【4-4】情けない主人公と頼もしいヒロインズ
王城の前で馬車を具現化し、馬車内で待機していた守護者達と合流した。
俺の馬車について改めて説明し、守護者達に簡易的な自己紹介を行ってもらう。
「なんか増えてるわね……というかなんでピンクよ? 恐ろしく似合ってないわ」
「残念イケメン……だね。まぁ私は顔とかどうでもいいけど、とりあえず似合ってない」
「小娘が囀りよる、まるで地獄の子鬼よのぉ。次に閣下より賜った桃髭を愚弄しよったら……桃色の炎に抱かれて死ぬ事になるぞ?」
「別に俺が与えた訳じゃない。俺まで厨二病みたいに思われるからやめろ」
「見慣れぬ装束を纏ってるが……随分と露出が多いな。これがヨルヤの趣味なのか?」
「この子がヨルヤの理想……うん、良かった。大体似通った体型」
「ヨルヤに発情している雌達に言っておきます。どんなに頑張ってもクロエには勝てないので、無駄な努力はするだけ無駄です」
「煽るな煽るな! こいつら強いんだから、ギャグじゃ済まなくなるんだよ!」
とりあえず和やかに? 自己紹介も済んだので、俺達は馬車に乗り込んだ。
俺は御者席に、アンジェ達は客車に。クロエとモモヒゲは従馬に乗って周囲の警戒を行ってもらう。
マーシャル王国はファルエンド王国より西南に位置する国であるため、俺達は一先ずファルエンド王国西方にある街、バシリスクに向けて馬車を走らせる。
一度行った事のある街なので、特に問題はないだろうと俺は従馬に自動運転の指示を出して客車へと乗り移った。
「本当に御者なしで走るのだな……いや、走らせる事は出来るのだろうが、速度が一定で息もピッタリとは……恐ろしい馬だ」
「まぁ、あたしも初めて乗った時は驚いたわ。後で馬に乗らせてもらいなさいよ? 他の馬になんて乗れなくなるわよ」
「ヨルヤの馬車は世界一、本当だった」
「あはは、冗談抜きで世界一かもね。それに見てよこのアメニティ、どっかの高級ホテルみたい」
客車に移ると女性陣がザワザワしていた。身分とか色々と違うはずなのに、もうすっかりお友達感覚の四人。
どうしてこうも女性は距離を詰めるのが上手いのか。今は生理用品を片手にサービスの質について目を輝かせているが、男がいる事を忘れないでほしい。
「ヨルヤ。本当にこれらは、全てを無料で提供しているのか?」
「まぁ、そうだな。そんな頻繁に使う物でもないだろうし、持ち出しさえ禁止すればそこまでのコストじゃない」
「ねぇヨルヤ、このお酒も飲んでいいんでしょ? こんな綺麗な色のお酒、見た事ないわ」
「あ~、私も飲みた~い」
「ヨルヤ、このお菓子も食べていいの?」
「ふむ。甘い物なら私も頂こう」
「お菓子は子供用で酒は有料だ! というかお前ら、緊張感を持て! まずは作戦会議をするぞ!」
まるでどこかに旅行でも行くかのような車内の雰囲気。常時なら大好きな雰囲気で俺も乗る所だが、今はリーダーとして気を引き締めなくてはならん。
個人個人はそこまでって感じだが、集まると個人の雰囲気は増長して女子会みたいな雰囲気になっている。
まぁ緊張しすぎもよくないし、下手に悲痛な空気を出すと車内の雰囲気がアレになるから、いいっちゃいいんだけどさ。
「とりあえず、先に今後の事について話そう。リラックスするのはその後でいいだろ」
「そうだな。では私から、今後予想される事について話しておこうか」
流石は世界警察の執行者。表情は柔らかいがピシッとした雰囲気が伝わってくるので、周りの空気も一変した。
アンジェとは違ったカリスマ性を持つイネッサ。そのイネッサは話を聞く準備を整えた俺達を一見した後、静かに語りだした。
「まず奴らが通るルートについてだが、基本的には正規ルートで国に戻るはずだ。正当に国境を越え、最速でな」
「そうなのか? でも国境に関所とかあるだろ? そこで止められるんじゃないか?」
「事件が起きてから奴らは即座に国を出ている。情報が国境検問所に届くより前に、通過してしまうだろう」
「通信手段が乏しいからか……電話みたいなのを開発できれば、歴史に名が残るな」
ともあれ、国境で止められていないのであれば国内での接触は厳しいものとなる。
これが計画された犯行であるのなら、逆に俺達はマーシャル王国の国境で止められるかもしれない。
