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勇者の弟妹 ~~Tales of the new Legends~~  作者: ヒマジン
第6章 藤原千方 決着編

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第99話 解決策

 隠形鬼がカイトへと降って、すぐ。フェルはとりあえず聞くべき事を問いかける事にした。


「それで、降ったと言うのなら、念のために答えておいて貰おうか」

「ん・・・奈良県のとある豪邸・・・正確な住所は・・・」


 隠形鬼は少し長い奈良県の山間部にあるとある一戸建て住宅の住所を告げていく。それは、つい先ごろまで彼女らと言うか藤原千方がアジトにしていた所だった。そうしてそれをスマホで又聞きさせていた楽園の幹部へと、住所を言い終えた終わった所でフェルが指示を下した。


「だそうだ」

『即座に手配に入ります。戦力はどの程度に?』

「どうせもうもぬけの殻だ。貴様らの手勢だけで十分だ。居るか否かだけを確かめておけ。報告には?」

『一時間で十分です』


 電話先は人狼族の党首である舞夜という女性だ。それだけ聞くと、ルイスは接続を切った。


「居ないの?」

「居てたまるか。そもそもこいつが裏切る事は想定済みだろうさ」

「・・・それは大丈夫なのか?」


 煌士が問いかける。そもそも裏切られる事を想定しているのなら、何か対処は施されていて然るべきなのだ。それを警戒しての事だった。


「さて・・・誓約が千切れた時点で、何かデメリットは発動してしかるべきなのだろうが・・・」

「・・・何も無い」

「だ、そうだ。私から見ても、何も起きていないな」


 隠形鬼とフェルが揃って首を振る。どうやら何か悪辣な仕掛けが施されていたり、という事は無いらしい。現状何かが起きている様子はなかった。

 その一方、カイトの方は大急ぎで隠形鬼の配下の者達の受け入れ体制を整えていた。とは言え、実はここらもこちら側で想定されていた事態だった為、後は人数や人員などの把握だけだった。


「・・・ああ・・・じゃあ、受け入れ体制そのものはすぐに出来るんだな?」

『ええ・・・交流の活性化のお陰でこちらの里もホテルを所有していたから、問題は無いわ』

「よし。じゃあ、頼んだ」


 電話相手はエリザだ。彼女は今回の一件ではこちらには来ず、里に残って手配を整えてくれていた。


「受け入れ体制は整った。後は楽園の方に移してやってくれ。一ヶ月もあれば、新居へとたどり着けるはずだ」

「・・・ありがとう」

「ああ・・・」


 隠形鬼が頭を下げる。これで、後は自由だろう。とは言え、カイトと言うかフェルの仕事を手伝って、とはなる。それでも、今までよりは遥かにしたいことは出来るだろうし、里の者達についても千方が蘇る前と同じ様に自由に動けるはずだ。勿論、それらは千方の一件が片付いた後にはなるが、そこは仕方がないと受け入れるしかない。

 と、そうして再度受け入れ体制の為に各所への連絡を始めたカイトに対して、隠形鬼へとフェルが気になった事を問い掛けてみる事にする。


「そう言えば・・・ふと思ったんだが、貴様ら千方が蘇る前まではどんな仕事をしていたんだ?」

「私は・・・図書館の司書。本好き」

「免許は?」

「ん」


 隠形鬼が表向き使っているらしい司書の免許証をどこからともなく取り出して、提示する。しかも後から別の免許も一緒に取り出した。どこか自慢げなのは気の所為ではないだろう。


「ついでに司書補の免許と図書館職員の免許も持ってる」

「よく食っていけ・・・ああ、貴様らの事か。どうせ情報屋も兼ねていたか」

「ん」


 フェルの推測に、再度隠形鬼が得意げに頷く。やはり司書だけで食べていくのは厳しい物があるのだろう。持っている技能を使って、情報屋も営んでいたようだ。そこら、やはり彼女ら忍者も現代に適応していたという所だろう。

