表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

105/126

【3-37】ヒロインバトル・その二






「ア、アンジェ、まずは自己紹介をした方がいいんじゃないかな?」

「兄さん、いたの?」


「ずっといたよ!? ここは僕の部屋なんだからね!?」

「……兄さんとヨルヤ、どういう関係? まさか……」


「まさかってなんだい!? なんで睨むんだ!? 友人だよ、友人!」

「ヨルヤ、本当……ですか?」


 一瞬、部屋の温度が下がったように感じられた。顔を引きつらせているカールの様子を見るに、アンジェリーナにきつく睨まれたようだが。


 この場から逃げようにも、なぜかアンジェリーナに手を握られているため逃げられない。柔らかい手だ……なんて思える余裕はない。


「ほ、本当ですよ、それ以外に何があるんですか。変な事言わないで下さいよ、アンジェリーナ様」

「敬語はいらない……いりません。あとアンジェ……です」


「そう言われても……そちらこそ敬語は不要ですよ。俺、ただの御者なんで」

「丁寧な話し方をする女性を、男性は好きだと聞いたの……聞きましたの」


 この人、絶対に敬語を使い慣れていない。というか、なんとなくだが話す事にも慣れていないような感じがする。


 人見知りなのだろうか? いやでも、カールと話していた時は普通だったような気がするし、人見知りな人がいきない手を握ってきたりはしないだろう。


 ともあれ王女様をあだ名で呼んで、タメ口で話す訳にはいかない。エリーのあれは命令で仕方がなかったんだ。


 俺はカールに助けを求めるように視線を送るが、この野郎……目を逸らしやがった。


 さてどうしようかと考えていると、カールの部屋の扉がノックされ聞いた事のある声色が聞こえてきた。



「お兄様、お姉様がお帰りになったと……あぁお姉様、こちらにいらしたのです……かっ!? な、なにをしているのですかお姉様!?」

「エリー、ただいま」


「お、お帰りなさいませ……ってそうではなく! なぜヨルヤ様の手を握られているのですか!?」

「なぜって……ヨルヤは私の物だから?」


「私の物って……ふ、ふざけないで下さい! ヨルヤ様は物ではありません!」

「なにエリー。まさか、私の大切な人を奪おうというの?」


「た、大切な人って……どうしていきなりそんな事に!? わ、私だって……私だってヨルヤ様の事が……!」

「いくらエリー、大切な妹の貴女でも……だめ」


 ついさっきまで会って話していた、エリーが再び登場した。部屋に入って来るや否や、普段のエリーとは思えないほどの声量で声を荒げる。


 どうやら俺とアンジェリーナが手を繋いでいるのが気にくわない様子だが、嫉妬してくれているのだろうか?


 いやしかし、よろしくない雰囲気だ。カールは完全に無視を決め込んでいるし、俺が原因なのだから何とかしたいところだが。



『クエストを開始します』


【サブクエスト――――初めての姉妹喧嘩】

【クリアー条件――――姉妹の喧嘩を治める】

【クリアー時間――――即時】

【クリアー報酬――――10好感度ポイント】



 初めての喧嘩なの!? もしかしなくても俺のせい!? 普段はきっと仲が良い姉妹なのだろう、それが俺のせいで壊れようとしている!?


