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第二百九十七話 顕現の時

今回はついに今まで語られて伏線がいくつも回収されます!

またあの神様も表に出てきます!

では第二百九十八話です!

「き、貴様!こ、これは一体どういうことだ!!!」


 ハクがアリスを撃破した直後。

 イロアとジュナスは帝都の中にある皇帝のいる宮殿内にて、皇帝の首に剣を押し当てながらそう叫んでいた。

 傍に同じく押さえつけられている皇女は既に気を失っており、両腕を掴まれる形で持ち上げられている。

 イロアたちは宮殿内に侵入するや否や、残っている力を使いながら宮殿の警備にあたっている兵士を壊滅させ、その最奥にいた皇帝を追いつめていた。どうやら帝国の主戦力は勇者と騎士団、魔導師団の三つだったようで宮殿内はさほど固められた戦力は用意されておらず、イロアたちは特に問題なく最後の仕事をこなそうとしていたのだ。

 しかし。

 ここでイロアたちでさえ驚愕する膨大な魔力がシーナやハクたちが戦っている戦場に浮かび上がったのだ。

 イロアはその現象の真相を確かめるために皇帝の首を掴み上げ、ことの真意を確かめるために言葉を投げつけていたということだ。

 だがその言葉に返答を返してくる皇帝の顔はどこまでも歪んでおり、もはや笑顔すら浮かべながら語りだした。


「ふははは、こ、これこそが我が帝国が残した、さ、最後の切り札だ………。勇者も、騎士団も魔導師団も、全てが囮………。今までの戦いは貴様ら連合軍を戦場に引きずり出し、一瞬で壊滅させるための布石だったのだ!!!」


「貴様!!!我々を攻撃するだけに留まらず、自分を信用している自兵まで殺すつもりか!?」


「ふっ、それこそが帝国の勝利に繋がると、あのお方は行ったのだ!我々はその意思に従っただけ。それが全てだ!!」


 イロアは悠々と語る公的に対して憤怒の表情を浮かべたが、そんなことをしても事態が収拾しないことを悟ると、再び皇帝の首に剣を突きつけると大きな声でさらに問いを投げつけた。


「答えろ!!!あの魔法陣は一体どういう代物だ!!!何がどうなってあれほどの魔力を集めることが出来た!!!」


「ぐっ!?………あ、あれは第一ダンジョンから採集した魔石を元に作りだしたものだ………。そ、それも、あの方の指示に従って………ぐふっ!?」


 イロアはそこまで聞き終わると全ての事態を理解し、用済みとなった皇帝の鳩尾に拳を叩きこみ気絶させる。


(つまり帝国はこの場で、このタイミングで我々を壊滅させるためにこの場所を戦場にした、ということか…………。確かに戦いには私たちが勝利するが、それでも今戦場にいる人間はあの魔法によって完全消滅。ゆえに、勝利したとは言い難い現象を作り出されてしまう………。ば、万事休すか……)


 実際、帝国側はイロアたちが攻め込んでくる前にこの魔法を発動させる予定でいたのだが、その準備が思った以上に時間がかかり、今のように苦し紛れの一撃となってしまったのだが、それは今のイロアたちにとっても十分なダメージに繋がる。

 イロアは血に濡れた髪をかき回しながら隣にいるジュナスに声をかける。


「ジュナス。戦場はどうなっている?」


「そうだね………。魔眼で見えている限り、完全に僕たちの軍勢が圧倒している。ハク君の戦いも同やら終わったようだけど、肝心のハク君が瀕死状態で立つことも出来なさそうだ。彼の力を頼ることはできないだろうね」


「な、ならば、イナアの魔剣ならばあの魔法をどうにかできないのか?」


「それは絶対に無理だ。イナアの魔剣は確かに魔法を無効化できる力があるけれど、あのレベルの力を許容できるわけがない。どんなものにも限界は存在する。もし仮にあの魔法にイナアの剣を使ったら、その魔力に耐え切れずに魔剣の方が折れてしまうはずだ」


