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【3-35】サブクエストで激変した環境






 厄災騒動の後、酒造り小屋に戻った俺とソフロンはグラーに破壊された小屋の簡易的な修復を行っていた。


 破壊というより燃やされたので新たに作り出すしかないのだが、意外にもソフロンにはその知識と技術があったので問題はなかった。


 GP回復材を使用して、二体の護衛を召還。小屋作りに貢献させる。ある程度進んだところで、夜が更け流石に疲れたので眠る事にした。


 そして次の日の朝早くから、ソフロンは俺の護衛と共に小屋づくりを再開。GPが全回復した俺は個室車両を手に入れるために、放置バトルを行う事にした。



「いまいちさ、お前らの強さが分からないんだが……」


「性欲は強いと自負しております」

「ククク……ワイの右目に宿りし邪神を解き放てば、最強ですぞ」


 再召喚して元通りとなった個性強めな守護者たち。痴女エルフに厨二侍だが、立て続けに送還されるという失態を犯してくれていた。


 まぁ厄災が異常なのは分かるし、俺がしっかりレベルアップせずギフトレベルも上げられていない事が原因であるのは理解している。


 厄災以外に対しては今のところ問題はない。今回の事は不運として片づける事にしよう。


「でもさ、初陣補正とかあってもよかったんじゃないのか? モモヒゲ」

「初陣補正とは、初登場時だけ異様に強いあの現象の事ですかな?」


「そうそう。お前初陣なのにボコボコだったじゃん」

「いやはや申し訳ございませぬ。やはり封印を解き放たなかったのが原因かと……いやしかし、スネークイーターを軽く捻った事はお忘れですか!?」


 きっと、恐らく、多分、いや絶対、何も封印なんてされていないだろう。性格に起因する物言いなのだろうが、怖いからモモヒゲの設定は見直していない。


 そしてクロエと同じように、こいつを削除して作り直す気はあまりない。ちょっと厨二的な発言をする、西洋風の顔で侍口調なイケメンだというだけだし。


「桃の介、言っておきますがヨルヤの夜の世話はクロエが行いますので、寝室には近づかないで下さい」

「何を言う女狐め。閣下と寝所を共にする? お主、閣下を食らうつもりではあるまいな?」


「別の意味で食らうつもりですが、それはヨルヤが望んでいることです」

「なんと不埒な……お主は同胞、閣下の命を狙ってはいないと理解しているが、それが閣下の願いでないのであれば斬り捨てる」


「ヨルヤの願いに決まっているでしょう。クロエはあなたと違って、全てがヨルヤの手によって創造された100%ヨルヤ好みの女です。ランダム創造の桃の介とは愛情度合いが違うのです」

「ランダム……愛情度……! 閣下! 性別によって差をつけるのは昨今、褒められた行為ではございませんぞ!?」


 仲良くはないようだが、仲が悪いという訳でもなさそうだ。クロエが自ら進んで他者に話しかけた所は初めて見たし、モモヒゲはちゃんとクロエが俺の命を護る者だと理解しているようだ。


