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【4-6】元気なヒロイン達






 丸一日かけて、ファルエンド王国領内の宿場町、バシリスクに到着した。


 これより先の街はマーシャル王国の領土であり、このバシリスクが実質安全に宿泊できる最後の宿場町となる。


 マーシャル王国でも宿に泊まろうと思えば泊まれるだろうが、いつ奇襲を受けるか分からない以上、宿に宿泊するのは避けた方がいいだろうという話だ。


 バシリスクに入場し小休止。宿を探す前に馬車内で作戦会議を行う。


「さてここからだが、通常のルートで関所を通れば最速でマーシャル王国の王都に辿り着けるが……」

「その場合は、確実にマーシャルの刺客から攻撃を受けるって事ね」


「でも関所を通らないと、深い森を抜けるか山脈を越えなければならないんだよね? 森はまだしも、山脈は馬車は通れないよ」

「(問題ない。向かってくる敵は排除すればいい)」


「(おいアンジェ。念話が聞こえるのは俺だけだぞ、声に出せ)」

「(むぅ~そうだった……めんどくさいね)」


 関所を越えればマーシャルに俺達が追いかけている事を知られる。そもそも関所には誘拐犯達が通る際に情報が伝えられるだろうから、俺達が安全に抜けられるとは思えない。


 仮に関所を越えたとしても刺客が動き出す。それを撃退できたとしても関所を越える通常ルートの道中、及びルート上の街には刺客が張り巡らされている事が予想される。


 その理由から、関所を越える事イコール宿での宿泊が出来なくなるという事。奇襲をするのであれば、寝込みを襲う事が一番だろうからな。



「仮に、森を抜けてマーシャルに不法入国した場合はどうなるんだ?」

「すぐに刺客と相対する可能性は低いだろうが、いずれは接触する事になるだろう。王都近郊には確実に刺客が送り込まれているだろうからな」


「でも逆を言えば、王都近郊までは安全に行ける可能性が高いって事よね? 寝込みを襲われるなんて冗談じゃないわ」

「時間は掛かるだろうけど、それがベストじゃないかな? 最速ルートを通ったって、こっちには御者が一人しかいないんだから休憩は必要だし」


「向こうは複数の御者を回して休憩なしで王都に向かっているはず。馬は途中の街々で乗り換えるつもりだろうからな、追いつけはしない」

「追いつけないのであれば、急がなくていい。ヨルヤの事を優先しよう」


 どちらにしろ、道中での奪還は難しい。関所をすんなり越えられもしないだろう、なんだかんだ理由を付けて越境を遅らせてくるに違いない。


 強引に関所を突破も出来そうな気がするが、その場合は常時追手に追われるという精神的苦痛を味わう事になる。



「じゃあ決まり。森を抜ける」

「ならば、暗い今の内に森の中に入るのがベストだな」

「森、一日で抜けられるかな? 馬車が通れればいいけどね」

「ダメな時はヨルヤの従馬に乗りましょ。歩くのは流石に厳しいわ」


 俺達は関所を通る通常ルートではなく、森を抜ける迂回ルートを選択した。


 真っすぐに進んで敵を蹴散らす事も可能だと言うが、その場合はマーシャルからの攻撃が止まず、体力および精神疲労が酷いだろう。


 御者の俺が体力不足で倒れてしまう事への懸念、申し訳ございません。そしてなにより戦闘員の体力の温存だ、メインの決戦はマーシャル王都になるだろうし、辿り着いた時に疲れていますでは話にならない。



