【3-46】行方不明者を捜して
オウカを探してアンジェ達の部屋を訪れてみたものの、部屋にオウカの姿はなく姉妹仲良く話し込んでいる姿しかなかった。
二人にオウカの事を聞いてみるが分からず、いよいよ心配になってきた俺はオウカの事を探しに王城内を駆け回っていた。
「夜這いに来てくれたのかと思ったのに」
「王女へ夜這いになんて行くかい! 冗談抜きで処刑されるわ!」
「ヨルヤならいつでもウェルカムだから……だからです」
「敬語に慣れないならやめろよ……語尾にですって付ければいいって訳じゃないんだぞ」
一人では心もとなかったので、誰かについて来てほしいと言ったらアンジェとエリーが手を上げてくれたのだが、私が私がと譲らなかったのでジャンケンをしてもらった。
その結果、勝者はアンジェ。エリーには申し訳ないが、カールと一緒にオウカの事を探してもらう事にした。
しかしまぁ、どうやら人選を間違ったらしい。正確には、組み合わせを間違ったらしい。
「アンジェ、こっちには何があるんだ?」
「分からないですわ」
「なんで分かんないんだよ!? あなたのお城でしょ!?」
「そう言われても、あまり歩き回らないから……」
アンジェ、まったく城について詳しくない。もちろん俺も詳しくないので、この組み合わせは無知コンビとなりダメダメである。
まぁ確かに王女様が王城を歩き回っているイメージはないし、全てを把握しているとは俺も思っていないが、それにしても知らなすぎだ。
申し訳ないが、きっとエリーなら答えてくれただろう。こんな広い王城でガイドが役に立たないとなると、マジで迷ってしまう。
「静かだな……時間帯のせいなのか騎士の姿も見当たらないし」
「まるでこの城に二人しかいないみたい」
「それはない。二人どころか今この王城には何百人といるだろうよ」
生誕祭に参加した各国の要人たちが王城内にいるはずだ。こことは別の区画に厳重な警備の元、宿泊しているとカールが言っていたから。
そんな物々しい警備をしている区画にオウカが足を踏み入れるはずはないよな……待てよ?
「……なぁもしかして、オウカの奴どっかの国の奴に拉致られたんじゃ……? あの子可愛いから、目を付けた奴が強引にさ」
「可愛い……ヨルヤ、私は?」
「今はそれどころじゃ……って分かった分かった! そんな目で睨むな! アンジェもすげぇ可愛いよ!」
「///」
「いやそんな嬉しそうに照れている場合じゃないんだ! どうだ? その可能性があると思わないか?」
「それはない。あの子は私と同じだから、他には絶対に靡かない」
自信満々にそう言い切るアンジェ。俺が聞いたのはオウカが強引に連れていかれた可能性についてだったんだが、それもないらしい。
要人が宿泊する区画には騎士がかなりの数配置されているらしく、嫌がるオウカを強引に連れて行ったら目撃者がいるはずだと。
仮に気絶させられたのだとしても、宿泊区画に大人一人を運び込むのは至難の業か。
「……やべぇ、迷った」
「うん」
「いや、うんじゃないのよ? 案内してくれなきゃ困るんだけど……」
「じゃあこっち……いい匂いがする」
アンジェに導かれるまま道を進むが、俺にはいい匂いとやらを感じ取る事は出来なかった。
流石に匂いの元に近づいた時は仄かに俺も感じ取れたが、アンジェの奴どんな嗅覚してんだか。
いい匂いがするもの当然で、そこは王城の厨房だった。その厨房に近づくといい匂いの他に、ザワザワと人の話し声のようなものも聞こえてくる。
「どうしたものか……夜食の準備もあるし」
「誰か騎士を連れてこい! ここにいられても迷惑だ!」
少しだけ怒鳴り気味な声が厨房から聞こえ、何かがあったようだが俺達もそれどころではない。
申し訳ないが、オウカがいるかどうかだけ確認させてもらおうと厨房の中を覗いてみた。
