【リザルト】


【HP回復材(N)】 x 16

【獲得ゴルド】 : 330

【レベルアップ】 13 → 15



 やっす……戦闘で手に入れられる金はオマケ程度なんだな。


 まぁ回復材が大量に手に入ったので、これ以上文句は言うまい。


 まぁ金は……馬車の中でアホ面をしている冒険者たちから巻き上げる事にしよう。


 馬車に乗ったからには乗車料を貰わないとな。


お読み頂き、ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