「じゃあここで食べ物を調達しよう。飲み物と保存食はあるけど、生誕祭があって運行を休止してたから食い物を積んでない」


「じゃああたしとヨルヤで食料を調達してくるわ、何回もやってるし」

「いいよいいよ、私が行く。前衛職のみんなには体力を温存してもらわないと」

「買い出しくらいで体力は消耗しない。そもそも私は体力に自信がある、私が行こう」

「(ねぇヨルヤ、こっそり抜けて私と行こうよ? この子たちは放っておいて)」


「元気な奴らだな……もうみんなで行こうぜ……」


 きっとストーリー中でなければ、恋愛の選択肢が表示されていた事だろう。この中の誰と買い物に行く? みたいな。


 まぁ表示されていたとしても、きっと俺はこの選択をしたはず。みんなで行く、それがきっとハーレムルートへの選択肢なはず。


 しかし、我が強いというか個性が強い面々だ。とてもじゃないがこいつらとハーレムルートに進める気がしないのだが。




 ――――




 バシリスクで物資を調達し、関所の南側に広がる広大な森の中に入った。


 この森はファルエンドの領土でも、マーシャルの領土でもない中立地帯だとイネッサは言っていた。


 そのため一切の整備が行われていない深い森。辛うじて馬車が通れているが、この分だといずれ馬車のような大きな乗り物は通行不能になるだろう。


 なんて事を考えてから数時間後、予想通り馬車の通行が厳しくなる。この先は従馬ないし徒歩でしか移動は困難だ。



「限界だな……」

「あぁ、だがよく進んだ方だ。普通の馬であれば、馬車を引いてこのような道は通れまい」


「うん。よく頑張った」

「相変わらず凄い馬ね……」


 微動だにしない従馬の事を撫でるアンジェとヴェラ。念のために彼女達に危害を加えるなと従馬に命令を出す。


 今の従馬召喚のレベルは4。このレベルがどれほど影響しているのかは分からないが、イネッサの言う通りよくここまで走ってくれたと思う。


「今日はここまでかな? ヨルヤ君ならまだしも、私達じゃこの暗い森の中で馬に乗るのは厳しいよ」

「ヨルヤの従馬なら大丈夫な気がするけど……でもそうね、そろそろヨルヤも限界でしょ」


 生誕祭の日の夜に出発して、今は暗い森の中。眠々打破ギフトを使用して眠気は吹き飛ばしていたが、ほぼ二日寝ていないので流石に眠い。


 日が昇るまでの数時間、俺は眠らせてもらう事にした。軽く食事を行った後、個室車両に入って睡眠を行う。


 グッスリだった。だから全く気が付かなかった。俺が寝ている間に、刺客の襲撃があった事など。



「……む」

「ん……? 何よピンク、どうしたの?」


「気安く話しかけるな小娘が……しかし閣下はお休み中、起こすのは憚られるか」


 モモヒゲの言葉に首を傾げるヴェラ達。おかしな言動はいつもの事かと気にしないで食事を再開するが、その数秒後に事態は急変した。


 まずイネッサとアンジェが、次いでクロエが。その三人に遅れてヴェラとラリーザも気が付いた。



「……誰」

「まさか、この森にも差し向けられているとはな」


「はぁ……めんどくさいわね」

「ヨルヤ君を起こさないようにしないとね」


「桃の介。クロエはヨルヤを守護します」

「ふん! ワイもそのつもりだ!」


 森の奥から向けられる複数の視線に気づいた面々。それなりの実力者が、かなり集中してやっと感じ取れるかといった程の小さな気配。


 それに真っ先に気づいたモモヒゲ。彼は気配察知に優れており、イネッサやアンジェという実力者よりも数秒早く察知できていた。


 驚くほど冷静な面々に、あっと言う間に気配を悟られた事に驚く視線の主。もうこの時点で勝敗は決していると言っても過言ではなかった。


「数は七……八」

「ふむ。では私とアンジェリーナ様が三人ずつ受け持とう」


「イネッサ、様はやめて? お友達」

「……では、暫くの間はアンジェと呼ばせてもらおう」


「数まで分かるのか……流石にあたしは数までは分からないわ」

「う、うん。流石は剣姫と執行者だね」


「ラリーザ、いつも通り支援よろしく」

「うん、暴れちゃっていいよ」


 全く緊張している様子のない四人。全員が全員、美しく可愛らしい、戦いとは無縁のように見える女性たち。


 だがその女性たちが放つオーラは、圧倒的強者のそれであった。


 念のためだという理由で森に送り込まれた刺客たち。まさかのそこがビンゴ、獲物を見て思わず喜んだのだが……数分後、彼らは後悔する事になるのだった。


お読みいただき、ありがとうございます

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