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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第5章 藤原千方の四鬼編

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第76話 夏休み開始

 彩斗達が本格的な会談に入っていた頃。対して天神市に残っていた浬達は夏休みに入る直前だった。


「あー、というわけで、俺の本格的な担任仕事はこれが最後だが・・・まあ、教室に顔は出すわ」

「いや、普通に副担の仕事してくださいよ」

「あー。そうっちゃそうだな」


 御門は相変わらずやる気の無い様子で、生徒達の応対を行う。今日は終業式だ。これが終われば、夏休みである。


「まあ、言うことはただ一つ。俺に迷惑かけんなよ。言っとくが、夏休みだからってハメ外して警察のお世話になったらこっちにも連絡来るんだからな」

「はーい」


 御門のやる気のない注意に、生徒達も何処かやる気なく返事を返す。気分はすでに夏休みで、やる気なぞなかった。


「ということで、はい、全員解散。センセこっからも仕事あんだよ」


 主に裏の方で、と御門は内心で告げる。現在、大忙しで防衛体制を整えている所だ。今回は全ての一件を御門達だけで片付けるつもりだった。その為には、隠蔽の為の準備から応戦の為の準備、と山ほどやる事があったのである。


「よっっしゃー!」

「夏休み開始だー!」


 何時もなら終礼の挨拶は、というツッコミが入りそうな御門の終了宣言であるが、今日ばかりは生徒達からは総スルーで諸手を挙げて賛成される。

 と、そういうわけで昼までには1学期全ての行事が終了して、夏休みに入る。が、入ったからといって、部活も夏休みに入るわけがない。それは女子バスケットボール部も一緒だった。


「はい、お姉ちゃん」

「あ、ありがと」

「海瑠くーん! こっちにも飲み物頂戴ー!」

「あ、はーい! 今持ってきまーす!」


 昼ごはんを食べた後、浬と侑子、そして海瑠は何時も通り普通に部活に精を出していた。が、ここらは何も変わらない。変わった事があるとすると、風紀委員の活動は休みだという事でアテネがそそくさと帰ったぐらいだ。理由は勿論、鬼達の襲撃に備える為だ。フェルも同じである。まあ、彼女の場合は何時でも一足先に帰る事が多いのだが。


「海瑠ー! 今度の試合でこれ着る気無いかー!」

「あ、はい! って、着ません!」

「「「ちぇー」」」

「ちょっと! 先輩達もあからさまに残念がらないでくださいよ!」


 顧問の新垣と共に残念がる部活の3年生達に、海瑠が大声で不満を述べる。ちなみに、今何が起こっていたのか、と言うと、海瑠に対して顧問の新垣がチアリーディングの子が着る様な服を着せようとしていたのである。海瑠が中性的で一見すると女の子にも見えるから、という理由だった。


「似合うと思って借りてきたんだけどなー」

「貸してくれたんですか・・・」

「うん。ノリノリで。海瑠に着せたい、って言ったら一発で貸してくれた。サイズもピッタリ」


 海瑠の問いかけに、新垣が輝くような笑みを浮かべながらサムズ・アップで答える。実は海瑠の事はかなり有名だった。理由は簡単だ。新垣が言いふらすから、の一言に尽きる・・・かと思ったが、実は違う。

 前年まで4年間実は本当に女の子にしか見えない男の子二人――4年間なのは兄弟で一つ上だった為――が在籍しており、海瑠はその二人と幼馴染だったのだ。その所為か系統が一緒にされる事が多く、年の離れた弟か、と思われていた時期があったのである。なお、その彼らは現在、兄と一緒に異世界で騒動を巻き起こしていた。


「いいじゃん、一回ぐらい。新しい扉、開くかもじゃん」

「い・や・で・す! そんな扉開かなくていいです!」

「えー。皐月ちゃんノリノリだったのにー」

「あれは・・・皐月さんが可怪しいというかなんというか・・・」


 チアリーディングの衣服を持ちながらツンツン、と指を突っつき合わせる新垣に対して、海瑠がなんとも言えない表情で答える。

 恐ろしい事に、成長期に入っているはずの皐月なる人物は顔は勿論、背丈も体つきも女と見紛うばかりだった。しかも更に恐ろしいのは、そんな完璧に女の姿で、女の子の着る服を着るのである。誰がどう見ても女にしか見えなかった。しかも並の女の子ではない。とびっきりの美少女である。

 当人は一応男だと言い張っているが、トイレは女子トイレに入っている。男子トイレに入られると思春期の男子一同の精神が持たないぞ、というカイトからの提言だった。

 女子達も気にしない。女子生徒の半分ぐらいは、彼女は男ではなく本当は女だろう、と本気で思っているぐらいだ。なので更衣室も女子用を使う様に、と女子一同が引っ張っていったぐらいだ。兄が遠い目をして語っていた事を、海瑠は今でも忘れない。


