表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第3章 騒動の開始編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/634

第48話 隠れ家

 登場人物紹介、上げてます。一応メインだけですが、今後もちまちまと暇を見付けては、更新するつもりです。

 謎の男の襲撃から、日曜日を挟んで、翌月曜日。もう諦めるしかない状況に追い込まれた浬達は、普通に学校に登校していた。


「はぁ・・・」

「あ、あはは・・・そ、それは厄介な・・・ま、まあ、頑張るしか、ないんじゃない?」


 浬から休日中の内容を聞かされて、鳴海が苦笑気味に慰めを掛ける。茨木童子や先の謎の男など、関わり合いになりたくないにも関わらず、彼らから逃げるわけにもいかないのだ。悩ましい所、だろう。


「わかってるから、ため息吐いてるんでしょ・・・」

「あはは・・・」


 浬の疲れた様子に、鳴海は苦笑する。だが、苦笑していられるのも、放課後まで、だった。彼女らとて訓練をしなければ遠からず死ぬのだ。なので定期的には一階の玉藻の部屋に顔を出す事にしていた。事件は、そこで起こった。


「えぇ!?」

「はぁ!?」


 二人の絶叫が、玉藻の部屋に響き渡る。そんな絶叫に、玉藻がうっとおしげにしっぽをはためかせた。


『うるさいのう・・・何を驚く必要がある』

「なんで私達まで!?」

『そりゃ、簡単な話じゃ。そも奴らの狙いは自らが囮となり積極的にお主らに関与する事で、バレない様に援護すること。お主らが関与せんと思う方がどうかしておろう』

「んなっ・・・」


 ふぁさふぁさと九本のしっぽをはためかせて、玉藻が呆れた様に告げる。それに、鳴海も侑子も絶句するしかない。

 さて、彼女らが何を告げられたのか、というと、ここまでの流れで分かるだろうが、彼女らもあの謎の男達の集団に狙われている、という事だ。

 あのバイトというかゼウスの試練に関わっていない以上自分達は標的外なのだろうな、と思っていたのだが、入って暫くして玉藻がまるで思い出したかの様に、彼女らも標的に入っている、ということを教えたのである。


『そも、狙われた方がお得じゃ』

「お、おと、お得?」


 こここ、と笑いながら告げられた言葉に、侑子が顔を顰める。何がお得なものか、と思うのは普通だろう。とは言え、少し考えれば、確かにお得だ、と思える事であった。


『ふーむ。では聞くがのう・・・お主らが敵であれば、むちゃくちゃ厄介な顔役の獲物、とされている奴らと、粗奴らのなんら関わりの無い獲物・・・どちらを狙う?』

「は? それって、私達、って事?」

『以外にあるまい。前者が浬達で、後者がお主らよ』


 この状況だ。言われるまでもなく理解した鳴海と侑子に、玉藻も同意する。そう言われて、少し考えれば、後は簡単に理解出来た。


「そ、そりゃまあ・・・何の関わりの無い奴の方が・・・ねぇ?」

「まあ、なあ・・・私だったら、そうするなぁ・・・」


 バスケとして考えれば、侑子は簡単に理解出来た。自分の勝てない有名プレーヤーが張り付いた仲間にパスを回すのと、誰も張り付いていない仲間。どちらにパスを回した方が楽か、と言われれば、当然、後者だった。

 敢えて守りのある前者に突っ込む必要は無い。それどころか、前者に突っ込むよりも後者の方を圧倒的に選ぶ。そうして、そんな例えで理解した侑子だが、その御蔭で、一つの事に気付いた。


「あ・・・ってことは・・・」

『ふむ。気付いた様じゃな。もし奴らのおせっかいがなければ、お主らの方を積極的に襲うじゃろう。しかもそちらは殺しに行くわけじゃ。どちらのほうがやりやすい?』

「うっ・・・」


 問われた鳴海が、顔を顰める。考えるまでもなく、来る事がわかっていてしかも厄介な事が確定しているが、それでも怪我もする可能性は低く、生命までは取られない前者だ。

 来るかどうかもわからないが、来れば為す術もなく死ぬ可能性が遥かに高い後者を選ぶ馬鹿は滅多に居ないだろう。


「うぅ・・・最悪・・・」

「おぉ! 揃っているな!」


 最悪の状況に更に輪をかけて最悪になった事を理解した鳴海が落ち込むと同時に、何時も通りのテンションの煌士と詩乃がやって来る。自分の所為で浬と海瑠達のために、今日からは彼も積極的にこちらに顔を出す事にしたのである。

