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【3-47】知略の第二、武力の第一






 カール、そしてエリーとなんとか合流を果たした俺とアンジェは、女子生徒に聞いた話を二人にも伝えた。


 その内容は驚愕で、そんな事が生誕祭の裏で行われたなど未だに信じられない。


 しかしこの事件は身近で起こった事はないとはいえ、よくある事件というかよく聞く事件であった。



「誘拐!? ほ、本当なのかい!?」

「あぁ、目撃した奴がいた。目撃というか、簡単に言えば最初は目撃者が誘拐されそうになって、それをオウカが庇って代わりに……って感じらしい」


 俺とオウカの他に、生誕祭に招かれていた異世界人。オウカのクラスの男子生徒二人に女子生徒が二人の計四人。


 冒険者パーティーを四人で組み、冒険者登録をした日から歴代最速での中級ダンジョン踏破の実績を認められ、生誕祭に招かれたらしい。


「立食パーティー中、トイレに立った一人の女子生徒がいつまでも戻って来なくて、迷ったんじゃないかと三人で探し歩き始めたらしい」

「なにか、聞いたような話だね」


「最初は三人固まって探していたらしいんだけど、見当たらないし手分けして探す事になったって」


 女子の一人は入れ違いになる事を防ぐためにパーティー会場に戻り、男子はそれぞれ手分けして行方不明者を探す事になった。


 しかし探しに行った男の二人も中々戻って来ない。痺れを切らした女が再び探しに王城内を回り始めた時、人気がない場所であるものを見たらしい。


「気絶させられた二人の男子生徒が、馬車に積み込まれる瞬間を見たそうだ」

「馬車置き場……確かにそこは警備が手薄だ。基本的に来城者は宿泊をする、あの時間に馬車に用事などないはずだから」


「そんで、見つかってしまった女子生徒は追手から逃げるため、再び王城内に戻ったと……そういえば、途中で何人かの騎士とすれ違ったと言っていたけど……」

「騒ぎになっていない事を考えると、恐らくその騎士たちは……」


 カールが考えたように、誘拐犯の姿を見た騎士たちは排除された可能性が高い。逃げる女の子を追う男の姿を見た騎士が、黙っているはずがない。


 きっと介入しようとしたはずだ。しかし騒ぎにはなっていないし、介入したであろう騎士の姿も見当たらないという事は、一緒に連れていかれたのか……あるいは。


「そして逃げる女子生徒はオウカと遭遇して……オウカが代わりに連れていかれたそうだ。まぁすぐに走って逃げたらしいから、連れていかれた所は見てないっぽいけど」

「それは完全に、異世界から来た者を狙い打っているね。彼らの狙いは最初から異世界人だったのか……?」


「だとしたら大問題です。いえ、誘拐ということ事態も問題なのですが、それは国法の範疇です。しかし異世界人の誘拐、拉致は世界法律で厳しく規制されていますから」


 カールの推察に、エリーが補足する。世界法律に違反した場合、各国および世界警察から厳しく糾弾、処罰される事になる。


 文字通り世界を巻き込んだ犯罪。もしそれに、個人ではなく国家が絡んでいるとなると、未曽有の大犯罪となる。


「とりあえず、入退城者を記録している者達に確認しに行きましょう。馬車に積み込まれる所は隠せても、城外に行く事は隠せません」

「そうだね。初日かつこの時間帯に城外に出る者の数は多くないはず、きっと足取りが掴める」


 エリーとカールに従い、入退城者を管理している者の場所へと足を運ぶ。


 王子と王女たちが急に現れた事で記録場は混乱するが、カールが的確な指示を出して行動を促していた。


 その結果、いくつかの来城者が城を後にしていた事が判明した。さらに別で指示を出していた、女子生徒がすれ違ったという騎士の捜索の答えも集まった。



「マーシャル王国に武装中立国ミュルガイム、エルフ族の一集落であるメイリールに、モールカレラ共和国か……」

「大体は予想通りですね。この辺りの国々は、例年長居をする事は少ないので」


「閉塞的な国家に中立国、エルフの集落に共和国……自分で言うのもなんだけど、僕に取り入る必要のない所ばかりだ」

「この方々は形式的な来国でしょう。来国したとの記録を残せれば、即座に帰国します」


 なんか難しそうな話をしているが……やっぱ色々と面倒なんだな。大国に呼ばれたら行かなきゃならない、行けばいいんでしょ行けば……でももう帰るね、みたいな?


