【3-49】再び物語の主人公へ
第三章 本編最終話
イネッサと合流を果たした俺達は、早速イネッサに事情を説明して助力を乞うていた。
王都を出て行った、もしくは検問に引っかかって止められている可能性のある四つの国々に関して。
東西南北、四つの大門の出入り口に設置された世界警察の大検問。常時であれば王都ハイオールの役人が実施する検問ではあるが、有事の際などには世界警察の検問が敷かれることがあるという。
「その四つであれば、武装中立国ミュルガイムとモールカレラ共和国の一団が、この南門を潜っている」
「潜ったって事は、検問を突破した……?」
「突破とは穏やかでないな。様々な検分を行った結果、問題なしとして通行を許可している」
「通行を許可、か……」
国だろうが、王族だろうが、いかなる要人であろうが世界警察の前ではその身分に意味はない。
なんでお前の許可が必要なんだよ!? なんていう子供みたいな反発精神が芽生えてしまいそうなものだが、なまじ力があるためそんな精神は圧し折られる。
世界警察の国だというならまだしも、他国においてそのような物言いが出来るのは流石である。そんないかなる権力にも屈しない組織というのは、必要なのだろう。
もちろんそれは、全てにおいて平等である……という前提が必要だが。
「その四つの内のどれかが、本当にヨルヤの知人を攫ったというのであれば……執行者ランバドール、あなたにも見当がついているはずです」
「君は王都の審判者か? ヨルヤとはどのような関係だ?」
「友人……一先ずはそう言っておきましょう。そして俺は、彼の出身を知っています」
「……そうか。では審判者の君と私、ヨルヤの三人で話そう」
話に割って入ってきたコンラード。イネッサに敬語を使った事には驚いたが、目上の者に対する礼儀はあったようだ。
ヴェラとラリーザは何とも言えない表情で不満そうにしていたが、イネッサとコンラードの圧の前では黙るしかなかったようで、除け者にされても騒ぐ事はなかった。
コンラードとイネッサと共に人がいない方に少し外れると、周りを気にしながら静かにイネッサは語りだした。
「異世界人を狙った誘拐、そして名の上がった国々の事を考えると……十中八九、犯人はマーシャル王国であろう」
「マーシャル王国……」
「かの国は、異世界人の召喚に躍起になっている。その熱量に関しては、世界一と言ってもいいほどだ」
「それが誘拐とどう繋がる……あぁ、そういう事か」
数十、数百年に一度しか召喚できない異世界人。他の場所で召喚が成功する、それは向こう数百年に渡って召喚が出来なくなるという事。
いくら繰り返しても、どんなに頑張っても召喚不可。召喚可能になるまで、数百年の時を要すことになる。
今回、ファルエンド王国が異世界人の召喚に成功した。それはつまり、異世界人を欲していた国々や、今を生きる人間には叶わぬ夢となってしまった訳だ。
「手に入らなかったのであれば、奪えばいい。そのような過激な思想にならんとも限らんな」
「それほどの熱量があの国にはある。正確には、あの王家にはあると言った方が正しいか。証拠はなくとも、動機は十分だ」
どうやら話を聞くと、マーシャル王国が異世界人の召喚に力を入れている事は、世界警察の中では有名な話のようだ。
マーシャル王国の話が出た時に、カール達が特に反応を示さなかったのは知らなかったからなのか、下手に疑ってはいけないからだったのか。
「だが確固たる証拠がなければ、我々は動けない。いくら世界法律に抵触するとはいえ、証拠もなしに国を疑うのは容易ではない」
「ですが証拠はすぐに揃うでしょう。そのための大検問なのですから」
コンラードがそう言うと同時に、コンラードと共に王都を警邏していたポリス達が近づいてきた。
姿が見えなくなったと思っていたのだが、どうやらコンラードの指示で何かを行っていたようだ。
「コンラードさん! 北と東、西門に敷かれている検問隊から話を聞いてきました。こちらが通行した者達のリストの写しになります」
「ご苦労。確認させてもらう」
どうやらここに来る前に目星をつけていたコンラードは、他の検問場から情報を集めるために部下を走らせていたようだ。
「どうやら君は優秀なようだな。どうだろうか、今回の事が終わったら私の下で働かないか?」
「大変光栄なお申し出でありますが、辞退させていただきたい。俺は王都を離れるつもりはありません、姉が王都におりますので」
書類に目を通しながら、シスコン発言をするコンラード。執行者から直々にお誘いを受けているのに、姉を理由にハッキリ断るとは流石のシスコンっぷり。
コンラードは一通り書類に目を通し終えたようで、通過者のリストをイネッサに手渡した。そんなコンラードの表情は微妙に曇っているのだった。