 ちなみに、実は今まで千方達が使っていたアジトも、隠形鬼が見付けてきたものだ。一人暮らしで身内はおらず、更にそれなりの広さもある一戸建て。それを探すには、彼女の持つ情報網が欠かせなかったのだ。とは言え、そうであるとするのなら今度は彼らが何処に行ったのか、という疑問も出てくる。


「さて・・・であれば、貴様らが伝手を持たず、かと言って一人暮らしでそれなりの広さを持つ邸宅を持つ者か・・・心当たりは?」

「ん」


 隠形鬼は首を横に振る。どうやら思い当たる節はないらしい。と言うか有っても確実にそこは外してくるだろう。敵が攻めてくる場所に潜む馬鹿は居ない。


「まあ、当然か」

「それで・・・これからどうするんだ?」

「ふむ・・・」


 煌士の問い掛けを受けて、フェルが熟慮を始める。考えるべき事は色々ある。煌士達に関係がある所であれば、月影山の鬼の呪いの解呪。遠い所であれば、千方の問題。考えるべきは色々とあった。


「そう言えば・・・ランス。貴様、何か情報は無いのか?」

「情報、ですか・・・彼らの呪い関連ですか?」

「ああ」

「呼び捨てで良いんですか?」

「そもそも年上ですから・・・」


 浬の問い掛けを受けて、ランスロットが頷く。学内では立場はランスロットの方が上だが、対外的にはフェルの方が上だ。それは彼にしたって知っていた。なので呼び捨てもタメ口も偉そうな態度も責められるわけがなかった。と、そんなランスロットが今まで彼女らに任せきりで放置されていた事を問いかける事にした。


「そうですね。そもそも聞いておきたかったのですが・・・どういう類の呪いなのですか?」

「どういう類の呪い? 呪いにも種類があるのですか?」


 煌士が今までずっと聞いていなかった内容に首を傾げる。


「ええ・・・例えば一瞬で呪い殺す様な類の即効性の呪いから、ゆっくりと苦しめて殺す様な遅効性の呪い。他にも苦しめるだけが目的な呪いや、その者を魔物という化物に狙われる様にするだけの呪い、なぞもありますね」

「最後のは弥生が食らった呪いだな。一番厄介な呪いでもある」

「そうなの?」


 兄の幼馴染の一人が受けたという呪いは、どうやらそれほど厄介な類の物であったらしい。浬と海瑠が目を見開いていた。


「これの厄介な所は呪いが存在の外側に張り付く様な類だからな。一見すると呪われている事がわからん・・・おまけにどこぞの厄介な神様が手を貸していたらしくてな・・・本人ではなく、本人が持っていたアクセサリーが呪われる様な事になっていたそうだ」

「捨てたら終わりじゃん」

「小さい物だったからな。捨てたと思っていたら偶然入り込んでいたんだろう、となって逆に気付かなかったらしい・・・焦りもあったからな。捨てられない類の呪いも掛かっていると気付くまでに、時間が掛かってしまった」

「おまけにあれは・・・まぁ、ね」


 フェルに続けて、ランスロットが苦笑する。当時から彼は天神市第8中学校に在籍していたのだ。なのでこの一件はよく知っていたのである。それに、煌士が問い掛けた。


「どういうことだったんですか?」

「この星の呪いじゃあなかったんですよ。正真正銘、別星系の呪いだったそうで・・・解呪にもヨーロッパで有数の魔術師であるメデイアという女性の力を借りてようやく、という所でしたね」

