表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第4章 訓練の開始編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

56/634

第54話 訓練開始

 アテネの後ろに従って歩き始めた浬達だが、そうして向かう先は普通に豪邸の地下室への階段だった。そして更に地下室へと行くと、そこには2階の部屋にあった扉と似たような扉が幾つかある部屋に案内される。


「・・・変わった部屋ですね」

「どれですか?」

「その右手前の一つだ」


 空也のなんとも言えない感想を無視したアテネとフェルが、とりあえずその指定された扉を開く。そうして中を確認している間に、玉藻が説明を入れてくれた。


『ここは非常時に移動しあう場合に使う為の部屋じゃ。あれはギリシアに通じて、あちらは北欧のオーディン達の所に通じておる・・・が、まあ、滅多な事では使わん。縄張りを侵してしまうからのう』

「ほぅ・・・神様が非常時に戦力を融通しあう為の物、という所か?」

『そう考えて構わぬ・・・が、安易に開けるなよ? 門番は各地で置いておる。カイトやあのルルの様な者らなら使っても問題はないだろうが、お主らの様な単なる小童共では記憶を消されるのが関の山。最悪は普通に消されるぞ』


 誰も開こうとは思っていないが、一応、玉藻が誰も触れない様に言い含めておく。ちなみに、念のために言えば扉には魔術的な鍵がかかっている為、簡単に開くことは無い。が、万が一があるので、という事だった。


「そういえば・・・上にある意匠が、行き先を表しているのか?」

『おお、よう気付いたのう。然りよ。扉の上にあるマークが、行き先を示しておる。例えば雷であれば、ゼウス。槍ととんがり帽子はオーディン、長い棒と雲は斉天大聖・・・というようにのう』


 扉を観察していた煌士が目敏く気付いた事を受けて、何処か満足気に玉藻が告げる。数はかなり沢山だったが、その大半が一目で神様達には誰の意匠なのかわかるのだろう。と、そんな中に、煌士は一つ何もわからないマークを見つけた。


「ふむ・・・あの剣と丸は?」

『あれはアーサー王とお主らが呼ぶ者の意匠じゃな。カイトの親友の一人でのう・・・あれはよくここを通っておる。人である故に、神々の様に縄張りに縛られんで良いからのう』

「おぉ! あのアーサー王か! 我輩も騎士道物語はよく読み聞かせてもらった! それは何時か会える日が楽しみだ!」


 アーサー王の名を聞いて、煌士は斉天大聖の時と同じぐらいに興奮を滲ませる。やはりここらは誰もが知る英雄達だ。やはり感覚が違ったのであった。

 と、そうしてしばらくあれはどの神の意匠で、などと話し合っていた一同の所に、フェルとアテネが帰って来た。が、何処か言い合う様な感があった。


「まったく・・・もう少し広くしろ、とはな・・・」

「今はあの程度で良いでしょうが、後にはもう少し必要でしょう」

「はぁ・・・わかった。少し改変してやるから、少し待っていろ」


 アテネの言葉に、フェルが面倒くさそうに扉に手を当てて何かを行い始める。そうして、ものの一分ほどで、作業は終わった様だ。


「終わったぞ」

「ありがとうございます・・・では、入りますよ」

「え、あ・・・はぁ・・・何してたの?」

「空間が狭い、というから、もう少し大きくしていただけだ」


 浬から問いかけられて、フェルがため息混じりに答える。どうやら実力に見合った大きさを、としていた様だが、アテネは後々を考えて今の内から大きくしておけ、と少し口論になっていたらしい。で、結局はフェルが折れた、という所だろう。

 そうして、フェルの答えを聞いた浬は彼女に促されて扉をくぐってみると、その先には何と、大きな草原があった。それも蒼天に包まれた非常に広い草原だった。


「うわー! 何処ここ!」

「私の創り出した異空間だ。時間も少し歪めてある。学校や部活が終わってから訓練、というのでは時間が足りん。面倒なので正確な所は把握していないが、大体1.5倍程度には伸びているはずだ」

「・・・ねえ、宿題とかここでやらせてもらえないかな?」

「はぁ・・・貴様も兄と同じ事を言うな・・・」


 浬の出した言葉に、フェルが呆れ返る。どうやら浬の兄のカイトも同じ発言をしたことがあるらしい。なのでそんな彼女のつぶやきを聞いて、浬が少しだけ、照れた様に頬を引き攣らせた。


「あ、あはははは・・・」

「好きにしろ。宿題なぞに時間を使われるぐらいならば、ここでやった方がよほど効率的だ。肉体についてもここでは外の流れと同じ成長しかせん」

「よっしゃ!」


 フェルから出た許可に、浬がガッツポーズで歓喜を露わにする。学生にとって、宿題はある意味教師以上の最大の敵だ。それに使わないで済む時間が長くなれば長くなる程、遊べるのだ。有り難いことこの上なかった。と、そうしてそこで、浬はアテネから睨まれていた事に気付いた。