 俺の事で争わないでくれ! なんて言える日が来ようとは……なんて言っている場合じゃないな、俺のせいで姉妹の仲が悪くなる事は避けたい。


「エリー、落ち着いてくれ……アンジェリーナ様も、手を放してください」


「ずるい……なんでエリーだけ……」

「そうですよアンジェリーナ様ぁ? さっさとお手をお放しになって下さいませ」


「エリー。あなた、いつから……?」

「いつからでしょう? 随分と前から私とヨルヤ様はこんな感じでしたが」


「……ずるい」

「ずるいと言われましても、こればかりは……ふふふっ」


 微妙に勝ち誇った表情で嘘を吐くエリー。あだ名も敬語なしも、ついさっきから実行している事であって随分と前からではない。


 それを見たアンジェリーナは僅かに目を潤ませながら、俺を非難するかのように睨みつけてきた。


「ヨルヤ、エリーばかり贔屓しないで。私の事もアンジェって呼んで……下さい。あと敬語もいやだ……ですわ」

「そう言われても……エリーの事は命令で仕方なく……」


「命令……! じゃあ命令、私の事はアンジェと呼んで。あと敬語もなしです。違えれば……斬るます」

「斬る!? それは困りまっ困る! 分かったから! 言う通りにするから!」


 ヤンデレ剣姫に斬られるとか、間違いなく死ぬ。背中から一突きなのか、首を切り落とされるのか知らないが、その力と権力が彼女にはある。


 もういい、面倒くさい。不敬だなんだと考えるのがもう面倒くさい。彼女たちが望んでいることで、一応カールという証人もいるのだから大丈夫だろう。


 吹っ切れた俺はもう無敵。最悪の状態になっても俺は御者だ、この国から逃亡して遠い地でやり直せばいい。


「アンジェ! これでいいな!?」

「……///」


「ヨルヤ様……お姉様ばかりずるいです」

「お前らってやっぱり姉妹だな! エリー! 名前なんていくらでも呼び捨ててやらァ!」


 少しだけ頬を赤くするアンジェに、嬉しそうに微笑むエリー。揃いも揃ってクソ可愛い。


 急なモテ期に困惑したが、ゲーム化ギフトのアシストがあれば上手くやれる。たとえヒロインが王女という身分であろうが、ギフトに選ばれたのだから攻略は可能なはず。


「エリー、あまりヨルヤを困らせたらだめ」

「困らせているのはお姉様でしょう? 命令までして」


 そんな彼女達の喧嘩気味な様子は治まりを見せない。二人とも平等になったとは思うのだが、それだけではダメなのか。


 どうしようと考えていた時、すっかり蚊帳の外に置かれていたカールが話しかけてきた。


 しかしそれは、なんとも迷惑な問い掛けであった。



「ヨルヤってモテるんだね……二人のこんな姿を見るのは初めてだよ。ところで、どちらがヨルヤの好みなんだい?」

「「…………」」


「お前、余計な事を聞くなよ……」

「妹の事だからね、重要だろう? もしかしたらヨルヤは、僕の義弟になるのかもしれないのだから」


 カールがそう言った時、二人の間の空気が緊張したのが分かった。無表情でエリーを睨みつけるアンジェと、それを不敵な笑みを持って迎え撃つエリー。


 姉VS妹。どちらにも引く様子はなく、自分が選ばれると信じて疑っていない。


「きっとヨルヤは私の方が好き。可愛いって、言ってくれた」

「……ヨルヤ様は私を選んで下さいます。私の事を何度も助けてくれました」


 現実ではまずあり得ない、なんとも恋愛ゲームのような展開になってしまった。姉と妹、どちらかを選べと迫られる日が来ようとは。


 なんて冷静でいられるのは、目の前に提示された選択肢のお陰である。これを見るだけで、どこか他人事のように感じられるのだから不思議だ。


 これは恋愛ゲーム。それならば目指すはハーレムルート。それが許される世界であるのならば選択してみたい。選択できる、それを今から証明してやる。



【ルートA・アンジェリーナ】

【ルートB・エカテリーナ】

【ルートC・シスターズ】

【ルートD・カールハインツ】


【注意:選択ルートによってはヒロイン登録が消失する可能性があります】



「どちらかといえば……仲良くしている二人が好きかな?」

「「……!!」」


 迷うことなくルートCを選択。どちらかを選べば、どちらかを失っていたという恐ろしいルート選択をゲス回避。カールハインツルートは論外である。


 男本位のゲスな選択だが、この世界はそのルートを選択することが認められている。逆ハーレムだって存在する世界なのだから、俺だけ後ろ指を指される事はないだろう。


 問題は、相手が国民の人気が高いであろう王女様達だという事だが……まぁ、なんとかなるでしょう。


「……エリー、仲直り。ごめんね」

「そう……ですね。ごめんなさいお姉様、意地が悪い事を言いました」


「うん。じゃあヨルヤは二人の物にしよう」

「えっと……物扱いはあれですが、そうしましょう!」



『クエストクリアーを確認しました』


【サブクエスト――――初めての姉妹喧嘩】

【クリアー報酬――――10好感度ポイント】



 ……これで本当に良かったのだろうか? ゲームでは在り来たりなルートではあるが、現実に置き換えると最も難しく危険なルートであろう。


 ゲーム化ギフトのアシストに期待するしかない。バッドエンドにならないように、上手く彼女達との関係性を保たないといけない。


「僕のルートに進んだ方が平和だったと思うけどねぇ~」

「友情ルート? それってバッドエンドだろ」


「実は僕……女の子なんだ」

「嘘つけ! お前のアソコにぶら下がってる立派なモノ、この世界に来た初日に見たわ!」


お読みいただき、ありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