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第二百九十四話 vsアリス、一

今回はついにハクとアリスの戦いが開幕します!

では第二百九十四話です!


 勇者の消滅を見計らっていたかのように真話大戦を一緒に戦った金髪の少女、アリスは俺の目の前に姿を現した。

 俺を見つめている青く透き通った瞳にはあからさまな殺気が滲んでいる。

 同じく俺も殺気を滲ませた目をアリスに放つがその瞬間、俺の体がいきなり重くなる。そおらく妃の器が二妃であるアリスに対して危害を加えさせないように制限をかけてきているのだろう。

 事象の生成を使用してもこの状態は打破できないのでとりあえず奥歯を噛みしめながらそれを無視し、アリスに気になっていたことを問いかける。


「何故、お前は帝国に自分の存在を知らせなかった?」


 それは先程の戦いで拓馬言っていたことで、拓馬たち帝国軍はアリスという存在自体を認知しておらず、聞いたこともないといった反応を示していたのだ。

 仮にアリスの参戦が帝国に伝わっていればおそらく戦の最初から出陣しているだろうし、勇者たちにここまで注力することはなかっただろう。

 だが現実はアリスの存在は帝国に伝えられず戦争が開始された。この意図が俺にはわからなかったのだ。


「知らせるも何も、帝国はあくまでオルナミリス様の駒なんだもの。必要以上の情報を与える必要はないわ。下手に調子づいても困るし。それに私の目的はハクだけなんだから、そこに余計な邪魔は入れさせたくないの」


