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【3-36】初ヒロインと新ヒロインは姉妹

エカテリーナ

挿絵(By みてみん)






『クエストクリアーを確認しました』


【サブクエスト————第二王女からの依頼・その2】

【クリアー報酬————50HEp・20好感度ポイント】



 モルガン大密林から王都へと戻り、すぐさまソフロンから貰ったエルフ酒をエカテリーナに納品した。


 ただのお使いサブクエストだったはずがとんでもない事になってしまったけど、なってしまったものはどうしようもない。


 基本的にクエストを受けるのも行うのも自由だし、行動だって制限などなく自由なのだから、結果がこうなったのは全て自分の責任である。


 例えば今回のクエストにヴェラやイネッサを同行させていたら、結果は変わっていたかもしれない。でも俺はそれを選択せず、自分一人で行く事を選んだのだ。


 他にも色々な選択肢があったはず。ゲーム化されているとはいっても強制されている訳ではないため、自ら手繰り寄せた結果であるのだ。


 まぁ成長馬車なんてものがなければ厄災に住み着かれる事もなかっただろうが……だが逆に成長馬車がなければ、俺は死んでいた可能性が高い。



「あの、ゴノウエ様? 大丈夫でしょうか?」

「あ、はい。すみません、大丈夫です」


「ゴノウエ様は私と話しているとき、いつも考え事をしている気がします。私とのお話は……退屈なのでしょうか?」

「い、いえいえ! そんな事はありません! ちょっと色々とあったもので……」


 エカテリーナを前に色々と考え事をしていたら、それを指摘されてしまった。


 エルフ酒を渡した時の嬉しそうな顔は引っ込み、今はムスッとした表情で俺の事を軽く睨みつけている。


 最近、エカテリーナは色々な表情を見せてくれるようになった気がする。それこそ最初は、精巧なお人形さんみたいな印象を受けたものだが。


 そんな少しは気を許してくれたのであろうエカテリーナと、エルフ酒入手に至った経緯などの話を、脚色ありの盛大誇張で面白おかしく話していく。


「世界警察の執行者様……ですか。凄い方とお知り合いなのですね」

「まぁ色々とありまして」


「女性のような男性というその傭兵様に、会ってお話してみたいです」

「それはお勧めしません」


「ブルリンですか……可愛らしいお名前ですね」

「見た目はキモいですよ」


「最後はよく分かりませんでしたが、その自堕落な妖精さんにも会ってみたいです」

「は……はは……機会があればね」


 楽しそうに俺の話を聞くエカテリーナを見ていると、嫌な事など忘れそうになる。彼女には癒しの才能があるな、厄災の事など忘れてしまいそうだ。


 まぁ忘れたら大変な事になるので、気を付けなければいけないのだが。そういえば俺、王城に厄災を持ち込んでいるんだな……バレたら国家転覆罪か?