 まあ、玉藻やインドラというネームバリューがあったので、それが無かったとしても、積極的に顔を出しただろうが。そうして、そんな彼らへと、先ほどの情報の伝達がなされる。


「ふぅむ・・・そういう事もあり得るのか・・・」

『というよりも、それが妥当であろうて』

「うむ。納得だ・・・で、だ。一つ問うておきたいのだが・・・インドラ殿は?」

『む? そういえば遅いのう・・・』


 問われて、玉藻もインドラが遅い事に気がついた。なお、フェルは相変わらず我関せずでソファに腰掛けて読書をしていた。


『まあ、あれも良い年の神だ。特段気にする必要もあるまい』

「ふーむ。まあ、それもそうか・・・では、本題に入りたいのだが・・・フェル殿? 一つ良いか?」

「ん? 私か?」


 今まで我関せずを貫いていたフェルだが、問われて、読んでいた本から顔を上げる。


「うむ。先日はうっかりしておったのだが・・・空也は別の学校。そこの所、どうすれば良いのか、と」

「ふむ・・・確かに、そこの所は考えていなかったか・・・」


 煌士の問いかけに、フェルがぱたん、と本を畳む。学校が一緒の浬達や煌士達は、問題が無い。だが、空也だけは、ここから遠く離れた天道財閥の系列が運営する学校の生徒だった。

 少々遠いので車移動をしているのだが、それでも毎日毎日こちらの学校に、というわけにはいかないだろう。怪しまれる。そうして、暫くの間、フェルが対処に悩む。


「まず問題は、移動か・・・ふむ・・・自動車は厄介だな・・・しかも運転手は異族の末裔か・・・ふむ・・・」


 詩乃が護衛である煌士もそうだが空也は、常に護衛が張り付いている様な状況だ。まあ、それも致し方がなくはあった。空也は数年前に一度、父の仕事は関係無いのだが、誘拐されたことがある。それを考えれば、若干警備が強固になるのは彼の父の事を考えれば、致し方がなくはあるだろう。


「ふむ・・・とりあえず、偽装工作が必要か・・・それに、何時もここに集合させるのも面倒ではあるし、休日は集まれん・・・ふむ・・・おい、カイト。居るな?」

『ん? 居るも何も目の前に居るだろうに』


 フェルの問いかけを受けて、青い小鳥の状況になったカイトが首を傾げる。相も変わらず彼は見た目と尊大な態度が合っていなかった。が、そんな事は気にせずに、フェルが問いかける。


「貴様のセーフハウスは幾つある? ああ、大きめの物だ」

『爺か菫さんに聞け。オレが事細かに管理はしてねぇよ』

「ちっ・・・」


 カイトからの返答に、フェルがスマホを取り出す。そうして電話をするのは当然、蘇芳翁の所、だ。


「ああ、私だ・・・都内に保有するセーフハウスを教えてくれ」

『ふむ。天神市、だけですかな?』

「ああ」


 フェルの言葉を受けて、少しだけ保留モードに切り替わる。どうやら調べてくれているようだ。


『サーバーの中の今から言う番号にアクセスを。その番号の先で、保有するリストを閲覧出来ます』

「わかった」


 蘇芳翁から読み上げられた番号を、フェルが頭の中に叩き込む。普通は彼女の自宅にあるパソコンからアクセスすれば一発でアクセス出来るのだが、残念ながら今の彼女の使う物はスマホだった。