「ファルエンド王国内では、特に何も起こらないだろう。奴らはただひたすらに、自国の関所を越えるために直走るはず」
「自国に入られたら面倒だけど、流石にどうにもならないわね」
「そして、ファルエンドの国境検問を越えた後で……まず間違いなく奴らの妨害が入るだろうな」
「私達の足止めが目的? 王都に入るまでの時間を稼ぐつもりとか?」
「それもあるだろうが、基本的には追手の殲滅が目的だろう。マーシャル国内であれば、如何様にも情報操作ができる。不当に国境を越えた者を排除しただけだ……とかな」
「難しい話はよく分からない。向かってくる人達は……殺してもいいの?」
「なかなか物騒なお姫様だ……が、向かってくる者であれば問題ないだろう。こちらには大義名分がある」
騎士殺しが発覚した事で俺達も動きやすくなった。俺達というか、彼女達がだけど。
向かってくる者は、後先考えず薙ぎ倒して進んでも問題ない。そんな事をしても、世界警察はおろか各国から非難される事もない。
それに向かってこられたら対応するしかないしな。大義名分もあるし、そもそも奴らは誘拐犯なのだから。
「まぁそもそも、数日もすればファルエンド王国が宣戦布告をするのよね? あたし達が手を下さなくても、マーシャル王国はお終いだわ」
「そうだな。マーシャルの上層部が、今回の事に絡んでいるのかどうかで話は変わってくるが……いずれにしろ、戦争後は色々と変わるだろう」
争いが始まれば勝利か敗北、いずれかの形で決着が着く。
戦争が始まるのはまず間違いない。どんな形、どんな結果であれマーシャルはお終いだ。
戦力が拮抗しているのであれば決着まで時間が掛かるのかもしれないが、今回は戦力差的に決着は早いだろう。
「布告されれば戦争状態になるから、警備が厳しくなるよね? 可能ならその前に奪還したいけど」
「ファルエンドの使者がマーシャル王国に宣告する前に、王都に攻め入るのは控えた方がいいだろう。向かってくる敵の殲滅ならいいが、こちらから堂々と攻めるなら布告後だ」
「つまりなんだ……宣戦布告前に騒ぎを大きくしないように奪還作戦するか、もしくは布告後に正面から堂々と攻め入るって事か?」
アンジェ以外の全員がそれに頷いた。アンジェはよく分かっていないというより、この面倒な政治的駆け引きが嫌いな様子。
騎士を殺し、人を誘拐した者達など全て排除すればいい。
そのようにアンジェは考えているのか、少し表情が険しい。俺的にもその方が分かりやすいのだが、色々あるのだろう。
「まぁ降伏勧告もするんだろうから、もしかしたら穏便に片付くかもしれないしね」
「そうだな。だが今回のような愚な行いをする連中だ、素直に応じるかどうか」
「だけど降伏勧告って十日後に行われるんでしょ? それまで待つの?」
「状況次第だろう。相手は腐っても国なのだ、個人で対するには限界がある。それに、こちらにはヨルヤがいる事を忘れるな」
「そうだぞ、忘れるなよ? 俺の事を守ってくれなきゃ、俺死ぬぞ?」
「「「…………」」」
イネッサがそう言うと、3人のヤル気満々女子が口を閉じた。
この中で唯一の非戦闘員。凄く情けないし申し訳ないし面倒だと思うけど、俺は君達に守ってもらわなければならない。
「安心しろ、ヨルヤの事は私が守る」
「アンタは敵を殲滅しなさいよ、ヨルヤはあたしが守るわ」
「いやいや、後衛の私といた方が安全だと思うよ?」
「ヨルヤの敵は全て斬り捨てる……捨てますわ。だから安心して」
いや~ほんと、俺のヒロインってなんでこうも頼もしいのだろう。
出来ればその立ち位置には俺がいたかったが、御者だから仕方ないんだ、うん。
「ヨルヤは私といるのが一番安全だ」
「付き合いの長いあたしが一番よ!」
「一番は後衛の私といる事だって!」
「ヨルヤは私の、私だけの一番です」
「じゃあさ、全員で守って――――」
「「「「ヨルヤ、だれが一番!?」」」」
「いや、なんか意味が違くなってないか……?」
俺が明言しないものだから、誰が一番だという言い合いは暫く続いた。
やはり一番がいいんだよな。ハーレムを目指しているなんて言ったらどうなるだろう。
お読み頂き、ありがとうございます