「こ、これはアンジェリーナ様! このような場所にいらっしゃるとは、何かございましたでしょうか?」
「人を探している。女の人」
「女性を探して……もしかしてあちらの方でしょうか?」
なんと予想外の展開に。こんな所にいる訳がないと、なんだったら道だけ聞いてスルーしようと思っていた厨房でイベントが発生した。
迷子になったのか、お腹でも空いたのか、酔っぱらって動けなくなったのかは知らないが、やっと見つける事が出来そうだ。
「いつからいたのか分かりませんが、気が付いたら倉庫にいたのですよ」
「お腹が空いたんだ。あの子、よく喋るから」
「いえ、そのような感じではなく……」
どこか困ったような表情をしながら、料理人は俺達を倉庫へと案内してくれた。流石にアンジェの言ったように腹が空いたから……ではないと思うが、なぜこんな所に。
まぁ保護したら聞けばいい事。そう思って倉庫内に入り、奥の方で蹲っている者を見つけたのだが、それはどう見てもオウカではなかった。
「この子、オウカ? 急に小さくなった」
「いや全然違うじゃないか!? この子、確か……」
ちょっとアホなアンジェは置いておいて、そこにいたのは俺と同郷の者ではあるがオウカではなかった。
オウカが担任を務めるクラスの女子生徒の一人が、そこにはいた。
頭を抱え、何かに怯えているような表情と体の震えを見るに、通常の状態でない事は明らかである。
「君、どうしたの? こんな所で何を……?」
「あ、あたしは何も知らない……なにも見てない……! あ、あたしのせいじゃないの!」
「お、落ち着けよ、どうしたんだ?」
「オウちゃんが逃げろって言ったから……あたし……だから……!」
オウちゃんとは、オウカの愛称のはず。急にオウカの名前が出てきて驚いたが、この子はオウカの失踪について何か知っているようだ。
まともな会話が出来るような状態ではなかったので、まずは彼女を落ち着かせるように優しく語りかけた。
異世界に招かれ不思議な力を得た主人公だとは言っても、彼女たちはまだまだ子供だ。精神はまだまだ未熟、物語のようにはいかないさ。
がしかし、いくら俺が優しく語りかけても彼女は怖がるばかり。手で耳を塞ぎ聞く耳を持たず、イヤイヤと頭を振る様子はまさに子供であった。
「落ち着きなさい」
「――――っ」
「大丈夫、あなたに危害を加える者はここにはいない。いたとしたら、私が排除する」
「…………」
どうしようかと頭を悩ませていると、後ろで様子を見守っていたアンジェがキリッと透き通った声を出した。
無表情のまま女子生徒を見下ろすその様子は、威圧感しか与えないと思ったのだが……意外にも女子生徒は落ち着きを見せた。
「教えなさい。あなたに恐怖を齎しているものは何なのか、私に――――教えなさい」
「っは、はい……!」
優しく諭したのではない、圧倒的なカリスマ性を持って彼女の事を鎮めたアンジェリーナ。俺の前だと結構なポンコツだが、これが本来の姿なのだろうか?
第一王女、剣姫アンジェリーナ・リドル・ファルエンド。ちょっと変な子だなと思っていたのだが、この姿を見せられては流石としか言いようがない。
その後、落ち着きを取り戻した女子生徒から話を聞いた。その内容には驚きを隠せなかったが、アンジェのお陰で取り乱す事はなかった。
俺はアンジェは女子生徒を騎士に託した後、次の目的地に向かうべく厨房を後にした。
「ごめんなアンジェ、組み合わせを間違ったとか思って。お前と一緒で良かった」
「一緒で良かった……///」
「それで、どうやって行けないいんだ?」
「分からないですわ」
一つ言えることは、エリーにも付いて来てもらえば良かったという事だけだ。
お読みいただき、ありがとうございます