「・・・この星の呪いじゃない?」

「別星系の呪い・・・?」


 言われて、全員がぽかん、となる。これはつまり、一つの事を現していた。


「まあ、ぶっちゃけてしまえば、宇宙人が使う魔術だった、というわけです」

「・・・煌士。私は寝ぼけているのかな? 魔術というオカルティックな物にエイリアンというサイエンティフィックな物が絡んでいる様な気がしているんだけれど・・・」

「我輩もそうおも・・・いや、待て・・・」


 どうやら煌士が何かに思い当たったらしい。記憶を探り、暫くしてもしや、とがばっと顔を上げた。


「魔術に関連して異星系の使者となれば、もしやそれはクトゥルフの関係ですか!?」

「ビンゴ。その通りです」

「まさか・・・本当に存在していたとは・・・」


 ランスロットの答えに、煌士が興奮でわなわなと震え上がる。どうやらそこらは趣味の範囲内だったらしい。と言うより、一番初めにこの性格になる事になった元凶が、クトゥルフらしい。彼がアメリカに居た事を考えれば、むべなるかな、と言うところだろう。


「煌士様」

「なんだ!」

「呼ばないでくださいね? 勿論、例の奇妙なふんぐるいだのふぐたん、だのというわけのわからない言語は以後禁止です」

「・・・う、うむ」


 詩乃からの非常に強い眼力を受けて、密かにそこで有名な文言を試みようとしていたらしい煌士が別の意味で震え上がる。

 詩乃とてさすがにカイト達ですら手に負えない様な相手に手を出す事だけは避けて欲しかった。そんな二人に、ランスロットが笑いかけた。実はそこまで警戒する様な相手ではないからだ。


「あはは。物語に語られる程の力は無いですよ。自由に星の海を行き来する程度の力はある様子です。まあ、強い事は強いのですが、それでも抗えない程ではないですよ。ルル殿であれば、確定で勝てますからね」

「厄介なのはそこではないだろう。居所を探し出してとっ捕まえるという事が出来んのが、一番厄介だ。しかも正体は不明だ。面倒な事この上ない」

「あはは・・・」


 フェルの言葉に、ランスロットが苦笑する。戦闘能力的には厄介ではないのだろうが、その特質などが厄介なのだろう。


「そもそも、あいつは自由に動き回って裏から事件を引っ掻き回すから厄介だ・・・しかも奴は神としての特性からか人に化けている時は本当に人だ。犬に化けている時は本当に犬だからな。結界もすり抜けるし私にもわからん。手に負えん。奴だけは、防ぎようがない・・・が、滅多に表に出てくる事はない」

「おぉー・・・」

「感心するな」

「いつつ・・・」


 物語に語られる通りだ、と妙な感心をしていた煌士の頭を苛立ち紛れにフェルが叩く。八つ当たりだ。それなりに苦汁を舐めさせられたようだ。


「あー・・・煌士。そのクトゥルフって一体・・・」

「ああ、クトゥルフと言うのはクトゥルフ神話の事だ。1900年代初頭にアメリカで出された『ハワード・F・ラヴクラフト』という人物が中心となって創り上げた物語の事だな。他にも有名な所であれば、『オーガスト・ダーレス』らが居るか・・・」

「1900年? そんな近い時代に神様が新しく来たの?」


 それならなぜ大騒ぎになっていなかったのか、と浬が最もと言えば最もな疑問を呈する。そしてここは、煌士も疑問だった。


「うむ・・・そこは疑問だ。なぜ近年になって新たな神話が記されたのか。所詮これは我輩も単なる創作物の一つだと思っていたのだが・・・」

「簡単だ。奴らは一度地球から去った、というだけにすぎん・・・物語の通りにな」

「おぉ、なるほど・・・そう言えば旧支配者によって云々と記されてあったな・・・」


 煌士も言われて、そう言えば確かに記されている通りだ、と得心がいったようだ。


「では」

「そこはもう良いだろう。今度機会があったらシュルズベリィ教授にでも詳しく聞いてこい。懇切丁寧に、かつ詳しく語ってくれる」

「実在しているのか!?」


 煌士が今日一番の大興奮になる。シュルズベリィ教授と言うのはクトゥルフ神話の中でも有数の主人公格の一人だ。それが実在しているとなれば、興奮もひとしおなのだろう。

 とは言え、これ以上この話していては話が延々と本題からそれていくばかりだ。なので、フェルが軌道修正を行う事にした。


「だから今度にしろ。今はこいつらの呪いの方だ」

「む・・・し、失礼した」

「はぁ・・・それで、こいつらの呪いは遅効性の類だ。弥生の時の物を応用して、進行を遅らせている」

「ふむ・・・」


 気をちろ直したフェルの言葉を聞いて、ランスロットが改めて色々と観察を始める。まずは何事も診察せねば治療は出来ない。そうして、ランスロットがヴィヴィアンへと視線を向ける。


