表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
942/1020

第七十四話 vs第三の柱、二

今回は前回の続きになります!

では第七十四話です!

 結論から言おう。

 たかが百体、たった百体しかいない。

 ゆえに余裕、楽勝というやつだ。

 セカンドシンボルの時は無限に増殖する力を持っていたため手こずったが、今回は違う。サードシンボルが自分の分身を作ることができているのはガイアの力を利用しているからだ。であれば、その力にはまず間違いなく限界がある。

 それが魔力の限界なのか、それともガイアの力自体の限界なのかはわからないが、それでもいつか頭打ちになるのは確定的だ。つまり俺がやつの分身を屠り続ければいつかは割りが来る。

 だがそんな面倒な戦いは論外だ。こいつを倒した後に麗奈の相手をしなければいけない以上、避けない時間はかけられない。加えて戦闘とは時間をかければかけるほど状況が悪化していくものだ。手短に終わらせるに限る。

 よって、俺はやつの分身と真正面から戦うことにした。

 そもそも、だ。

 俺はアリエスたちが住んでいたい世界に行った当初、数千体という魔物を一瞬で討伐している。あの時に比べればはるかに強くなっている今の俺が、たかだか百体ごときの敵で怖気付くわけがない。

 さらに言えば、こいつの使っている力はセカンドシンボルの劣化版だ。ガイアの力を使ってまったく別の生き物を生み出すのかと思えば、まさかの自分自身を複製してきた。

 正直行って陳腐すぎると言わざるを得ないだろう。そんな作戦で今更俺を倒せると思っていること自体がアホ以外の何物でもない。

 だから俺は通常の神妃化の出力をさらに上げて気配を上昇させる。神妃化のパーセンテージにすれば五十パーセント。はっきり言って過剰火力だ。

 だがこいつにはそれだけの力をぶつける理由があった。だから俺は躊躇わない。上昇させた気配を右手に集中させて気配創造を発動させていく。それは宙に無数の刃を出現させて剣の雨とも言わんばかりの光景を作り出していった。


「なっ!?な、なんだその力は………!?」


「おいおい。お前はガイアを吸収して俺の能力が大方わかってるはずだろう?だったらこれが何かなのかぐらい理解できるだろう」


「そ、そういう話をしてるんじゃねえ!ど、どうしてたかが人間ごときにそんな規模の力が………」


「ああ、なるほど。ガイアの記憶の中で覗けなかった記憶ってそれだったのか。まあ、確かに俺が何物なのかってことがらは最重要機密だし、リアがそういうプロテクトをかけていてもおかしくはない。だったら俺の正体なんてわからないよな」


 俺が神妃であるという情報は神々の中ではかなり重要な情報の一つだ。それを明かせばかつての神妃リアの正体が露見することにも繋がる上に、恐れられていたリアが何をしでかすかわからない。

 そんな恐怖じみた感情がその記憶を守ったのだろう。実際、俺たちは誰が神妃でその神妃がどんな経緯で神妃になったのか、その情報を当たり前のように扱っているが、これは本来誰かに漏らしていい情報ではない。

 神々の中では周知の事実だが、世界の中にはまだリアが神妃だと思っている存在もいる。そんなやつらを混乱させないためにも、この情報は最新の注意を払って扱う必要があるのだ。

 そのおかげといってはなんだが。

 サードシンボルに俺の正体は伝わっていないらしい。気配創造という力を発動していることは理解しているようだが、まさかその力がここまでの規模で使えるとは思っていなかったようだ。

 というのも。

 今俺が発動している気配創造は一撃一撃が星を破壊できるレベルの力を持っている。つまり無数に浮かんでいる水色の刃一つで、先ほどのカラバリビアの攻撃を霧散させることができるのだ。

 正確に言えばこの力は純粋な火力ではなく、火力と気配を吸収する二つの側面で最終的な破壊力が算出されているのだが、その力がいかに異常なのかという情報は見ただけで嫌でもわかってしまう。

 そんな力を平気な顔で扱える存在はそうはいない。というか絶対に存在しない。神の領域にたどり着いた存在でも、こんな力を扱えるのはまずいないだろう。

 ゆえにサードシンボルはうろたえていた。百体もの自分の分身を作って余裕を見せていたその顔が一瞬にして凍りついた。俺が今までどれだけ手を抜いていたかわかったのだろう。