「あ・・・やっぱりダメ・・・?」

「? いえ、宿題については、別に。ただ、何時までも雑談をするな、と」

「え・・・?」


 意外や意外な発言に、浬だけでなく鳴海や侑子も思わずきょとん、となる。ちなみに、鳴海や侑子が思っていても言わなかった理由は、アテネが目の前に居たからだ。絶対に怒られると思っていたのである。と、そんな三人の顔を見て、アテネが逆に首を傾げた。


「・・・どうしたんですか?」

「いや、アテネさんって絶対に怒るよなー、って・・・」

「? 宿題は自分ですれば良いのですから、何処でしても良いでしょう? それにきちんと調べられる時間を多く取れる、という事なのですから、存分に活用しなさい」


 どうやらアテネにとって、宿題を時間の狂った空間でやろうとも問題は無いらしい。彼女の言うとおり、自分でやる事が重要なのだろう。時間を無駄にしない為にも、と逆に勧められた。


「さて・・・では、実際に訓練の開始です」

「うっ!?」


 雑談をそこそこに、アテネが指を鳴らす。それと同時に、全員がいきなり倒れこんだ。煌士が先ほど陥っていた現象が、全員の身に訪れたのである。


「え!? ちょ、まだ触ってない!」

「密かに触らない、等や起動しない事が無い様に、コントロールはこちらで得ています。まずはそのまま、身体を動かす事に慣れなさい」


 何もしていないのに動けなくなった事に大いに慌てふためいた浬達に対して、アテネが答える。どうやら隠れてスイッチを触っていない等の事が無い様に、という事と、万が一疲れ果てて触れなくなったりした場合を考えて、遠隔操作でオンオフを切り替えられる様にしておいたのだろう。

 そうして、浬達はとりあえず、魔力を使って身体を動かす特訓を開始する。が、どうやれば良いのか、というのが、その専門の訓練をしていない浬達にはわからなかった。


「ど、どうやればいいの・・・?」

「え・・・?」


 魔力を普通に出せていながら何故か動けない様子の浬達に、煌士達天道家で特訓をしていた面子が驚きを露わにする。


「逆に何故出来ないのだ?」

「だって、そんな事やったことない!」

「・・・え?」


 鳴海からの言葉に、一同の視線がフェルに注がれる。が、これは当然だった。なので、そう言うふうな表情でフェルが告げる。


「当たり前だろう。そもそもこいつらは戦う事はどうでも良かった。呪いの解呪さえできれば、それで良いのだからな。魔力は魔術を扱えさえすれば良いだけだ。身体の動きを補佐させる様な事はさせていない」

「ああ、そういう・・・でしたら、まずは浬達は魔力を全身に漲らせる事から、始めなさい。それが、まず第一歩です」

「・・・あー・・・言い難いのだが、そこから教えていない」

「は・・・?」


 フェルから出された一言に、流石にアテネも思わず目が点になる。歪にも程があった。そして案の定、そんな事は聞いたこともなかった浬が、目を瞬かせる。考えた事もなかったらしい。


「え・・・? もしかして・・・手から以外も出せたの?」

「・・・ええ、普通に・・・と言うか、海瑠が何を見ていたと思うのですか?」

「え・・・?」

「僕?」


 いきなり水を向けられた海瑠が、思わず首を傾げる。彼の目には、光が見えていた、というのだ。だが、その光が何なのか、とは考えた事もなかった。


「魔眼は魔力を見る為のいわばメガネの様な役割を果たしもします。海瑠が見ていたのは、全身から放出されている薄い魔力でしょう」

「え・・・? じゃあ、僕の魔眼って・・・その為だけの物?」

「それは無いでしょう。なにせ父の神獣の転移を見抜いた。それが普通の魔眼のはずが無い。と言うか、魔眼でそんなメガネの機能しか無い物は珍しいですので、まだ活性化していないだけ、でしょう」


 単なるメガネとしての役割しか無いのか、と少し残念そうにしていた海瑠に対して、アテネが苦笑気味に明言する。


「ただ単に今はあまりに強力すぎる故に魔眼が不活性状態でもその余波で魔力を捉えているだけでしょう」

「そこまで強い物なのですか?」

「ええ・・・そこら、あなた方天道は魔眼の把握をせずに使うとは、何と愚かしい・・・これは、貴方より当主・覇王に伝えておきなさい。魔眼の正体も把握せずに使おうとは、言語道断。もしこれが特級の魔眼であれば、安易に目覚めさせれば国が滅びますよ」