「ど、どうだったんだ? コンラード」
「……東門からメイリールが、そして西門からマーシャル王国の一団が出て行ったそうだが……特に問題なく通過したようだ」
「北と東はどうでもいいだろう。問題は西門から出たマーシャル王国だが……確かに、ここには特に問題は記されていない」
「えっと、つまり……誘拐犯じゃないって事か? でも王城から出たのは、この四つだけって話だったんだけど……」
王城内でオウカ達が攫われた。そして今日、王城から外に出たのは四つの招待国だけ。
その四つの国が王都の外に出るには、世界警察の検問を通過する必要がある。
その四つの国は世界警察の検問を問題なく通過した。検問が適当だったり、何かを見落としてしまったということなのだろうか。
「……君、西門を管理している執行者は誰だ?」
「はっ! 西と北は兼任で、執行者ノノムラが管理しております!」
「ヂモフェイ・ノノムラ……これは、もしかすると想像以上の事が起こっているかもな」
「……なるほど、そういう事ですか」
何かに気が付いたような顔をするイネッサとコンラード。少し遅れて俺も、ヂモフェイの名前を思い出し繋げていく。
ヂモフェイは王都に駐屯する執行者で、異世界から齎された技術に熱を入れているという。よく考えれば、ノノムラとは日本の名字のようにも聞こえる。
異世界人及び異世界の技術に執心しているマーシャル王国とヂモフェイ。そして今回の異世界人の誘拐騒動、突破できるはずのない検問。
「直属の上官を疑いたくはないが……執行者の立場であれば、検問を通過させることは不可能ではないかと」
「西には私が行く。君は東門を管理している執行者、タルタロ・カーマベールにこの事を伝えてきてくれ」
「はっ! 承知しました」
「状況によっては、彼に四大門全ての管理を任せると……そのように伝えてほしい」
そう言うとイネッサは即座に行動を開始した。部下たちに今後の事について指示を出していく。
コンラードとその部下たちが離れたのを確認したイネッサは、俺とヴェラ達を連れて西門へと急いだ。
「ヨルヤ。仮にマーシャル王国に知人が連れていかれたのだとしたら、君はどうする?」
「どうするってそんなの……助けに行くに決まっているだろ!」
「異世界人は狙われている。敵の本拠地に、狙われている君が攻め入ると言うのか? 恐らくだが、ヂモフェイもいるだろう」
「だ、だとしても黙って待っていろってのかよ!?」
イネッサの言いたい事は分かるし、単純に警察に任せておけと言いたいのだろう。仮に元居た世界で同じような事が起こったのであれば、俺もそうしたはず。
だがここは異世界で、攫われたのは同胞だ。それにオウカが攫われたのは、俺と関わったせいで生誕祭に招待されたからだ。
「私としては、待っていて欲しい」
「…………」
物語の主人公を気取るつもりはない。でも、ただ黙って待っている訳にもいかない。
……って、いや。やっぱ物語の主人公だな、俺。
『ストーリー【囚われの異世界人】が発生しました』
【あらすじ:生誕祭中、何人かの異世界人が姿を消した。調査を進めると、とある王国が異世界人誘拐の容疑者として浮上する。ヨルヤは様々な者の力を借り、囚われた異世界人を救出しようと奔走するが……】
久しぶりのストーリーイベント、そして相変わらずの不穏なあらすじ。
今回はバドスストーリーの時のような商店同士の小さな戦争ではなく、国を相手にした大きな戦いになるだろう。
だけど何も怖くない。俺の前を走るのは世界警察の最高戦力で、後ろを付いて来てくれるのはトップレベルの力を持った冒険者に魔術師だ。
それに一応、両隣を頼もしい守護者が固めてくれている。というかいつの間にいたんだ、モモヒゲの奴。
「イネッサ。俺は行くぞ……!」
『【囚われの異世界人】を開始しますか?』
→【はい】
「そうか。ではヨルヤ、私から離れるでないぞ?」
「よく分からないけど、力を貸すわ。死なれちゃ困るし」
「ヨルヤくんって危なっかしいもんね~。隣で見てないと」
「ヨルヤの貞操はクロエが必ず守護してみせます」
「ククク……ワイの右手が血を求めて疼いておりますぞ」
何名かおかしな奴がいるが……まぁいい。これだけの猛者達に囲まれているのだ、何を恐れる必要があろうか。
待っていろよオウカ、ついでに攫われてしまった学生たちよ。
お前がいないと困るんだ、お前が必要なんだ。
絶対に取り戻す。そしてハッピーエンディングを迎えてやる。
お読みいただき、ありがとうございます
予想外に長くなってしまいましたが、第三章はここまでになります
閑話的なものを投稿し、四章に入っていく予定です
感想や評価なと頂けたら嬉しいです、よろしくお願いします