「くっ…………。な、ならばどうすればいい………」


 イロアはジュナスの返答に対して奥歯を強く噛みしめて俯いてしまう。この事態を一瞬で解決できるであろうハクでさえ動くことが出来ない今、あの魔法が発動されてしまえば間違いなく戦場にいる人間は全員が死滅する。あの場にはキラやサシリという強大な力を持っているメンバーもいるが、その力を持ってしてもこの魔法陣は破壊できない。

 つまりイロアにそれを悟らせてしまうほどこの魔法は規格外なのだ。

 発動術者との接続は既に切り離されているようで、この宮殿内におそらく設置されているであろう魔石が魔力の供給源になっている。それを探し出して全て破壊すればこの現象は消滅するが、そんなことをしている時間は絶対にない。その前にこの魔法が発動してしまう。

 ゆえにイロアたちは一度全てのメンバーを連れて宮殿から退却することとなった。このままこの場所でジッとしていてもどうしようもないと判断したからだ。ちなみに気を失っている皇帝と皇女はしっかりと拘束しながら一緒に運び出す。


 だがここで、さらに驚愕する事実がイロアたちの目に飛び込んできた。

 長い廊下を駆けおりた直後、宮殿内に設置された窓から、その巨大な魔法陣に接近するように近づいている人影をイロアの目は捉えたのだ。


「ッ!?あ、あれはなんだ?」


 立ち止まってよく見れば、空中に浮いているその人物は女性のようで、雪のように白い髪をなびかせた幼い少女のような人間だった。


「ま、まさか、あれはアリエスか?」


 イロアはその光景をまじまじと見つめて己の頭の中でそう結論をはじき出す。どうやらその光景にはその場にいる全員が驚いているようで、口を開けて構ってしまっているようだ。


「だ、だけど、一体何をする気なんだろう?」


 ジュナスも相当困惑しているようでアリエスをジッと見つめていたが、その答えはすぐさま目の前に晒されることとなった。

 アリエスは右手をその魔法陣に突き出す形で翳すと何やら一言だけ口を動かして、己の中に宿っている力を発動させる。


その瞬間。

 あれほど膨大な魔力を放出していた帝国最後の魔法が一瞬で崩れ去り、完全に消滅した。


「な!?」


 その景色に誰もが驚愕し、その思考を停止させる。

 



 そしてこのアリエスの力こそがまた新たな火種を発生させていくのだった。










 アリエスがよくわからない力であの魔法陣を破壊した様子を見ていた俺は、目を見開きながら驚きを隠せないでいた。

 得体の知れないその力は正直言って神妃化している俺であっても打ち付けられれば消滅を免れないであろう一撃だったからだ。

 あ、あの力はなんだ?

 俺が与えた魔本にあんな魔術は記載されていないぞ!?

 アリエスはまだその空中に留まっているようで、ぼんやりと何かを見つめるような視線を空に流しながら佇んでいる。

 い、いや、それにしても助かったことは確かだ。

 今はとにかく自分の体の回復に努めないと………。


 と、思った矢先。


 まるでアリエスのその力が発動されることを待っていたかのように、圧倒的な風格を宿らせた存在の声が俺たちに降り注いだ。


『準備は整った。魔法によって「鍵」の存続意識を引きずり出し顕現させる。全てが上手くいきすぎて壊れてしまいそうだよ』


 その声はどこかで聞いたことのあるような声で、俺の体にかつてないほどの恐怖を打ち付けてくる。

 そしてその声と同時に俺の中にいるリアが焦りを知らせるような言葉を俺に投げつけてきた。


『あ、主様!!!こ、これはマズい!!!』


 しかし、その言葉が発し終わる前にその光景は作り出された。


 一瞬だけ、アリエスの背後の空間が歪んだかと思うとその奥から人の腕のようなものが伸びてきて、アリエスの胸に勢いよく突き刺さったのだ。


「アリエス!!!」


 俺は思わず声を上げて叫ぶが、その反動で俺の体はさらに軋みを上げ激痛が走る。

 その一撃はアリエスの首にかかっていたネックレスと腕に抱かれていた魔本を落下させ、その体力を奪っていっているようだ。しかしなぜかその体に傷はついておらず血も滲んでいない。

