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【3-38】個性があるからヒロインなんだ






 第二王子カールハインツの誕生祭まで、あと10日。その日の段取りなどの話し合いを終えたのだが、色々と不安が残る形となってしまった。


 アンジェとエリーが、当日のエスコートをしてくれる事になったのだが、そこからしてもう不安である。


 私が私がと言いあう二人に、じゃあ二人でお願い……なんて言ってしまったのだが大丈夫だろうか?


 勝手が分からない王族主催のパーティーで、エスコートしてくれる人がいるというのは心強いが……王女二人のエスコート、周りからどんな目で見られるだろう。



「まぁ、いつも通りだけどなんとかなるか……それより俺もプレゼントを探さないとな」


 王子様の誕生日なのだ、色々な高級品がプレゼントとして用意される事だろう。そんなのと張り合っても勝てる訳がないので、俺は一友人として簡単な物を送るつもりだが。


 酒が好きだという事しか知らねぇ。でも酒はエリーが渡す事になっているし、被せる訳にはいかないよな。


「一応聞いてみるけど、二人はどんなプレゼントがいいと思う?」


「穴を開けた避妊具など如何でしょう。既成事実さえ作ってしまえば、いかに王子とはいえ簡単には逃げられません」

「簡単に逃げられる身分だと思うが……というか、それは王子と既成事実を作りたい女性側が欲しい物じゃないか」


「下らん事を言いよる。男が欲するものと言えば一点もの、特別なもの。己に隠された、世界で自分だけが持つ特別な力などを欲しているかと」

「そんなものどうやってプレゼントするんだよ。俺はトラックに轢かれて死んだ奴を転生させる神様じゃないぞ」


 聞いた俺が馬鹿だったが、まともな答えが返ってくるはずがなかった。だがこいつらはふざけている訳ではなく、本気で言っている。


 個性が強すぎるというのは面白いが疲れる。次の守護者は絶対に普通の子を作ると心に強く誓った。


「まぁとりあえず、金を稼いでおくか……いくぞ二人とも」


「はい」

「承知」


 守護者を連れて、護衛馬車を求めている奴を探しに行く。とりあえずは冒険ギルドと、傭兵ギルドに向かうつもりだ。


 使いたい奴がいなければ、路線馬車を走らせてみるか。この国の中で運行する事は許可された訳だし、何より町中を走るのは安全だし楽である。


 危険だが実入りが見込める護衛馬車、安全だが実入りは見込めない路線馬車。それらのノウハウを生かして、最終目標が観光馬車だ。


 街間を移動する定期馬車も、地盤が整ったら行っていきたい。その際は荷運びとかで副収入を得るのもありだろう。


 まぁ色々と問題はある。とりあえず、俺一人じゃ無理だ。ただバスを走らせておけばよかった前職とは訳が違うのだから。


 運行管理してくれる人材は必要である。それと一番の問題は、アーケディアの世話。


 前途多難ではあるが、どこかウキウキした気持ちで俺は各ギルドを回った。




 ――――




「ご利用ありがとうございました~」


 冒険ギルドで客を見つけ、往復運行を終えてギルドに戻ってきた。目的地は初心者ダンジョンであるルベールの洞穴だったので、実に簡単な仕事だった。


 明らかに初心者であろう三組の冒険パーティーを乗せた馬車は、なんの問題もなくダンジョンへと運び、無事に王都まで戻らせた。


 アーケディアを連れての初運行だった事もあって緊張したが、特に何も言ってこなかったので良かった。


 車両二台に三組を押し込んだが、まぁ近場だという事もあって何とかなったな。これ以上の人数を運ぶには、車両を拡張して座席を追加しなければならない。


 成長馬車素材を稼ぐ時間も必要だ。今は金をそこまで欲していないので、こちらを優先した方がいいかもしれない。



「ヨルヤ!」


 冒険ギルドで受け付けの人と次の依頼について話していると、背後から声を掛けられた。


 振り返るとそこにいたのはヴェラとラリーザ。二人とも、随分とお洒落な格好をしているが、どこかに行ってきたのだろうか?


「ヴェラにラリーザ、随分とお洒落な格好だな」


「ちょっとデートしていたのよ。ね、ラリーザ」

「うん。色々と見たり、食べたりね~」


 どうやらあのダンジョン攻略の日から、二人の間に付き合いが生まれたっぽい。少し歳がはなれているせいもあるのか、お転婆な妹としっかり者の姉という感じだ。


 随分と声を掛けられたようで、少し疲れ気味な様子の二人。そりゃこの二人が並んで歩いていたら、声も掛けられるだろう。


 そんな二人が冒険ギルドに来たのは、ラリーザが冒険者登録しに来たというのだから驚きだ。



「再登録だけどね」

「魔術ギルドはやめるのか? 残念がる奴も多そうだけど」


「魔術ギルドはやめないよ? ギルド登録に制限はないから、複数のギルドに登録している人なんてザラにいるし」

「まぁ冒険者と傭兵は完全に分かれてるけどね。ダメではないけど、この二つに登録している奴はまずいないわ」


 例えば魔法使いなどは、冒険ギルドと魔術ギルドの二つに登録している人が多い。しかし冒険者と傭兵は水と油、両方のギルドに登録は可能だが、登録している奴は皆無とか。


 傭兵をしながら商業ギルドに登録し、素材を売る奴も多くいる。あくまで冒険者と傭兵が特別らしいが、なぜそんなに仲が悪いのか。


「まぁ私は加盟員じゃなくて、ギルド職員だから。副業って感じになるのかなぁ?」

「なるほど。まぁ元々冒険者だったんだから、ノウハウはあるんだろ?」


「この子、凄いわよ? 動きが冒険者だわ。だから、ラリーザならいいかなって」

「私たち、パーティーを組むことにしたの」


 ずっとソロでやって来たヴェラが、ついにパートナーを見つけたようだ。ソロだった理由の大きな所が、報酬の分配が嫌だからという事だったはずだが。


 しかしこの二人がパーティーとは、ビッグカップルの誕生である。人気なパーティーとなり、依頼が殺到するのではないだろうか?



「そういう事だから、ヨルヤのあれ、私達でやるから」

「あれって……馬車の護衛の事か?」


「そうそう。魔物を見せる馬車だっけ? あれの護衛、二人でやるから報酬も倍ね」

「倍……」


 ヴェラ・ルーシーは、ダンジョン踏破の実績が認められ金等級へと至っている。金等級の護衛を雇うといったら大金が必要だ。


 それを倍? いくら二人の見た目がよく、金等級の護衛付きという宣伝が打てるとしても、赤字になったら意味がない。


 そもそも護衛能力は当初の予想を超え、守護者という存在が出来上がっている。いくらでもキャラクリできる守護者、見た目だけならアンジェレベルの容姿を作成する事も可能だ。


 ……この二人に頼む必要性、あるか? いやいや、俺がお願いした事だし、裏切りはダメだろう。


「まぁ、護衛料は応相談という事で……」

「私達、安い女じゃないからねぇ?」

「そうね、それなりには貰わないとね!」


「……とりあえず! 今はまだ準備段階だから! 目途が立ったら連絡するし!」

「濁したわね」

「濁したねぇ」


 守銭奴が二人に……まともなヒロインだったはずのラリーザが、ヴェラに毒されてしまったというのか。


 どっかの姉妹も色々な意味で強烈だし、どっかの最高戦力は最高に危険だし、なぜ普通のヒロインが現れてくれないのか。


 どっかにいないかね、まともなヒロイン。なんて事を思ったもんだから、あんな出会いが訪れたのだろうか。


お読み頂き、ありがとうございます

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