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【4-Another-ヂモフェイ】バカバカリ

ヂモフェイ視点






 ファルエンドが異世界人を召喚したとの声明を各国に出した時は、なんて幸運なのだと舞い上がり喜んだ。


 私の管轄である国、更には駐屯する場所に召喚された異世界人。すぐ手の届く先に、喉から手が出るほどに欲しかった者が転がり込んできたのだ。



 異世界の事に最も精通している世界警察に身を置き、厳重に管理されている過去の異世界の情報にアクセスできる立場となるため、執行官の位へと上り詰めた。


 だが執行者の立場ですら、閲覧できる情報はたかが知れていた。そもそも世界警察が管理する異世界の情報は、外に出す事が固く禁じられていたためあまり意味をなさなかった。


 離れた場所にいる者と通信できる技術など、もの凄く心が躍ったが……それらの技術は研究する事はおろか情報の閲覧すら禁じられていた。


 つまるところ、世界警察で管理されている異世界の情報は、私の欲を一切満たしてくれない。


 身の置き場所を誤ったかと後悔した。いくら異世界の技術が手の届く先にあっても、届かない、使用できない、独占できない。世界警察の組織としての管理、統制が完璧すぎた。


 となれば世界警察が管理していない異世界の技術、情報を手に入れるしかない。だがそれは、当たり前だが容易な事ではなく月日ばかりが流れた。



 しかし十数年後、それは急に訪れた。数百年ぶりに、異世界人が召喚されたのだ。


 どの者が異世界人なのか、目星はすぐについた。頻繁に王城に出入りする若者、そんな事が出来るのは勇者として召喚された異世界人だけだろう。


 一先ずは機を待った。世界警察の執行官という立場が、逆に行動を制限してしまっていたのだ。


 異世界人は大国の王家によって保護されている。下手にそれに手を出し見咎められれば、終わりだという事は分かっていた。


 彼らと接触、関りを持つことは容易い。だが私は、あの世界の者、情報、技術を独り占めしたかった。


 世界警察だけには渡す訳にはいかなかった。


 だから情報を集め、念入りに準備した。召喚された事が各国に通達された以上、異世界人を独占するには、世界から強奪するしかないのだ。


 自分には火の粉が降りかからないようにする、逆に自分が火の粉を振り払う存在となる。私にはその力も立場も、説得力もある。


 簡単に言えば、第三者に異世界人を強奪させ、私がそれを奪い取る。その際に関りを持った者達を排除し、異世界人は第三者に殺されてしまったと世界に伝える。


 第三者に全ての罪を被せ、私は安全に異世界人を手に入れる。単純かつ明朗、世界警察の目さえ誤魔化せれば全てが上手くいく。


 世界から強奪する。それは、世界に認知させるという事。異世界人は殺され、この世界にもういない……それが周知の事実となれば、誰から追われる事もない。


 そこで私が目を付けたのがマーシャル王国だ。異世界人を欲しているかの国の情報を集めていると、なんと異世界人の奪取を目論んでいたのだから驚きだ。


 ちっぽけな王国が、堂々と世界法律を犯そうとしているとは滑稽である。仮に異世界人の奪取に成功したとして、逃げられると思うのか? 世界を相手に戦えるというのか?