 クロエたちは王城付近で待機させているので、不測の事態には即座に対応できない。あまり長居はしない方がよさそうだ。



「あの、ゴノウエ様? その……ヨルヤ様とお呼びしても、よろしいでしょうか?」

「え……あぁはい、構いませんよ」


「で、ではヨルヤ様。私の事も、エリーと呼んでいただければ……///」

「エリー……ですか? それはちょっと恐れ多いような……王女様の事をそのようには……」


 エリーとはあだ名のようなものだろうけど、目上の者というか身分が違う者の事をあだ名で呼ぶのは憚られる。


 王族だし、国の象徴のような人をあだ名で呼ぶのはなぁ。不用意な混乱を招く事は避けたいのだが……またエカテリーナがムスッとしてしまった。


「じゃあ王女様から命令します。エリーと呼んで下さ……呼びなさい」

「め、命令ですか……本当にいいんですか? では、エリー様」


「様はいりません。あと、敬語も不要です。ヨルヤ様は年上なのですから」

「いやいや、歳は関係ないですよ! 敬うべき人に敬語を使うのは当然です」


「じゃあ命令……公式の場以外では、様付けなし、敬語なし」

「…………」


 どうしたんだこの子? こんなに押しが強い子だっただろうか? 恐らく使い慣れていないのであろう、命令という言葉を使ってまで強制してくるとは。


 実は意外にも我が強いのかもしれない。色々と抑圧されている分、一度言い出したら止まらなくなるのかもな。


 ともあれ命令、というかエリーがそれほど望むというのであれば、出来る限りは答えてあげたいところだ。


 なんといっても、俺の最初のヒロイン様だからな。


「あとで不敬罪とか言って罰せないでくれよな、エリー」

「……! はい、そのような事は致しません! しかし私に敬語を使ったら、不敬罪です!」


「敬語を使って不敬罪ってなんだよ……」


 その後、いつもより笑顔が可愛らしく見えるエリーと、カールの誕生祭について話し合った。


 もちろん俺も友人として参加するつもりだ。酒好き王子の誕生祭、色々な酒が揃えられるに違いない。


 カールの誕生祭についての段取りを確認後、俺はエカテリーナと別れた。とりあえず王城を出て、今日の仕事を探しに行こうと思う。


 仕事がなかったら今日は成長馬車の素材集めだな。あとせっかく王城に来たんだし、カールに挨拶をしてから行こうか。




 ――――




「――――アンジェリーナさん、めっちゃ可愛くね!? ビックリしたよ俺!」

「兄の私にそういう事を聞かないで欲しいな……」


 カールの私室にやって来ていた俺は、先ほど見た光景についてカールに熱弁を振るっていた。


 カールの部屋に向かう途中、大広間を通りかかった時の事だ。誰かが大勢の人たちに囲まれ、ちょっとした騒ぎになっている光景を見たのだ。


 どこぞのアイドル、芸能人なのかと俺も人だかりに近づいてみたのだが、その中心にいたのはもの凄い存在感を放つもの凄い美人だった。


 まるで神が自ら手を加えて作り上げたのかと思われるほどに、整った容姿をしていた女性。


 それがこの国の第一王女、アンジェリーナ・リドル・ファルエンドであるという事はすぐに気が付いた。


 外見だけを見れば、俺はあそこまで完璧に整った女性は初めて見た。目や鼻、口、大きさや配置など、全てにおいて一切の狂いがないような感覚に陥るほどの美人。


 それを単純に、明瞭かつ簡単に、シンプルで誰にも分かりやすく言うと。


「くぁいい」

「な、なんだって?」


「だから可愛い! いるんだなぁあんな美人、流石ファンタジー異世界」

「アンジェはどちらかというと、カッコいいというと思うけどね……」


 興奮冷めやらぬ。まさに国の象徴、国の宝、国の顔、あれこそ王女である。


 だが決してエリーが劣っているという事はない。エリーにはエリーの良さがあって、アンジェリーナ様にはアンジェリーナ様の良さがある。


 姉妹なので似ていたが、雰囲気は全く違うものだった。共通することは、二人とも美人で可愛すぎるという事だ。


 誰だよ、魔物討伐遠征に行く男勝りな王女とか言った奴。あんなにも凛々しく可愛らしいアンジェリーナ様、俺もうファンになっちゃったね。


「ん……ア、アンジェ!? 戻ってたのかい?」


 そんな事を考えていると、カールが驚いた表情と共に大きな声を出した。


 カールの目は俺の後ろを見ていたため、それに釣られた俺は特に何も考えずに後ろを振り向いた。


 そこにいたのは、まさかまさかのアンジェリーナ様。その表情は能面のように固く、とてもじゃないが友好的な印象は受けない。


 もしかして、可愛い可愛いと連呼していたのを聞かれた……? まずい、もしかしたらそれは、アンジェリーナ様にとって嫌な事だったのかもしれない。


 地雷を踏んでしまったか……そう思いビクビクしていたのだが、俺の近くまでやって来た彼女の口から出た言葉は意外なものだった。



「あの……私の事、どう思う? 思いますか……?」

「え、えっと……? どう思うとは……」


 私の事、どう思う? 固い表情のまま、そんな事を聞かれるものだから何を聞きたいのか一瞬分からなくなった。


 表情からは読み取れないので、なんて答えれば正解なのかが分からない。言葉に詰まっていると、アンジェリーナ様は更に近づいてきた。


 もう体が触れ合ってしまうほどに近い。その距離を保ったまま、アンジェリーナは僅かだが表情を緩ませ、首を傾げて俺の目をのぞき込んできた。


「うっわめっちゃ可愛い……」

「っ///」


「あっ……す、すみません。つい……」


 あまりの破壊力に、つい口からチープな言葉が飛び出してしまった。彼女から受けていた印象、それを考えればこの行動には意表を突かれたのだ。


 そんなアンジェリーナ様の行動に、兄であるカールも驚いている様子。やはり思った通り、このような仕草をするのは珍しいようだが。


「……好き」

「は……い?」


「……結婚しよ?」

「は……ぁ?」


 な、なんだ? いきなりどういう事だ? 好きとか結婚しようとか、いったい何の冗談だろうか?


 プリンセスギャグ……的な? いやそれにしては目が本気というか、滲み出る雰囲気が冗談っぽくないのだが。


 いやでも、なんだろう? なにやら不穏な気配……どうしてか分からないが、彼女の目を見ていると背中に冷や汗が流れる。


「名前、教えて……下さい」

「……ヨルヤ・ゴノウエです」


「ヨルヤ・ゴノウエ……ヨルヤ……ゴノウエ……ふふふっ」

「…………」


 目元と口元が緩み、僅かに笑みを見せてくれたアンジェリーナ様だが、やっぱりおかしい。


 この子、何かをぶつぶつと呟いているんだ。ハッキリとは聞こえないが、俺の目を見ながら何かを呟くそれは、いくら美人でも不気味に見えてしまう。


 違う意味でゾクッとする綺麗な目、雰囲気。俺は魅入られそうになるのを必死にこらえて自分に言い聞かせる。


 この女とは関わるな。関わると、なにか面倒な事になりそうな気が――――



『ヒロインリストにアンジェリーナ・リドル・ファルエンドが追加されました』


【名前————アンジェリーナ・リドル・ファルエンド】

【年齢————22歳】

【職業————ファルエンド王国第一王女】


【好感度————185】

【関係性————所有者と物】

【状態————病みデレ】

【一言————ヨルヤヨルヤヨルヤヨルヤ】



「ひっ………な、なんだこの数値!? どうなって……!?」

「ヨルヤ、私の事はアンジェって呼んで……欲しいです」


「ヒロイン削除……ヒロイン削除ボタンはどこだ!?」

「ヨルヤ、私の話を聞いてるの……ますか?」


 新しいヒロインは、まさかまさかのヤンデレヒロイン。なぜこんなに好感度が高いのか分からないが、この数値なら下手をすればマジで刺されかねない。


 剣姫と呼ばれるほどのアンジェリーナ様。そんな人に刺されたら、痛いどころでは済まないぞ。


アンジェリーナ

挿絵(By みてみん)

うん、同じ顔だ

お読み頂き、ありがとうございます

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