「皐月ちゃんは性別皐月、だもんねー。睦月ちゃんは性別睦月で。で、海瑠は性別海瑠、と」

「・・・受け取りませんからね?」

「えー。じゃあ、一年、着る? すずっちとかどう?」


 新垣から水を向けられて、入りたての女子部員達が首を振る。去年一昨年と女子バスケットボール部の対外成績はよく、新入部員もそれなりに入ってきていた。なので一応新垣は名コーチではあるだろう。が、そんな名コーチの提言でも、新入部員達は首を縦に振る事はなかった。


「ちぇー・・・皐月ちゃーん、早くかむばーっく・・・先生寂しくて死んじゃう・・・」


 部員達からそっぽを向かれて、新垣はトボトボと体育館の外に歩いて行く。その背中は寂しげだったが、これは幾らなんでも女子バスケットボール部の役目でもそのマネージャーの仕事でも無いだろう。なお、件の皐月なる人物はノリノリで着てくれていた。


「やれやれ・・・」


 指示は確かな物があるんだけどもな、と海瑠は内心で思いながらも、唯一の悪癖と思える新垣の少し危ない性癖にため息を吐いた。そんな海瑠達を遠くのビルの上から眺める一人の女性と三人の少女の姿があった。


「・・・学校に結界は?」

「終わってるよ。流石に学校までは攻め込まないと思うけどね。千方だって外道とは言え陰陽師の端くれ。今の日本に喧嘩を売る馬鹿じゃ無いとは思うから、おおっぴらにテロとかは無いと思うけどね」

「こここ・・・それに、万が一の場合は妾もおる。気付かれる前にかたを付けようぞ。晴明の結界なぞ見たくもなかったが・・・味方であれば、心強い」

「私もだよ」


 玉藻の言葉に、晴明が同意する。かつての敵同士が手を組むのだ。これほど頼もしい事はなかった。が、問題はそれ以外だ。玉藻と晴明が守り切れると断言出来るのは、この中学校の中だけだ。流石に天神市全てを守りきる事なぞ、隠れて出来る事ではない。

 おまけに学校では全員一緒だが、それとて授業中だけだ。であれば、優先順位として、玉藻は浬達が最優先にならざるを得なかった。これは仕方がない事だ。どんな事にだって、優先順位はある。それが喩え人命であっても、だ。


「まあ、この布陣なら大丈夫でしょう。私はギリシアに一度戻りますが・・・後は頼みます」

「もともと貴様は戦力に入れていない。気にするな」


 アテネの言葉に、フェルがため息混じりにさっさと行って来い、と促す。アテネは残念ながら、夏休み序盤は欧州に戻る事になっていた。というのも、欧州には彼女を目の敵にしながらもカイトに懸想している神様が他に居たためだ。

 こんな状況で天神市に、それも浬達の側に滞在している事がバレると、タダでは済まない。今よりも厄介な地球全土を巻き込んだ大揉めに発展する。なので欧州に居る、と偽装しておこうという考えだった。


「さて・・・インドラ。貴様の方はどうだ?」

『ああ、一応、地元にゃ連絡入れた。アルジュナからこっぴどく怒られた』


 インドラが笑いながら、ヘッドセット越しにフェルの質問に答える。アルジュナとはインドラの息子にして、インド最大の英雄の一人だ。彼の活躍を記した『マハーバーラタ』という物語はラーマなる英雄の物語を記した『ラーマーヤナ』と双璧を成す物語とされていた程だった。

 ある種の聖典に近い扱いもされるほどだ。かつて煌士が興奮気味にインドラを褒めそやしたのも、むべなるかな、というところである。本来の彼はそれほどまでに偉大とされる神様なのであった。


「笑っている、という事はとりあえずはどうにかなっているらしいな」

『ああ。任せてくれ・・・いささか面倒な事になるがな』

「そうか。とりあえず当座を片付けられれば、それで良い」


 後のことは後で考える。とりあえず今はそう断ずる事にして、フェルはこの話題を終了する。


「では、天神市はインドラ。貴様に預ける。玉藻は学校と紫陽だ。私は雑事もある。楽園に戻る。あちらには奴の父も居るからな」

『ああ、わかっている。もともと裏の仕事の関係で俺はここからはあまり動けんからな』

「晴明。貴様は道中の護衛をしろ」

「帰り道はなんとかなる、と思うけどね」


 フェルからの指示に、晴明は現在移動中であるとされるとある人物達についてを思い馳せる。帰り道では、それらが浬達の側に居座る事になっていた。護衛は大丈夫だろう。なので晴明はそのままそこで大阪に戻るつもりだった。


「これで、とりあえずは大丈夫か。なら、私達も夏休みに入るか」

「夏休みなのかどうかわからんがのう・・・」

『俺は仕事だ』


 フェルの言葉に、各々少しため息混じりに各々の行動に入る。これからは戦いが何時起こっても不思議は無い状況だ。油断はできなかった。そうして、様々な形で夏休みが開始されたのだった。

 お読み頂きありがとうございました。

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