 だが。

 俺は待たない。

 躊躇なんてしない。

 あるのは冷酷な鉄槌だけ。体の前に差し出された手がゆっくりと空に向かって伸び、そして勢いよく振り下ろされる。

 その仕草に合わせて、空に浮かんでいた無数のヤイバは一斉にサードシンボルに向かって落下した。逃げ惑うサードシンボルだったが気配創造の攻撃がどこまでも追尾するため妃愛をあげることしかできない。


「ぎゃああああああああああああっ!?」


「があああああああああああああっ!?」


「そ、そんな馬鹿なあああああああっ!?」


 やつらの体に刺さった気配創造の刃はその体にある気配を全て吸収し、爆発した。貴教が使ったカラバリビアの鍵によって屋敷が吹き飛んでいることによって、地面には何も誰もいない。ゆえに気を遣う必要はない。

 その爆発は星だけでなく世界を揺らし次元境界の壁に亀裂を走らせていく。その圧倒的な破壊力はサードシンボルだけでなく麗奈すらも凍りつかせた。本当ならばここまでの力を使う予定はなかった。

 だが出し惜しみをしている暇はもうない。そのせいで誰かが死ぬことになるんだったら、俺は遠慮なくその力を使う。加減しているのはあくまで世界自体を破壊しないためだ。完全神妃化や人神化、さらにその上の力はまだこの世界で使っていいのか判明していない。

 だから今、この瞬間にまとっている力こそが真の全力なのだ。

 俺はそう考えると一体だけ気配創造の攻撃から逃れたサードシンボルを発見した。どうやら無数の分子を盾にして俺の攻撃を防いだらしい。ということは、つまり残ったそいつが本体だ。

 それさえわかってしまえばあとは簡単だ。肉弾戦で決着をつけるのみ。

 俺は地面の上で身悶えているサードシンボルの眼前に移動すると、圧倒的な威圧を携えながらこう呟いていった。


「終わりだな。お前はもう俺には勝てない。諦めろ」


「………ひゃひゃ。な、なに馬鹿なこと言ってやがる………。こ、この俺が負けるわけないだろうがっ!俺はあのサードシンボルだぞ!?その俺がこんな人間ごときに………」


「そう思うならさっさとかかってこい。俺の気は長くはないんだ。今すぐにでも俺はお前を殺したいと思ってる。何もしないならこっちからいくぞ」


 そう言ったのにサードシンボルは額から汗を流すだけで攻撃をしてくるそぶりは見せなかった。俺はその姿に大きくため息をつくと、地面を勢いよく蹴って拳を突き出していく。その攻撃は当たればやつの体を粉々に吹き飛ばし全てをチリに変えてしまうほどの威力をもっていた。

 なのだが。

 それがやつの狙いだったらしい。

 つまりカウンター。俺が自ら突っ込んでいくのを待っていたようだ。


「ひゃ、ひゃひゃひゃひゃっ!馬鹿だ、お前は馬鹿だあああああ!!!ひゃひゃひゃひゃっ!俺は皇獣や人間、その他の生物を食らうことでそいつの力を吸収できるっ!それはお前もわかっていたはずだっ!これが俺の力、他の皇獣にはない能力!つまり、だ。今のお前を喰らえば俺はもっと強くなれるってことなんだよっ!!!」


「………」


 そう言ってサードシンボルはガイアの口を何十倍にも大きく広げ、俺の体を飲み込もうとしてくる。その口にはガイアを喰らった時に付着したであろう彼女の髪の毛のようなものが付着しており、それが唾液と一緒に俺を迎えようとしていた。

 だがそれが俺の最後のトリガーを引いた。サードシンボルの不意をつく形でやつの背後に転移で移動した俺は、その脳天を右拳で地面に殴りつけた。


「なっ!?」


「………そんな作戦、見え見えなんだよっ!!!」


「ぐぎゃ、がはっ!?」


 地面に大きなクレーターが出来上がる。俺の攻撃でただでさえボロボロだった地面は大きく陥没し、半径五十メートルほどの大穴を作り出していった。

 その攻撃により美しかったガイアの顔は滅茶苦茶に崩れ、もはやガイアの原型がないくらいに歪んでいる。そんな顔を俺はただひたすら殴り続けた。打撃音が響き、何かが潰れたような感触が俺に伝わってくる。