「ぐっ・・・いや、返す言葉もない・・・申し訳ありません・・・」


 アテネからのかなりの怒気を孕ませての苦言に、煌士が思わず顔を青ざめて謝罪する。ここらも、根本的には彼に責任がある。魔眼で彼女がここまでの叱責する程の物がある、とは思っていなかったようだ。

 海瑠が普通に折り合いを付ける事が出来る程度のものなのだ、と安易な考えだった、と彼も反省の色を滲ませる。

 と、神が人に対して強く叱責したのは良いのだが、少々、叱責が強すぎた。なので当の本人である海瑠まで、顔を青ざめていた。


「あの・・・僕の魔眼って、そこまで危険な物なんですか?」

「え・・・あ、い、いえ、そういうわけでは無いですよ? ただ単に、そういう物もあるのだ、と言うだけですので、気しないで良いでしょう」


 実はアテネも魔眼の正体については、把握していない。なのでこれは一応彼女の言うとおり、こういう物もあるのだから、気をつけろ、と注意する為の方便だったに過ぎない。とは言え、それが効き過ぎて海瑠まで怯えさせてしまったのを受けて、アテネが大慌てで安心させる。


「はぁ・・・相変わらず締まらない奴だ・・・」

『あれは何処か抜けておる・・・ドジっ子と言うかなんというか・・・』

「やれやれ・・・」


 そんなアテネに、フェルと玉藻が呆れた様にため息を滲ませる。そうして、訓練の開始はなんとも締まらない調子で、始まるのだった。




 そんな開始からしばらく。とりあえず動ける煌士達については自主練習で感覚を掴ませる事にして、アテネは浬達出来ない者の面倒を見る事にしていた。


「基本的に、魔力は常に身体全体から放出されています。ですので、手から放出している様に見えるのは、そこから放出している量を増やしている、と考えなさい。なので、全身から出すのも手のひらから出すのも、方法論や感覚論としては、そう大差はありません」

「はぁ・・・」


 アテネからの説明を受けて、四人は何処か気の抜けた返事を返す。言わんとする所は理解出来る。が、どうやれば良いのか、というのはいまいち掴めなかった。


「えっと・・・つまり、どうすれば良いんですか?」

「最初は手のひらから魔力を出すイメージで、それを段々と広げていきなさい」

「手のひらから・・・」


 とりあえず手を動かせない事にはどうしようもない、ということでジャージの機能をオフにされた一同は、まずはアテネの指針通りに手の平から魔力を出してみる。感覚はただ単に手のひらに集中するだけで良いのだ。そしてここまでは、浬達も手慣れた動作だった。


「・・・全員出せましたね。では、その感覚をゆっくりと、全身に広げていきなさい。そこまでできているのでしたら、それは簡単に出来るでしょう」

「これを、全身に、ねぇ・・・」


 手のひらから魔力を出すぐらいならば、今の彼女らにだって喋りながらの片手間でも出来た。というわけで鳴海がそう言うと、まずは右腕全部から出せる様に、とイメージを行う。すると、本当にアテネの言うとおり、鳴海の右腕全体を魔力の光が包み込んだ。


「・・・あ、出来た」

「でしょう?」

「うん」


 あまりにあっけなく成功した事に拍子抜けしながらも、鳴海が頷く。そうしてそれを見ていた浬達も、同じように意識を集中させてゆっくりと伸ばしていく。


「あ・・・ホントだ。結構簡単なんだ・・・」

「コロンブスの卵と一緒、って所か」

「ね」


 同じく簡単に右腕に纏わせる事が出来た浬と侑子が、二人で何故こんな簡単な事に気付かなかったのだろう、と苦笑しあう。そしてそれは同じく、海瑠も一緒だった。が、こっちは少しだけ、顔を顰めていた。


「どうしたのですか?」

「っ・・・ちょっと、目が痛いなって・・・」

「今までは無意識的に閉じていた魔眼の回路が少しだけ開いているのでしょう。貴方の場合、意識して少し目の方を抑える訓練もした方が良いでしょうね」

「してくれるんですか?」

「ええ。カイトの弟です。彼に縁ある神として、請け負いましょう」


 海瑠の言葉に、アテネがはっきりと請け負う。幸いというかなんというか、彼女は同じく魔眼持ちのメデューサという神と関係が深い。それも敵という意味で、だ。なので魔眼についてはかなり詳しく、それを扱う訓練も施せたのであった。


「とは言え、そのためにも、まずは満足に魔力を全身で扱えなければ意味がありません。なので、まずは全身にその感覚を覚えこませる事から、始めなさい」

「はい」


 アテネの言葉を聞いて、海瑠が再び真剣に訓練に入る。目は少し痛いが、少し使いすぎて疲れたかな、という程度だ。我慢出来ない程ではない。こうして、本格的な訓練がスタートするのだった。

 お読み頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

*活動報告はこちらから*

作者マイページ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