【4-1】新たなストーリーの始まり
第四章となります
『ストーリー【囚われの異世界人】を開始します』
王子の生誕祭中に攫われた異世界人。攫った者達はマーシャル王国の者であるとの目星も付け、俺達は攫われた者達を救出するべく動き出した。
再び始まったストーリーイベント。長期クエストのような感じのイベントだが、クエストとは違いクリアー条件も時間制限も分からない。
基本的に、物語は道筋に沿って進んでいく。俺が介入しなくとも、いずれかの結末を迎えてストーリーは終幕するのだろう。
それが幸福な結末となるのか、不幸な結末となるのかが違うだけ。誰にとっての結末なのか、それは分かり切った事だ。
もしかしたらストーリーとは、望まぬ形で終幕する物語を変えるために用意されたチャンスなのかもしれない。
「――――マーシャル王国の検分を行ったのは、ヂモフェイで間違いないな?」
「は、はい。確かにヂモフェイ様がマーシャル王国の一団を検分し、通行を許可しています」
「それで、当の本人はどこにいる?」
「それが先ほど、緊急事態とかで……管理を私に引き継いだ後、どこかへ向かわれてしまいました」
マーシャル王国が通過したという西門に、俺とイネッサ、ヴェラとラリーザはやって来ていた。
どこかへ向かったというヂモフェイの代わりに、現管理者として検問を取り仕切っていた男にイネッサが厳しい表情で詰め寄る。
「緊急事態とはなんだ? どこへ向かった? 疑問に思わなかったのか? 中央本部への報告は? そもそも検分は複数人で行ったのか?」
「い、いえ……それは……分かり、かねます……」
イネッサのあまりの威圧感に言葉が出てこなくなる管理の者。それを見ていたら分かるが、執行者の行動に異議を申し立てる事は中々できそうにない。
やはりそうだったようで、ヂモフェイの行動に口を出す事が許されない雰囲気が、今回はあったそうな。
しかしそもそも、基本的に執行者というものには全幅の信頼を置いている。ヂモフェイの検分、行動には疑問を抱いていなかったらしい。
「これ以上は何も出てこなそうね」
「うん。でも状況的に、そのヂモフェイって人が絡んでいるのは間違いなさそう」
「ヂモフェイは黒だろう。誘拐された者を乗せたマーシャル王国の馬車を通過させ、合流するために出て行ったと考えるのが自然だな」
「ならとりあえず、カール達と合流しないか?」
「……そうだな。では先に行っていてくれ。城門の前で落ち合おう」
なぜイネッサは別行動をしようとしたのか、その時は疑問に思ったが城門前で合流すると理由はすぐに分かった。
城門前で合流したイネッサは、軍服を脱いで動きやすそうな服装に着替えていたのだ。
話を聞くと、世界警察としてではなくイネッサ個人として俺に力を貸すという形で動くらしい。
「もしヂモフェイが私達の想像通りに動いていたのだとしたら……世界警察は動かないだろう。私も世界警察として動こうとすれば、動くなと厳命されるはずだ」
「な、なんでだ? 人が誘拐されているんだぞ? 警察の出番じゃないか」
「……すまないが、色々とあるのだ。私は世界警察の執行者ではなく、ヨルヤの友人として今回の事に力を貸そう」
あとでヴェラとラリーザがこっそり教えてくれたが、世界警察は身内のミス、もしくは不祥事を揉み消すつもりだろうという話だ。
ただのミスならまだいいが、もし意図して犯罪者に助力したのだとしたら大問題。今回の事に世界警察が動けば、その不祥事を認める事になる。
王家は体裁のため、世界警察の検問不備について糾弾しない。自分達の管理不備を棚に上げ、世界警察の不備だけを糾弾できないのだ。
糾弾されないのであれば、世界警察は知らぬ存ぜぬを貫くことが出来る。つまり今回の事件に、世界警察は動かない。
「なんか、本当に面倒だな……」
「……そうだな、それは私もそう思う」
イネッサが表情を曇らせる。俺も微妙にモヤモヤするのを感じていたが、一先ずはカール達と合流する事にした。
――――
王城でカールとエリー、アンジェと合流した俺達は、状況を説明する。ついでに力を貸してくれるイネッサ、ヴェラとラリーザの事も紹介した。
「お初にお目にかかる。カールハインツ王子にアンジェリーナ王女、エカテリーナ王女」
「お初にお目にかかります……ヴェラと言い……申します」
「は、初めまして、ラリーザと申します……」
流石にイネッサは堂々としていたが、王族と言葉を交わすなど経験のないヴェラとラリーザの表情は引きつっていた。
一体どんな事があったら王族と知り合えるのだと二人に詰め寄られたので、二人には俺が異世界から召喚されたのだと説明を行った。