 今まで誰かをここまで痛めつけたことはなかった。やるなら一思いに、それが相手への情けだった。だがこいつにはそんな感情は抱かない。どこまでも醜く歪んだその性根を叩き潰してやりたいと思ってしまった。

 だがその時。

 俺は徐々に拳に伝わる手応えがなくなってきていることに気がついた。初めはサードシンボルが本当に死んでしまったのかと思ったがそうじゃない。サードシンボルの体が徐々に薄れ体が薄くなっていく。そしてその気配が移動していることに気がついたその瞬間、俺は自分の視線を空に浮かんでいる麗奈に向けていった。

 そこには嬉しそうに微笑む麗奈の姿とその麗奈を喰らおうとしているサードシンボルの姿があった。


「く、くそっ!こ、こいつも分身だったのか!だとしたまずい。あ、あいつ、麗奈を喰らってさらに力を上げる気だ!」


 そう口にしたはいいものの、どれだけ俺が早く動いたとしても、もう間に合わない。すでに麗奈はサードシンボルの口の中に収まっており、サードシンボルの顔が歓喜に満ちていた。

 しかし。

 そこで俺は見てしまった。

 麗奈の顔に満面の笑みが浮かんだその瞬間を。

 と、その時。


「ッ!?」


 サードシンボルの動きが止まる。

 口の中に入りかけていた麗奈がゆっくりと吐き出され麗奈とサードシンボルが向き合うような光景が出来上がっていった。だがサードシンボルはなぜか身動きが取れないようで、体を小刻みに震わせながらうろたえていた。


「な、何が、起きて、る………!?う、うご、け、ねえ………」


「全て計算通りね。あなたがあの青年に敵わないことも、あなたが追い込まれたら私を喰らいにくるのも、全て私の計画に埋め込まれてたわ。だからここまでは想定内。そしてその計画には次のステップがあるのよ」


「な、なに、を………」


 サードシンボルの言葉にそう返した麗奈はゆっくりとカラバリビアの鍵を振り上げてその先をサードシンボルの体に突き刺していった。


「が、はっ!?」


「あなたがそれなりに強くなるのを私は待ってたわ。そうでないと『最終兵器』の意味がないでしょ?」


「ど、どう、いう、意味だ………!?」


「簡単なことよ。あなたがあの女性を取り込んだように、私もあなたを『取り込む』のよ」


「な、なにっ!?」


「………なんだと?」


 俺はその言葉に耳を疑ってしまった。

 皇獣であればその捕食能力で人間や神の力を得ることはできなくはないだろう。現に目の前にいるサードシンボルがその証拠だ。だが人間は違う。仮にカラバリビアの力を持っていたとしても、それは不可能だ。

 カラバリビアはリアが設計している。その時代に存在していなかった皇獣を喰らうなんて事象はどう頑張っても引き起こせない。

 だというのに。

 麗奈は嘘がついているようには見えなかった。


「………私は散々体を弄ばれて、傷ついても結局魔人にはなれなかった。でも、一つだけ得た力があるわ」


「ま、まさか、女、お前………!」


「ええ、そのまさかよ」


 その瞬間、サードシンボルの体が溶けるように歪み始めた。異臭のようなものが周囲に広がり、サードシンボルの全てを奪い尽くしていく。そして最後は何もなかったかのような無の空間が出来上がっていった。

 そこにいるのは麗奈一人。

 だが。

 だが、だが、だが。

 気配が、力が、違う。


「ふ、ふふふ、あはははははははははははははははははは!!!やっと、やっと完成ね!これが真の私、『皇獣』としての私なのよっ!」


「な、なにっ!?」


 言っている意味がわからなかった。

 だがその言葉をそのまま受け取れば意味は理解できる。理解できないが、理解できてしまう。最悪の結論が描き出されてしまうのだ。


「よく聞いておきなさい。私は確かに魔人にはなれなかった。最初は私の体が皇獣の力と遺伝子を全てはねのけていたわ。でも、ある時、そんな私のか剣主ただが変化したの。『魔人』じゃなく『本物の皇獣』に!」


 そう。

 つまりそういうことだ。

 人間に皇獣のような捕食能力はない。

 カラバリビアにもそんな能力は宿っていない。

 であれば、どうなるか。


 導き出される結論は一つだけ。


 つまり。




 月見里麗奈自身が皇獣であること。




 それ以外考えられないのだ。


次回は麗奈との戦いになります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

次回の更新は明日の午後九時になります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