「・・・ヴィヴィアン殿。解呪可能そうですか?」

「これは・・・私でも無理かなー・・・呪いといえば、モルガンは?」

「無理に決まってるでしょ。と言うか、私は呪う方が得意。解呪はあんたらの得意分野でしょ。それに、見た瞬間にこれは無理、ってわかったもの」

「・・・え?」


 解呪は無理、と断言したモルガンに、場が凍りつく。今までは出来る前提だったのだ。それが狂えばさすがに場も凍りつこう。と、そんな凍りついた場に、モルガンが気付いた。


「・・・あれ? もしかして・・・黙ってたりした?」

「・・・まぁ」

「嘘!? 無理なの!?」


 フェルが応じた事により、今までの努力は何だったのか、と浬が思わず声を張り上げる。それに、フェルが気まずそうに、視線を泳がせた。


「仕方がないだろう。あの状況で解呪はこれから探す、なぞ言えるはずがない。時間稼ぎの意味も含めて、訓練させてただけだ」

「いえ、解呪なら可能でしょう?」

「・・・え?」

「何?」


 ランスロットからの一言に、再度場が凍りつく。まるで彼は全員一体全体何を言っているのだ、と言わんばかりの具合で断言したのだ。あまりの断言っぷりにフェルやカイトでさえ仰天したぐらいだ。そうして、そんな場を凍りつかせたランスロットが、カイトを見た。


「いえ・・・確か出来ましたよね、解呪」

「オレ・・・? いや、今のオレに解呪は無理ですよ?」

「いえ、カイトくんではなく・・・貴方が懇意にしている大精霊様方なら普通に簡単に出来るのでは?」

「「「・・・あ」」」


 カイトとフェル、そして二人の妖精達が目を見開く。実はカイトが懇意にしている神様や英雄達が今までそこまで大騒ぎしていなかった理由は、ここにあった。

 全員最悪の場合はこれがあるから別に良いよね、と考えていて、更には力を蓄えているのだってこのためなのだろう、と考えていたのである。全員そう言う認識なので、誰も何も言わなかったのだ。


「あー! わっすれてた! あいつら出来たわ、普通に! あいつらに頼む事なんて無いし、声を出してくれないからすっかり忘れてた!」

「お兄ちゃん!」

「悪い悪い! あぁ、無茶苦茶安心したー・・・」

「安心したー、じゃないってば!」


 どうやら内心で不安だったのはカイトも一緒だったのだろう。刻一刻と期限は近づいてくるのに、解決策が見付からないのだ。いくら彼でも不安になっても仕方がなかった。

 それでも、弟妹達の為に必死で押し隠していたのである。そうして、暫くカイトは浬によって糾弾と言う名の説教を受ける事になる。が、それも暫くで終わり、ようやく本題に入らせる事にする。


「もー・・・で、それ、誰なの?」

「ああ、大精霊というこの世で一番偉い存在だ」

「「「おぉー・・・」」」


 勇者は勇者なのだ、と思い知らされる一言に、浬達が感心した様に声をあげ、目を見開く。なにせこの世で一番偉い存在だ。これこそ流石世界を救った勇者と言われるだけはある、と言える存在だった。そうして、遂に解決策が見えて、話は更に続く事になるのだった。

 お読み頂きありがとうございました。次回は来週土曜日21時です。

 実はここまでに『Re』や『Fragment』を読んでる方から大精霊達なら出来ないんですか、という質問が来たらどうしよう、と考えていたりしました。なぜ彼が忘れていたかは、また来週。

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