【2ー4】可愛い子に彼氏いないとか都合よすぎだから
そして次の日、再び王城で目を覚ました俺はルーティーンのようになっているショップを眺めて時間を潰していた。
今回の収穫は主に三つ。
まず一つはGP回復材を見つけた事。これを使用すればGPを回復できるがそうだが、アホみたいに高い。
【GP回復材(N)――――GPを総量の25%回復させる事が出来る未知の素材】
【補足:1日に1度しか使用出来ません】
%回復は計算が面倒であるが、とりあえずノーマルの回復材でも十万もする。全回復のスーパースペシャルレアなんて百万だ。
HP回復材のノーマルが千ゴルドなのを考えると、価値が百倍である。
収入が安定しないと手を出せない高級素材。具現化は出来ないようなので、町の店では売っていないチート素材なのだろう。
次の収穫は服装だ。防具などの他に町人装束や騎士装束など、コスプレ用品が色々と売っていたこと。
そろそろ俺も服装を変えようと思う。いずれは買おうと思っていたし、金持ちだと思われるも面倒になってきた。
【町人装束(R)――――未知の素材で作られている町人の一般的な服装。少しだけ高級品】
なぜこれも未知の素材なのか分からないが、とりあえず購入して着替えてみた。
少しだけいいのを買ったのは、ちっぽけな俺のプライドである。スーパーレア以上の服には普通に手が出なかった。
そして最後の収穫。これが中々に今後の俺の人生を左右するかもしれない大発見だった。
「馬車が売ってた」
最初にこれを見つけた時は、ショップから馬車を購入すればインベントリに収納できて楽かもな……なんてその程度だった。
だがよくよく売っていた馬車を見てみると、一つだけおかしな馬車が売っている事に気がついた。
「成長する馬車……?」
【成長馬車(改造可)――――経験を積む事で成長していく馬車。馬車改造ギフトで改造を施す事も出来る】
回復材などのようにノーマル表記やレア表記の代わりに、"改造可"と表記されていたのだ。
馬車が経験を積んだら普通は劣化していくと思うのだが……逆に成長するとはなんてファンタジーな馬車だ。
それに改造を施せるとは凄いな。成長と改造の違いがどれほどあるのか分からないが、馬車改造というギフトは取得してみたい。
しかし値段は三百万。今の俺には途方もない額、だが購入する事が出来ればいよいよ俺の御者人生が始まるのだ。
「さて、じゃあ行くか!」
誰もいなくなった部屋で意気込んだ俺は部屋を出た。
まずは三百万の前にバドス商会だ。一先ずはここで御者としてのイロハを学ぶ、ついでに商会も救ってやる。
ちなみに僧侶ちゃんとは昨日の夜にお別れをしている。
時間はまだあったのだが、素性の知れない者を王城に入れる訳にはいかないと言われたので、泣く泣く送還したのだ。
俺はしっかりと日給の5万を受け取り、バドス商会へと急いだ。
――――
「おはようございますっ!」
そして出社1日目。ついに今日からバドス商会の御者として仕事を始める。
向こうの世界でもそうだったが、やはり緊張するものだな。職場環境や人間関係など不安でいっぱいだ。
「おはようございまふぅ……もぅ来たんですかぁ……」
「…………」
寝巻き姿のまま、目を擦りながら現れたのはバドス商会の看板娘、フェルナ・バドス。
典型的な今起きましたアピールをかます彼女だが、俺は別にそこまで早く来た訳ではない。
もう外では普通に誰もが働いている。いくらなんでも寝すぎである。
「……ヒュアーナさんは?」
「あ~まだ寝てると思いまふぅあ~ぁぁ……ねむ」
「叩き起こしてこいッ!」
なんとも危機感のない親子である。今にも商会が潰れてしまうかもしれない事を分かっているのだろうか?
数分後、寝巻き姿で口元に涎の跡をつけた店主が姿を現す。
まずは就業規則から見直した方がいいと思ったのだった。
――――
着替えを済まし、落ち着いた所で打ち合わせを開始する。
朝食を取りながらの打ち合わせである。中々な量がある朝食だが、どこにそんな金があるのか分からない。
「この広告に護衛の文言を追加して下さい。銀二等級の冒険者が格安で護衛してくれる事になったので」
「銀二等級ですか? 凄いですね」
ヴェラ・ルーシーの名を伝えると、二人とも知っていたようで驚いた顔をしてくれた。
メモを取るフェルナと飯を食らうヒュアーナ。聞いた所によると、ヒュアーナはこれからアルバイトに出るそうなので食べなきゃないそうだ。
「あ、すみません私はそろそろ……」
そう言って商会を出ていったヒュアーナ。商会のトップが他店でアルバイトとか、この商会の未来は推して知るべしである。
まぁ金がないので仕方がないと割り切り、フェルナと二人きりで広告について議論を交わす。
「馬車に結界を張る事も出来るんだけど、どうだろう? アピールに使えるかな?」
「け、結界? もしかして護衛の方に結界師がいらっしゃるんですか?」
「いや、御者のスキルギフトだよ。御者なら自分の馬車くらい守れないとね」
「いやそれどんな御者ですか!? 御者にそんなスキルないはずですよ!?」
父が御者という事もあり、更には御者について学んでいるためフェルナは御者に詳しいらしい。
そんなフェルナが言うには、馬車結界や護衛召喚といったギフトは聞いた事もないそうだ。
「一体ヨルヤさんは何者ですか……」
「もしかして異世界人だからかな?」
「……はい? なんですかそれ、お伽噺じゃないですか」
どうやら異世界人召喚の事は、一般人にはお伽噺として認知されているようだ。
前回の召喚成功がいつの話で、どこの国だったのかは知らないがフェルナは生まれていないだろう。
ヒュアーナさんも生まれていないかも。何世代も前の話なんて、そんなものなのかもしれないな。
「広告はこんな感じでいいかな? 手書きで大変だろうけど、よろしく頼むよ」
「はい、任せて下さい!」
その後は定期馬車にした場合にどこの街に向かうかを話したり、その場合の時間についてなどを確認した。
和気あいあいと進む話し合い。フェルナは俺の冗談に笑顔を弾けさせ、楽しそうに今後について話していく。
なんかいい感じである。
この世界に来てから出会った女性は、身分が高すぎる人に性格がアレすぎる人しかいないため、フェルナといると落ち着く。
と、ここでふと思った。こんだけいい感じなのに、ゲーム化ギフトからヒロイン追加のアナウンスが出ていない事に。
ストーリー中だからだろうか? その可能性が強いだろうが、気になった俺は一応聞いてみた。
「なぁ、フェルナって結婚してる?」
「え? いえ、してないですよ」
「そうなんだ。おかしいなぁ、なんでリストアップされないんだろう?」
「でもその……彼氏はいます。一応、婚約もしてます」
「……なるほど」
はいそういう事ですか。そりゃこんだけ可愛ければ彼氏の一人や二人はいるわな。
なぜか物語だと可愛い子って彼氏がいないけど、よくよく考えればそんな訳ないわな。
……なんだろう、なんか一気にやる気がなくなった。
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