【1ー20】馬車召喚はありません
【☆初心者応援1週間ログインボーナス☆】
【2日目――――30GIp】
バドス商会に向かう道中、ログインボーナスの表示が現れギフトポイントを貰う事ができた。
ログインというが、俺は常時ログイン状態の廃人プレイヤーだ。そもそもログアウトする事ができるのか分からないが、魂と紐づいてんのにログアウトとか怖すぎる。
しかしいいのだろうか? なにもしていないのに俺だけボーナスが貰えて。
ゲーム化ギフト。オリジナルギフトとは唯一無二のギフトらしく、同時に二つ以上存在する事がない強力なギフトだとは聞いたが。
他のオリジナルギフトも異常な力を持っているのだろうか? よくよく考えれば神と意思の疎通を図れるカスタマーサポートも異常ギフトだよな。
「ま、貰えるもんは貰っとく。さて30ギフトポイントも増えれば……」
これで俺の所持しているギフトポイントは55。護衛召喚のレベルも上げらえるが、ここはまず御者のレベルを上げておこう。
求人にもLv3以上の御者ギフトが必須とあったし、Lv3以上が一般的なのかもしれないからな。
【GIp――――55】→【GIp――――40】
【ジョブギフト】
【御者Lv3】
Lvが上がったが、やはり特に変化は感じない。今の所は馬車を華麗に操縦できる気もしないし、特に知識が増えた気もしない。
まぁ一先ずはこれでよし。残ったギフトポイントで護衛召喚のレベルも上げておこうか、なんて考えた時だった。
【新たなスキルギフトが解放されました】
御者レベルを3に上げた瞬間に、そんな表示がなされた。そのため俺は解放されたというギフトを確認してみる事に。
御者のスキルギフトを見てみると、確かに増えていた。御者って全然スキルねぇな……なんて思っていたのだが、ジョブギフトのレベル上昇によって解放されるシステムだったようだ。
【眠々打破――――スキルギフト。眠気を瞬時に打破する事が出来る:消費GP5】
【馬車結界――――スキルギフト。馬車を中心に外部からの干渉を防ぐ結界を発生させる:消費GP25】
【従馬召喚――――召喚者の命令に従う従馬を召喚できる:消費GP10】
なんともまぁ御者なギフトだな。スキルと聞くとどうしても戦闘をイメージするが、見た感じ戦闘に役立ちそうなギフトはない。
眠気をなくすギフト。居眠り運転は危なすぎるからな、これは有用すぎるギフトだ。
結界を張るギフト。これは街の外を走る時に生きるだろうか? 魔物の襲撃を受けても馬車の近くにいれば結界に守られる、集客文句にも使えるな。
そして従馬召喚。なんてこった、エンジンを手に入れられるとは。これで馬車を引く馬の問題は一挙に解決だ。
「……これは全取得だな」
正直なところ、まだ必要のないギフトだと思うが。ただお誂え向きにこれから御者の求人に向かう所だし、ギフトを取得しておくのはありだろう。
資格のようなものだな。わたくし、眠々打破や馬車結界の資格を持っています! なんて就活でアピールできる。
そうと決まれば早速取得だ。護衛のレベルも上げたい所だが、強さ的に十分だし今回はスルー。
心なしか俺の後を追いて来る護衛から非難の声が聞こえた様な気がするが、まぁ気のせいだろう。
【GIp――――40】→【GIp――――10】
【ジョブギフト】
【御者Lv3】
【スキルギフト】
【護衛召喚Lv3】【眠々打破Lv1】【馬車結界Lv1】【従馬召喚Lv1】
こうして新たに三つのスキルギフトを手に入れた。これらのギフトは生涯に渡ってお世話になりそうなので、優先的にレベルを上げたい所だ。
さて、では早速だが従馬とやらを召喚してみようか。街中で馬に乗っている奴はたまにいたし、乗っちゃだめという事はないだろう。