 そんなアリエスに悲痛な叫びを上げながら他のパーティーメンバーは俺の下に駆け寄ってくる。

 真っ先に到着したシラが俺の体を抱きかかえるように持ち上げるが、その目線はアリエスに向けられていた。


「ご、ご無事ですか、ハク様?」


「お、俺のことはいい。あ、アリエスが………」


 するとその避けた空間から、さらにどす黒い気配が出てきたかと思うと背中にいくつもの光輪を纏わせ、闇をも吸収してしまいそうな黒髪を携えた男とも女とも言えない人物が姿を現した。


「せ、星神!?」


 その姿を見たキラがその刃部の生を大きな声で叫ぶ。

 星神。

 今、あそこに浮かんでいるのが星神なのか!?

 俺はボロボロになった体を何とか動かしながら必死にその姿を目視しようとする。

 すると星神と呼ばれたその人物はアリエスの体の中から何かを探すような手つきで手を動かし、そして目的の品をつかみ取ると先程と同じように勢いよく手を引き抜いた。

 その瞬間、アリエスの体はそのまま力なく、空中を漂いながら落下していく。


「アリエス!」


 エリアは必死にその落下ポイントに駆け寄り、なんとかアリエスの体を受け止めるがアリエスの意識は戻ることはない。

 そして空中に浮いているその神々しい人物は愉快そうな声を上げながら俺たちに向けて話し出した。


「ようやく、ようやく追いついた。僕はやっと追い付いたんだ!!!今まで本当に長かったよ。だけどその旅もこれで終わりだ。神核を使い、帝国を利用し、勇者を呼び出す。その全てがこの瞬間のためにあったんだよ!!!」


 星神はそう呟くと、自身の手に握られている小さな鍵のようなものを振りかざしてきた。

 それは俺たちがいる地上を一瞬で破壊し、暴風と共に破壊の現象を呼び起こす。


「くそが!」


 キラはそう呟くと自身の力を解放して何とかその一撃を防ぐが、その周辺にいた大量の帝国兵とシーナたちの軍勢は一瞬で吹き飛んでしまった。


「ふ、ふふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!これが『鍵』の力!これこそが、絶対!まったく神妃もとてつもないものを作ったものだね。まあ、そのおかげで僕は最強になるんだけど」


「お、お前は何を言っている………?」


 俺はシラの腕に抱かれながらも必死に口を動かし言葉を発する。

 いきなりアリエスに攻撃され、仲間を傷つけられて黙っていられるはずがない。体は動かないが、懸命に気力だけは持たせながら俺は星神を睨みつけた。


「うん?まさか、君ともあろう者がこの『鍵』について知らないのかい?………これはまったくもって愉快だ。わざわざ二妃という君の天敵まで用意してあげたのに、気づいていないとは。哀れ、哀れだね、君は」


 すると星神はここで一度言葉を区切ると、大きく腕を広げながら俺たちに向かって一つの事実を淡々と叩きつけていく。




「その白髪の女。彼女こそが神妃の作り出した時空を飛翔する絶対最強の神宝『カラバリビアの鍵』の宿り木。神妃さえ作り出した反動でこの『鍵』について忘れてしまうほど強力なこの力は、君たちがいた世界からやってきたものだ。言い換えればこの『カラバリビアの鍵』を作り出したことによって神妃は神話大戦で十二階神に敗北したのさ」




 その台詞は俺たちパーティーだけでなく、神妃そのものであるリアでさえ凍り付かせたのだった。




 こうして俺たちパーティーに絶望という波が襲い掛かる。


次回は………予告なしでいきます!

ついに現れた星神がどのような行動をとるのか、それを予想していただければ幸いです!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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