 きちんとした手段を取らなければならなかったのである。そうして、読み上げられた番号を使って、フェルがキズナ・サーバーの中の専用のアドレスにアクセスする。


「ふむ・・・これは却下だな・・・これも却下・・・ああ、これで良い。ここを使う事にしよう」


 何をやっているのか全くわからず勝手に決めていくフェルに一同が首を傾げている間に、フェルがさっさと何かを決める。


「良し。では、少し待て・・・」


 何かを決めたらしいフェルが立ち上がると、人差し指と中指の日本の指で、中空をなぞる。すると、いきなり奇妙な扉が現れた。


「まあ、こんな所だろう」

「? ねえ、フェルちゃん。結局何をやってたの?」

「学校が無い時に何かがあった場合、貴様らがここに集まるわけにはいくまい。別に一室用意しただけだ。それに空也とやらがここに来るわけにもいかないだろうからな」


 浬の問いかけに答えつつ、フェルは扉を開いて中を覗く。そうして、目的の場所に繋がっているのを確認すると、一つ頷いて、再び扉を閉じた。


「良し。これで良い。開けてみろ」

「?」

「靴は脱げ。土足厳禁だ」


 とりあえず話の流れで指名された浬は立ち上がって、フェルの創り出した奇妙な扉を開いてみる。すると、その先には普通の部屋が存在していた。

 広さとしてはフェルのセーフハウスには遠く及ばないが、それでもなかなかの物だった。と、感心していた浬だが、よく見れば、部屋の中に別の扉があることを発見する。


「あれ? まだ向こうにも幾つか扉がある? 窓もある・・・ねえ、フェルちゃん。ここ何処?」

「天神市の郊外にある住宅の一つ、だ。そこに繋げた」

「繋げたって・・・そんな簡単に出来るものなの?」

「そんなわけがあるか。地球上でもここまで簡単にやってのけるのは、私かティナぐらいなものだ」


 何時もの尊大な態度の中にも何処か自慢気な雰囲気で、フェルが告げる。とは言え、それが凄い事なのかが、浬には理解出来なかった。

 ただでさえ魔術的な知識が無い上で二人の素を知っている所為で、これがどれほど素晴らしいのかどうなのかがわからないのだ。


「それ、凄いの?」

「はぁ・・・世界でも最も高度な術式の一つ、だぞ、これは・・・」

「ふーん・・・」


 呆れ返って浬にどれだけ凄いのか、という事を告げたフェルだが、浬はいまいち理解出来なかったらしい。そんな事よりも、部屋の内装等に興味深そうに観察していた。窓もあったのだが少しだけ視界が高かった事を考えると、どうやらここは2階の一室らしい。


「・・・一つ、認めよう。貴様はカイトの妹に相応しいだけの存在に大成するだろうな」

「ほえ?」


 本来ならばあまりの技量に恐れてひれ伏すか感動で卒倒しかねないほどの術式を前にどうでも良さそうな浬に対して、フェルが称賛とも侮蔑ともつかない評価を送る。

 だが、そんな評価を受けた浬は呑気に間抜け面を晒すだけ、だった。と、そんな事をしている内に、どうやら興味を抑えきれなかったらしい煌士が扉から顔を覗かせる。


「おぉ! これはよもや転移術なる超高度な術式なのか!?」

「そうだ」


 ようやく望んだ対応を得られたのか、フェルは煌士の言葉を少し嬉しそうに認める。


「ふむ・・・ここは天神市の外れか。あの邸宅は一度だけ伺った事がある」

「・・・ええ、確かに伺いましたね」


 どうやら煌士と詩乃は少し遠くに見える住居を見て頷く。どうやら、既知の建物だったらしい。と、そうして一人入れば、次々と入ってくる。


「わー! すっごい豪華な家!」

「あれ、家具家電一式揃ってるんだ・・・」

『こここ・・・まあ、万が一に暮らせる様にもしておるからのう。大抵の物は揃っておる。流石に食材は無いし、冷蔵庫は止まっておる。電気はソーラーパネルと自家発電機で切断しておるが・・・まあ、問題は無いの』


 最後に入ってきた玉藻が、一同に家の概要を告げつつ、しっぽで器用に扉を閉める。


「知ってるの?」

『ここらは妾も泊まる事があったからのう』

「へぇー・・・」


 鳴海が興味深そうな感じで玉藻の言葉に頷いた。そうして試しに電気のスイッチを弄ってみると、確かに言葉通り、電気が点灯する。無駄遣いしなければ、十分な電力は得られている、との事だった。