「異世界から召喚って……嘘でしょ!?」
「お伽話……本当だったんだ」
なかなか信じようとしないヴェラとラリーザだったので、カール達が本当だと説明してくれた。一般人への発表はしないらしいので、あまり口外しないようにとも言われていた。
「そもそも誰も信じないわよ……」
「そ、そうだね。お伽話を本気で信じている痛い子って思われちゃう……」
「それよりあなたたち、ヨルヤとはどんな関係?」
どこかいつもより険しい表情をしたアンジェが、イネッサとヴェラ、ラリーザに俺との関係を問いただした。
アンジェの隣では声に出さないものの、興味があるのか真剣な表情をするエリーの姿もある。俺とカールだけが、それどころじゃないのだが……そんな表情をしていた。
「あたしはヨルヤの護衛……です」
「お、同じく護衛です……でいいんだよね?」
「私はヨルヤの友人です。とても仲がいいと自負しております」
「「「「…………」」」」
なに余計な一言を付け足してんだよ……? といった目をイネッサに向けるヴェラとラリーザ。王族を前に全く緊張した様子がないイネッサを、警戒している様子のアンジェとエリー。
なにやら不穏な雰囲気が漂い始めるが、本当にそれどころではない。流石にカールが空気を変えようと割って入った。
「こほんっ! 自己紹介はそのくらいにして、今後の事を話そう……って聞いてる?」
「あなた……危険人物その一に任命してあげる」
「ふふふ。光栄です、アンジェリーナ王女」
「……ラリーザ、ここは手を組みましょ? そうでもしないと、あの女たちには勝てないわ」
「そ、そうだね。王女に執行者ってちょっと強すぎるよ……二人がかりで誘惑すれば、ねぇ?」
「私の事もお忘れなく。しかしこの話は後日と致しましょう」
エリーが率先して今回の話を纏めてくれる。王城内で起きた事件、現在の状況、今後の事について話を纏め上げていく。
今回、マーシャル王国が世界警察の検問を突破したことに王家は触れない。あくまでも王家は、自らに行われた行為に報復するため行動していく。
「随分と適当な賊だったようでね、事件現場に色々と残されていたんだ」
「そして、姿が見当たらない騎士達の捜索が進んでおります。騎士達が見つかれば、証拠は揃うでしょう」
「証拠が揃い次第、マーシャル王国へ抗議を行うよ。いや、場合によっては抗議だけでは済まないだろうね」
抗議だけで済まないというのは、武力を持って相対する……つまり戦争するという事だろうか?
個人と個人の争いではなく、国と国との争いとなれば沢山の血が流れる。事は俺が想像した以上のスピードで、想像以上の事態となっている。
「それでヨルヤ、君たちはどうするんだい?」
「俺達は……誘拐された人たちを助けに行くつもりだ。みんなが力を貸してくれるっていうから、やってみる」
「……そうか。ところでイネッサさん、あなたはもしかして……」
「私は、ヨルヤの友人としてここにいます。今回の事が片付くまで、その立場は崩さないでしょう」
イネッサは軍服を脱ぎ、ただの綺麗なエルフのお姉さんとなっている。そんな綺麗なお姉さんは、現在俺の最高戦力だろう。
俺達はオウカ達を救出するために動き、カール達は国として今回の事に対する抗議を行う。
「兄さん、私もヨルヤに付いていくから」
「な、なにを言っているんだいアンジェ!? 君は王女なんだよ!? 王女が証拠もなしに他国に行って暴れたら、面倒な事になるんだが!?」
「……お兄様、お姉様は一度言い出したら譲りません。お姉様が暴れる前に、証拠を揃えるしかありません」
「アンジェには騎士隊を率いてもらおうと思っていたのに……頼むから、本当に軽率な行動はとらないでくれよ!?」
なぜか付いてくる事になった第一王女様。正直なところ、剣姫と呼ばれるほどのアンジェが付いて来てくれるのは心強いが。
三人の顔には、王女様とか扱いづれぇ……と顔書いてあった。
「大丈夫。私は王女ではなく、ヨルヤの妻として力を貸すだけだから」
「……あのね? 王族はどこに行っても、どんな時でも王族なの。イネッサさんの真似をしたのだろうけど、それとは全然違うんだよ?」
「旦那様……? アンジェはいつも傍におりますです……///」
「聞いてないね!? というか兄の前でそういう顔をするのやめてもらっていいかな!?」
急に妻宣言をして寄り添い始めたアンジェ。とりあえず、後ろの三人から殺気が飛んできているので離れてほしい。
俺なんかよりずっと強い女性たちから放たれる殺気。もう少し考えてほしい、俺はただの御者だという事を。
お読みいただき、ありがとうございます