ステータスを確認すると残りのGPは20。従馬を召喚する事は可能だ。
「(では……従馬召喚っ!)」
そう念じると、護衛を召喚した時のように黒い靄が地面より立ち上り、それは馬の形へと変わっていった。
形作られると護衛と同じように色づき始め、数秒後にはどこから見ても立派といえる栗色の馬となった。
カッコいい、サラブレッドみたいだ。しかし恐らく従馬もランダム生成だから、毎回こんな感じとはいかないかもしれない。
「――――」
「あ、やっぱり喋れないのね」
言っちゃなんだが人形みたいだな、生きている感じがしない。馬ってブルルっと鼻を鳴らしたり首を頻繁に上下するイメージがあるのだが、微動だにしないし。
物静かな馬と言われればそうかもしれないが、ずっと観察してみれば異様な馬だという事が分かる。
「えっと、乗ってもいいか?」
「――――」
やはり反応しないか。今回は動物相手という事で少し怖いが、召喚者の命令に従うとあったし暴れたりなどしないだろう。
それに単純に乗ってみたい。馬に乗った経験は一度もないので、どんな乗り心地なのか凄く興味がある。
よし乗ろう。まずは驚かせないように背中を撫で、これから乗るぞとの意思を伝える。
あとそうだな、少しだけ屈んでくれると乗りやすいのだが。
「――――」
「おっ? チャンス!」
微動だにしなかった従馬が僅かだが背中を下げてくれた。鐙は装着していないので素人の俺に乗れるか不安だったが、馬の方が動いてくれるなら乗りやすくなる。
勢いそのままに従馬に飛び乗った。轡と手綱は付いていたので、なんとか姿勢を保つ事が出来そうだ。
「よし、じゃあ行こうか?」
そういうと従馬は歩きだす。
歩くと言っても人が歩くより数段早かったが、後ろを見ると問題ないとばかりの表情をした護衛が追従しているので、もう少し速度を上げても大丈夫そうだ。
まぁ人も歩く道だし速度を上げる事は止めておこう。俺は手綱を握りながら教えられたバドス商会の場所を頭の中で確認し始めた。
「(えっと……ここを曲がればいいのかな)」
「――――」
「(う~ん、こっちかな? こっちに行きたい)」
「――――」
「おっ? そうそう、この商店を真っすぐ進めば……って、あれ?」
こいつ(従馬)、さっきから俺が思った通りに動いてるくね? それとも俺、無意識に手綱で進む方向を指示していたのか?
というか俺、普通に馬に乗っちゃってるな。それになんと言えばいいのかあれだが、馬の操縦がなんとなく分かるんだ。
御者ギフトがあるし、不思議な力で馬の操縦が出来てもおかしくないか。知識も経験もないのに、なんでか分かるんだよ。
「それともお前が優秀なのかね~? 主人の考える事が分かるみたいな?」
「――――」
まぁ、反応しないか。でも歩いている姿を見ればちゃんと馬だ。こうしてみると可愛いな、馬って。
さっきから何度か馬車を引いている馬などが目に入ったが、うちの子が一番かわいい。
「名前をつけたくなるな……えぇと、そうだな――――」
「――――そこのお前ッ! 止まれッ!」
急に怒声が背後から響き渡り、俺は慌てて後ろを振り向いた。
二人の護衛の更に後ろ、軍服を着た二人の警官が俺の事を睨みつけているのが目に入った。
馬を止め二人の警官が近づいて来るのを待つ。なんか交通機動隊に捕まったドライバーの気分なんだが、俺スピード違反とかしてないよな?
「お前! ここは馬道じゃないぞ! なんで馬を走らせているんだ!」
えぇ知らんよ。まさか本当に交通違反で止められたとは。
馬道って、車道みたいなもんか? それだったら確かに俺が悪いが。
切符を切られるんだろうか? 嫌だなぁ……と思っていたのだが、近づいてきた二人の警官はニタニタとしており、変な雰囲気を纏っていた。
お読み頂き、ありがとうございます