 だが私にとっては非常に好都合だった。弱者、弱小国であればあるほど私には好都合。


 すぐさま私はマーシャル王国と接触し、秘密裏に準備を進めていった。


 あとはいつ異世界人の強奪を行うか、それだけだった。ここまで待ったのだから、あと少しは待とう。王家の管理が緩くなる、その時まで。


 その時までは真面目に職務に励もうと思う。今日は王子の生誕祭、まずはこの仕事を全うしよう。


 そう思っていた時、事態は急変した。



「……おい、これはなんだ?」

「なにって、異世界人のガキどもだ」


「……では、こっちの死体はなんだ?」

「騎士に見つかってしまってよ、口封じするために殺した」


「…………馬鹿なの?」

「あぁん!? なんだって!?」


 これが私の大失態。組んだ相手が、予想以上に頭の足りない大馬鹿者だった。


 あろうことか生誕祭中に、そしてあろうことか騎士を殺して王城内で拉致誘拐を行う。


 馬鹿である、大馬鹿者である。なぜこれほどまでに厳戒態勢の今日、そのような行動に出たのか全く理解できない。


 誘拐する人物が王子だというのなら、衆目の前に姿を晒す生誕祭中の誘拐は理解できる。だがこいつらは、普通にそこら辺を歩き回る異世界から来ただけの一般人だ。


 なぜ今日なの? 馬鹿だ。そもそも私は時期が来たら連絡すると言っておいたのに、なぜ勝手に行動したのか……あぁ、馬鹿だからか。


 ……ふざけるな馬鹿どもが。お前ら馬鹿のせいで、私の計画全てが破綻しようとしているのだぞ。



「常時でも検問を突破するのは楽じゃねぇ。だが協力者が検問をしている今日であれば、楽に突破できる。俺達、頭いいだろ?」

「…………いや、馬鹿だろ」

「んだとォッ!?」


 生誕祭中に、王城で、騎士殺し及び異世界人の誘拐。そんな事をしたら王家が、世界が黙っている訳がない。


 こいつらは馬鹿だから、絶対に目撃者や証拠を城内に残している。だって馬鹿だもん、完璧に事が運んでいる訳がない。


 それにお前たちは個人ではなく、国の代表として生誕祭に参加していたのだ。それはつまり、国の催しに国が参加していたという事だ。


 個人の断罪では済まされない。今回の事が露呈すれば、世界から断罪されるのはお前の国だぞ。


 そんな事も理解せずの凶行。馬鹿すぎて言葉を失ってしまう。自国がファルエンドより大きいならまだしも、戦争になればマーシャルなど容易く踏み潰されるというのに。


「とりあえず通してくれよ。いずれ攫うつもりだったんだろ? 少し早まっただけじゃないか」

「…………」


 時間がない、即座に頭を回す。


 ここでこいつらを捕まえる事は容易い。そうした場合、世界警察が介入して戦争を未然に防ぐ事が出来るだろう。


 私の立場を保護するには、それを選択して関係者を全て始末してしまえばいい。処刑を執行する権利、それを私は与えられている。


 しかし今後、異世界人の保護はさらに厳重なものとなる。ファルエンドは元より、世界警察も異世界人の保護に名乗り出るだろう。


 そうなれば、異世界人の独占などは不可能となる。世界警察、ないしはファルエンドのような大国に技術、情報が管理される。


「おい、早く通せよ? グダグダしてると他の奴が来ちまうだろ?」

「……黙っていろ、馬鹿どもが」


「っ!?」


 殺気を飛ばして馬鹿どもを黙らせる。私がその気になれば、数秒で命がなくなるという事に気が付いた馬鹿どもは押し黙る。



 逆にここでこいつらを通せば、世界警察は介入しなくなる。王家が本腰を入れ捜査し、戦争にまで発展する。


 大国同士の戦争が始まれば、世界警察は介入しない、肩入れをしないのだ。


 私は通行管理の責任者として、その責任を取らされるだろう。それはいいのだが、権力がなくなった私は世界警察が保護した異世界人に、近づくことは難しくなるだろうな。


 となれば、とれる選択は二つ。正確には、意味を成す選択は二つ。


 一つ、こいつらを処断し次の機会を待つ。


 しかしそれは異世界人の保護が強力となるため、独占は難しくなるだろう。


 もう一つは、こいつらの行動に便乗する事。


 異世界人をマーシャルに運んだ後、隙を見て異世界人を奪取し、関係者を始末すればいい。


 その際、異世界人はマーシャルに殺された事にする。一歩及ばず……それを演出すれば、なんとかなるかもしれない。


 しかしそれに成功したとしても、私は管理の不手際を糾弾され、世界警察での立場を失う。しかし代わりに、異世界人を手に入れる事が出来る。


 世界警察での立場か、長年の夢か。そんなの、比べるまでもない。


 いや、正直に言おう。


 もう、待てないのだ。


 最善の選択は、この馬鹿ども及び関係者を全て始末し、ここで異世界人を救う事。


 頭の中では理解しているのに、私の欲がそれを頭の角に追いやってしまう。


 愚かな行動を取れと、私の全てが。冷静になれない、判断が、考えが纏まらない。


 これはチャンスではない、地獄への第一歩となろう。


 なのになぜ私は……あぁ、そうか。


 私も、馬鹿だったのだな。



「……行け、後から追う」

「へへ、おう! よろしく頼むぜ!」


 私は……いや、俺は世界警察を捨てよう。残り少ない人生、夢に生きようか。


 報告を上げずに奴らと動けば、俺はマーシャルと手を組んでいる……そう判断され追手が掛かる。


 表立っては動かないだろうから、抹殺者が送り込まれる可能性が高い。



「これで俺は褒美がもらえる。楽しみだぜ!」

「…………本当に馬鹿だな」


 お前の国はなくなるのだ。お前の行動によってな。


 まぁいい、俺も馬鹿者だからな。共に滅び行こうか。


お読み頂き、ありがとうございます

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