 ちなみに、ガスは扱いが面倒になるので使っていない、との事だ。と、そうして一同が色々と見て回っていると、ふと、フェルが居ない事に気付いた。


「あれ? フェルちゃん?」

『む? ああ、あれならなんぞ言う小僧を迎えに行く、とか言っておった』


 なんぞ言う小僧。おそらく、空也の事、なのだろう。と、その次の瞬間、再び扉が現れた。


「きゃ!」

「来い」

「はい・・・あれ?」


 扉が開いて出てきたのは、案の定フェルと空也だった。そうして中に入ってきた空也だが、そこに居た浬達を見つけて、目を見開いた。どうやら知らされていなかったらしい。


「おぉ、空也も来たのか」

「やあ、煌士。久しぶり・・・て言うほどでも無いけどね」

「うむ・・・何処に居たんだ?」

「ああ、自分の部屋で読書をしていたんだが・・・いきなり声が聞こえてね。見れば彼女が居てね。驚いたけど・・・まあ、事情は理解していたからね。そういうわけで、彼女の指示に従って、渡されたこれを使って自分の偽物を作ってから、こっちに来た、というわけさ。クローゼットの中に扉を作ってくれたから、今後は自由にここに来れる、そうだよ」


 空也から説明と共に提示された人型の紙を見て、煌士がそれを興味深そうに観察する。


「ほぉう・・・これは・・・先日の式神にも見えるが?」

「原理的には同じだ。使われている技量は段違いだがな・・・貴様らにも数枚ずつ渡しておく」


 フェルは懐から一束の同じ人型の紙を取り出すと、各々に数枚ずつ配っていく。


「これはどうやって使えば?」

「魔力を通せ。一滴でも血を滲ませれば尚の事良い」

「ふむ・・・詩乃。薄皮を切ってくれ」

「かしこまりました」


 フェルの言葉を聞いた煌士は、何らためらうことなく詩乃に対して左手を差し出して、詩乃はそんな煌士の指示を受けて、指の薄皮をスカートの中に隠した護衛用のナイフで薄く切り裂く。一瞬、煌士が痛みで顔を顰めるが、つぷりと左手の人差し指に血が滲む。

 そうして、滲んだ血を人型の紙で拭うと、紙に魔力を溜め込む。そんな迷いなく使う事に決めた煌士に、フェルはため息混じりに使い方を教える。

 言う前に行動に出られたので言えなかったが、これは使用限度があったのだ。あまり無駄遣いはしてもらくなかったのである。


「はぁ・・・それを投げろ。それで、貴様の分身が出来上がる。後は簡単な命令でも与えてやれ。適度に本でも読んでおけ、とでもな。高度な行動は無理だ」

「ほぉ・・・はっ」


 フェルの指示を受けて、煌士はなんら疑問無く、血を滲ませた人型の紙を投げる。一応何が起こるかわからないので、方向は誰もいない方に、だ。

 そうして、紙が床に着地すると、一瞬紙が光り輝いて、ぽん、という音と共に、煌士の分身が出来上がった。


「おぉ! これはまさに我輩!・・・ふむ! では我輩の動きを真似てみせよ!」


 煌士の分身は、何も命じていないが故に動きこそしなかったが、それでも質感と良い顔形と良い、非常に彼にそっくりだった。そうして、その出来栄えに満足した煌士は、次いで自らの動きを真似る様に命ずる。


「ほい」

「ほい」

「あ、ほい」

「あ、ほい」

「ふむ・・・」

「ふむ・・・」

「クックック・・・フハハハハ・・・ハァッハッハッハッハ!」

「クックック・・・フハハハハ・・・ハァッハッハッハッハ!」


 煌士は適当に思いついた言葉と行動をトレースさせて、その動きの滑らかさと寸分違わぬ様子にご満悦に高笑いを上げる。最後の高笑いは真似られるとは思っていなかったらしいが、とりあえず総合的に満足の行く結果、だったらしい。そんな二人の煌士の様子に、浬と詩乃がうざったそうに顔を顰めた。


「うっざいわー」

「どちらかナイフで突き刺しても大丈夫ですかね?」

「式神の方はナイフで突き刺せば元に戻るが・・・家の後片付けが面倒だ。血の匂いが付くのが特にな。血の匂いは染みこむと獣人の奴らがあまり好まん」

「残念です」


 あまりのウザさに掣肘をしようと思ったらしい詩乃だが、後片付けが面倒、と言われて矛を収める。


「さて・・・では、まずは貴様らの腕前を見せろ。話は全て、それからだ」


 相変わらずハイテンションの煌士を放置して、フェルが告げる。まあ何事もまずは今の力量を知らない事には、始まらないだろう。そうして、一同はとりあえず、今の腕前を披露することになるのだった。

 お読み頂き有難う御座いました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

*活動報告はこちらから*

作者マイページ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