 しかしモモヒゲの登場で、一気に騒がしくなりそうだな。あまりに煩いようなら、別々の召喚というのも考えなきゃなさそうだが。


 一先ずそんな二人を連れた俺は、大密林の中で放置バトルを行った。大密林の中でも上位とされているスネークイーターを軽く屠れるのだから、戦力は問題ないだろう。


 とりあえず、個室車両とベッドが取得できる成長馬車素材を稼がなくてはならない。





 ――――





「い、いかがでしょうか……?」

「…………」


 放置バトルを終え、個室車両を取得し、ベッドやラグマットなどの設置を行った。その他には防音性を上げ、静かな環境を整えてみた。


 個室車両の取得に素材をつぎ込んだため、今の所はこれが精一杯。もしこれにケチを付けられたら、エルフ酒クエストを失敗してでも素材稼ぎをしなきゃならない。


 個室車両に入り、ラグマットやベッドに寝転んで感触を確認しているアーケディア。その様子を固唾を飲んで見守った。


 暫くしてアーケディアの口から出た言葉に、俺はホッとさせられる。



「ぐっじょぶ、ヨル」

「ははぁっ! ありがとうございますっ!」


 サムズアップを頂けたので、どうやら個室車両の事はお気に召して頂けたようだ。


 第一関門はクリアー。しかしここから、少しアーケディアと交渉しなければならない。


「それでですね……この個室車両はアーケディア専用なんだけど、拡張とか備品を整えるには素材が必要で……」

「それで……? 時間、かかる?」


「まぁ少し……もちろん! 最優先で望みには応えるけど!」

「ん……ならいい」


「あとその……俺は御者なんだけど、この馬車を使って金を稼がないと生きていけなくて」

「ん……それで?」


「乗るお客さんによっては、少し騒がしくなる事も……あとほら、魔物の襲撃とか」


「ん、なるほど……その客や魔物を殺して静かにさせればいい?」

「いぃいやいやいや! その手は煩わせない! 俺が即座に排除するけど、煩かったらさ、殺す前に教えてくれないか……?」


 この前の傭兵のようなバカ騒ぎ、あれはダメだろう。防音が完全でない今は、馬車の中であんなバカ騒ぎをしたら個室まで響く可能性がある。


 そして煩いとキレたアーケディアが客を殺す……それが最悪のパターン。たまに乗客が死ぬ馬車、そんなのには誰も乗らん。


「分かった……教える」

「え……ほんとに?」


「殺すの面倒……ヨルに文句を言う、それが楽」

「そ、そうだよな! 面倒だもんな! 面倒な事は全部俺たちがやるから!」


「ウチが手を出すと、馬車壊れるし……それは困る」

「…………困るね、うん」


 人や魔物を殺すなんて訳ない。でも馬車まで壊れてしまうから、それは自分に都合が悪い。


 俺の言う事を聞いてくれたというより、自分にとって都合のいい事だけ了承してくれたような感じか。


 壊れても損傷修復で直る事は黙っていよう。それが知られてしまったら、俺に文句を言うより自分で排除した方が楽だと思われてしまう。



「それと、今日か明日にはこの密林から出るけど……ほんとに来るの? この密林の方が静かかも……」

「いく。ここがウチのお家……快適」


「そ、そっか……じゃあ、よろしくな、アーケディア」

「ん……ヨル、死なないでね」


 くそったれニートが、ここはお前の家じゃねぇし俺はお前の親じゃねぇよ。親に死なれたら困るってか? どんだけ脛を齧るつもりだ。


 しかし暴れたら手を付けられない。だけどそんな甘やかすつもりはないぞ? 微妙に思考が子供っぽいし、大人な俺が上手く思考誘導してやる。


「ヨル、お菓子たべたい」

「ソフロン!? ソフローン!? お菓子あるかなぁぁっ!? なにかウチの子にあげてくれるぅ!?」




 ――――




「じゃあソフロンさん、これからも宜しくお願いします」

「うん、こちらこそ。本当にありがたいよ、資金が増えれば新しい酒造りも始められるし、人も雇える」


「趣味じゃなく、稼ぐことが目的ですか?」

「趣味を継続するのにも金が掛かるからね。それに、自分が造った酒を大勢の人に飲んでもらいたいんだ。自分の趣味が誰かに喜ばれるなんて、最高だろう?」


 次の日の朝。俺は王都に戻るため、ソフロンに別れの挨拶を行っていた。


 ソフロンと酒の売買契約を交わし、定期的に俺の馬車に酒を卸してもらう事になった事がここに来た一番の収穫である。


 エルフの杜氏なんて珍しいどころかソフロンくらいしかいない。そんな信用も前例もない者から買う人はおらず、売買に関してはほぼ諦めていたそうだ。


 ここまで買い付けにくるのは大変だが、それを補えるほど旨い酒だ。遠くない未来、人気な酒になる事は間違いない。


「じゃあまた来ます。お体と……まぁ厄災にはお気を付けください」

「ははは……お互いにね」


「この護衛たちは消えるまで好きに使ってください。あと20時間くらいは持つはずです」

「ありがとう。じゃあまた、元気でね」


 全快したGPを使って護衛を二体召喚し、指揮権をソフロンに渡した。俺は従馬を三体召喚し、守護者と共に王都へと向かう。


 馬車はインベントリの中だ。今頃、アーケディアの奴は簡素なベッドでスヤスヤと眠っているのだろう。


 そしてゲオルグ達との待ち合わせだが、状況が変わってしまったので迎えに行かないことにした。行きの時のバカ騒ぎなんてされたらたまったもんじゃないからな。


 またまた本当に色々とあったが、とりあずエルフ酒……もといラフレシアクリスタル……なんとか酒を手に入れられた。


 これでエカテリーナの喜ぶ顔が見られるだろう。代償はかなり、かなり大きいがまぁ、よしとしようか。


 再びソフロンに別れの挨拶をした後、俺はモルガン大密林を後にした。


お読み頂き、ありがとうございます

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