 まぁともあれ、不思議な行動をした所はないという事か。帰る理由もないが、長居する理由もないので帰ったと。


「退城する馬車の検分は行ったのかい?」

「い、いえ、それは……形式的な事は行いましたが、何分来城者の身分的に強くは……」


「まぁ仕方がないか。じゃあ不審な馬車とか、何か気になった事はないかい?」

「…………」


 記録者たちは特に不審には思わなかったそうだ。来城する者たちは基本的に身分が高い者ばかり、下手に検査をし過ぎて角が立っても面倒だ。


 しかしそうなると、誘拐犯の馬車の特定には至らない。そもそも記録しているのは残っている者達の把握をするのが目的で、不法な事に対する記録ではないとのこと。


「殿下。警備をしていた騎士たちの把握が完了しました」

「うん、どうだった?」


「それが、四名ほど行方が分からなくなっている騎士がおります」

「……そうか。では城外の捜索を、王都周辺の街道沿いを中心に行ってくれ」


 カールの命令に承諾した騎士たちがゾロゾロと城から出て行った。王城内には騎士たちの姿は見当たらなかったそうなので、やはり一緒に連れていかれたのだろう。


 そうなると、王都を出てしまえば騎士たちは邪魔となるだけ。あまり考えたくない事だが、道中で投げ捨てられる可能性が高い。



「カ、カール? 次は……どうするんだ? 出て行った全部の国を回ったりするのか……?」

「それは得策じゃないね。下手な疑いは国家間に不信を齎すし、避けたい所だ」


 次にどうしたらいいのか分からなくなり、額に手をやり考え込むカールに尋ねた。エリーも同じように考え込んでおり、アンジェも考え込んでいる……振りをしている。


 俺の頭じゃ何も思い浮かばない。異世界に来たというのに思い通りに事は運ばず、自分の無力感に苛まれる。


 誰かに頼らなければ、仲間の一人も見つける事も出来ない。頭もないし力もない、どうしてこうも俺は無力なのだろうか。


「事は重大だ、国家のメンツなど言っている場合ではない。世界警察に助力を願おう」

「……お兄様。王家の人間が世界警察に助力を乞うなど、この国が許しません」


「……城下を警備している世界警察の検問は堅固だ。この祭典の最中は、身分など関係なしに城下を通り抜ける者達は全て検分される」

「それでも……なりません。あの組織に借りを作る事は、その権力を更に助長させてしまいます」


 以前イネッサが言っていたように、王家や国が世界警察に協力を申し出る事はタブーとされているようだ。


 城下町で人攫いが発生したのではなく、王城内での事件となれば全て王家の失態となる。いくら世界法律違反だったとしても、それを招いたのは王家の怠慢だと判断される。


 つまるところ、今回の事件で世界警察に協力を仰げば、王家は世界警察に借りを作る事になる。


 なんとか同等の立場を保っている中で一方に借りを作れば、そこから徐々にパワーバランスが崩れ始めてしまう。


「時間を掛けて調査をすれば、誘拐犯には辿り着くだろう。だが今回の件は時間が勝負、悠長なことは言っていられない」

「しかし、長きに渡り王家は世界警察の介入を認めていません。それをお兄様の代で……それは、王位継承にも響いてきます」


「しかし――――」

「だから――――」


 ヒートアップしていくカールとエリー。少し熱くなって冷静さを欠いている様子のカールに、それを鎮めるかのように冷静に諭していくエリー。


 俺はアンジェは完全に蚊帳の外。そもそも政に関して口を出せる知識などないので、ここは王家の判断に任せるしかないのだが。



「……アンジェは、何か意見とかないのか? 王家の……人間だろ? 一応」

「私達は住み分けているから。知略の第二王子に王女、武力の第一王子と王女って」


「そ、そうなのか……つまり?」

「私が思いつくのなんて、王家の人間以外が世界警察に協力を申し出るって事くらい。でもそれは、非常に難しい事だと思う。世界警察に伝手でもある者なら別だろうけど」


「……王家以外の人間で、世界警察に伝手のある者……」


 そうアンジェが言った時、俺の頭の中に一人の世界警察の人間の顔が浮かんだ。数日前にデートまでした、世界警察の執行者。


 イネッサだ。イネッサなら話を聞いてくれる、協力もしてくれるかもしれない。


 その事をカール達に話した。カール達は執行者と面識がある事にまず驚いたが、そういう事なら相談してみる価値はあると。


 俺には知略も武力もない。でも人脈ならあったようだ。思えばカール達だって、そういう事で力を貸してくれているのだ。


 ならそれを最大限に発揮する。それが俺の出来る事、無力などと言って俯いている暇はない。


 俺はイネッサを探しに城下へ。カール達は無関係だという事を強調するために、他の対応を行う事にして一先ず別れた。


 


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