 アリスは俺と同じく地上に降り立つと、元の世界で見ていたような笑顔を浮かべ、そう呟いた。

 つまり、アリスと星神は帝国を仲間ではなく、ただの道具としか見ていないってわけか。

 それで関係のない勇者なんてものを呼び出し、その人生にひびを入れたのか。

 俺はその事実に静かに怒りを燃やすと、エルテナとリーザグラムを再び構えなおしアリスに向かって戦闘態勢を作る。


「ふふ、やっぱりハクは私と戦う気なんだ。またあの時みたいに殺したいのかな?」


「黙れ。お前が本当のアリスじゃないことはわかってる。それに俺が以前の俺だとは思わないことだな」


 実際に妃の器によって行動を制限されているとはいえ、今の俺はもう一人の俺を取り込み全体的な身体能力が上昇し、気配殺しも完全にコントロールできるようになっている。

 早々簡単に負けるとは思っていない。

 いや、負けるわけにはいかない、の間違いだ。

 俺は絶対にこの戦いに勝たなければいけない。自分の過去と向き合い、自分というものの存在を見極めたからこそ、俺はアリスという少女に蹴りをつけなければいけないのだ。

 アリスは自らの力で青い光を帯びた剣を作り出すと、それを中段に構えて腰を落とす。

 その構えには一切の隙がなく、これから始まる戦いの激しさが予想できた。

 アリス………。俺はお前にいつも助けられてばかりだった。あの時の俺は力もなく、気持ちだけが先行していたからな。

 だが、今は違う。

 俺はたくさんの仲間に囲まれてその仲間を守らなければならない。もしお前がそんな俺たちを攻撃するっていうなら、俺は。


 お前だって殺してみせる。


 俺は心の中で明確な殺意を浮かばせると、勢いよく地面を蹴りだしアリスに接近した。

 初めはエルテナとリーザグラムを同時に振り下ろしていく。それは余波だけで地面をたたき割り暴風を巻き起こす。


「はああああああああ!!!」


「ふっ!」


 アリスはその攻撃を自らの剣を使って受け流すと身をさらに屈めて、がら空きになっている俺の腹に向かって剣を突き出してきた。

 しかしその動きはある程度予測していたので、あえて身を曝け出すように攻撃を受けに行く。


「な!?」


 アリスはその動きに対して驚きの表情を示すが、一度モーションに入ってしまうとなかなか中断することはできない。

 そしてその攻撃は見事俺の腹に直撃するが、その剣は同じく青色の光り帯びた何かに防がれてしまう。


「まさか、気配創造!?」


「その通りだ。生憎とお前に対しては全力で戦わないと付いていけないからな。常に気配創造で筋力と俊敏性を上昇させないと、そもそもの攻防に食らいつけないんだよ!」


 俺はそう呟くと、先程の拓馬との戦いで使用しなかった気配創造の刃を上空から叩き落とす。


「くっ!?」


 気配創造はその気配ごと穿つ力だ。ゆえにアリスといえどそう簡単に受けられる攻撃ではない。無数の刃は一度地面に突き刺さると再び空中に浮きあがりその刀身を晒す。


「まだだ!」


 俺はそう叫ぶと、そのまま気配創造の出力を上昇させ体を加速させると、一瞬でアリスの背後に移動すると、その体にエルテナを滑り込ませておく。

 しかしアリスはその攻撃に対して何やら不敵な笑みを浮かべていた。

 その瞬間、俺の足元から何やら強大な力が出現する。


「し、しまった!?」


「甘かったね、姫の嘲笑スラストフェルルディア


 アリスを取り巻くように出現した光はすぐに俺の体に巻き付き、斬撃のような痛みを走らせていった。


「ぐ、があああああ!?」


 さすがに気配創造の膜を体全体に張り巡らせておいてもこのレベルの攻撃になると防ぎきれないようで、切り傷を俺の体に作っていく。

 だがここで引き下がる俺ではない。


「気配殺し」


 俺はすぐさまその力自体をコントロールできるようになった妃の器最強の能力で破壊すると、アリスの方にエルテナを突きつけた。


「ぐっ!?」


 アリスはその攻撃に対して顔をしかめ、血を噴出させるがそのまま俺との距離を取り少し離れた場所に着地した。

 チッ。

 やっぱりアリスの体を直接傷つける攻撃はなかなか出しづらい。まして殺しの技なんか使おうものならこちらの体が動かせなくなってしまう。

 俺は改めて自分の体にかかっている制限を見つめなおすと、体の傷を治し戦闘態勢に入る。

 するとそんな俺を見つめていたアリスがエルテナの傷を痛そうに抑えながら、それを修復し俺に言葉を投げかけてくる。


「へえ、ハクにしてはやるねえ………。まさか妃の器の影響を受けながらでも私の体に傷をつけられるなんて思ってなかったよ」


「俺はもうお前だからといって踏みとどまることはない。俺の今の目的はアリス、お前を倒すことだけだ」


 アリスはそんな俺の言葉を聞くと、そのまま憎悪に満ちた顔を俺に向けながら攻撃を再開した。


「もう私は絶対に死にはしない!だから、ハク。あなたにはここで消えてもらうの!姫の談笑スラストフェルターティ!!!」


 その技は俺も真話大戦の時によく見ており、また獣国でも一度使用したもので、空中に無数のオーロラが浮かんだかと思うとその中から大量の稲妻が降り注いできた。

 俺はその攻撃をエルテナとリーザグラムでいなしながらなんとかアリスの下に駆け寄っていく。

 エルテナは永劫不変。リーザグラムは同調の力を持っているのでその攻撃を前にしても折れることはない。


「くっ!世界の願いが込められた剣………。そんな忌々しいもの私の前に見せないで!」


 おそらくそれはリーザグラムのことを言っているのだろう。アリスからすれば元の世界というものは自分の人生を狂わした張本人と言っても過言ではない。もちろん全ての根源はリアにあるが、二妃としての器をアリスに与えたのは紛れもない世界自身だ。

 そんな世界から託されたリーザグラムはアリスにとって憎しみの象徴でしかないだろう。


「だが、これがあったから俺はリアと和解しゼロを倒すことができた。あの時のお前はこの剣を嫌ってはいなかったはずだ!」


「うるさい!これで消えて!姫の終笑スラストフェルレクイエム!!!」


 アリスがそう叫んだ瞬間、天空から巨大な二本の長剣が降り注ぎ、それがクロスするような形で地面に突き刺さると、そこから巨大なレーザー砲のようなものが放たれてきた。

 似たようなものならキラやサシリの攻撃で受けたことがあるが、今回のそれは正直言ってその領域には留まっていない。

 おそらく俺が空間の次元境界を保持していなければ、一瞬で空間が消し飛んでしまうだろう。

 しかもこの攻撃をアリスが使っているところを俺は見たことがない。ゆえに対策の仕方がわからないのだ。

 俺は咄嗟にリーザグラムに力を込めて全力の力を持って自身の剣技を叩きつける。


赤の章(エリアブレイク)!!!」


 その攻撃はかつて第一神核の不死性すら打ち破ったもので、俺が使用できる剣技の中でもトップクラスの威力を持っている。その実態は力と世界という空間を切り離すことができるというもので、いかに強力な能力も世界という固定された地面から切り離してしまえば無力化できるという考えに基づいたものだ。

 俺はアリスの攻撃に対して全力でその剣技を振り落とす。


「はああああああああああああああああ!!!」


 しかし俺のリーザグラムとアリス攻撃が激突した瞬間、弾き飛ばされたのは俺の剣の方であった。


「ば、馬鹿な!?があああああああああああああああああああああああ!?」


 その攻撃はそのまま俺の体を半分抉るような形で消滅した。俺の右腕はその攻撃によって吹き飛び、肩から大量の血を流しだしている。

 咄嗟に神妃化の出力を上げて事象の生成を使用し傷を塞ぐ。

 だがどうして赤の章(エリアブレイク)が発動しなかった?いかなるものでも世界に結び付けられている時点であの攻撃は通るはずだ。

 すると再び冷静さを取り戻したアリスが嬉しそうな表情で説明してきた。


「その剣技は私も知ってるよ?確か世界から切り離すことができる力だよね?でも残念、私は二妃なのよ?一応その位は世界よりも上なの。そもそも世界に囚われていない存在にそんなものを使ったところで意味があると思う?」


 ……………くそ、そういうことか。

 確かに神妃の力を持っている俺や二妃のアリスは力の序列的に世界よりも高い地位にいる。それはどうやらこの世界にも適応されているようで、アリスの攻撃はアリスという存在一つで成り立っているようだ。

 ゆえに赤の章(エリアブレイク)は通用しないし、世界と切り離すという考えも通じないのだろう。

 するとアリスは再び自分の腕に力を集め始め、目の前にそびえ立っている巨大な剣を光らせ始める。


「ふふ、今は何とか直撃を逃れたみたいだけど次は外さないからね。いくらハクでもこの攻撃を連続でくらうのはさすがに堪えるでしょ?」


 アリスはそう言うと再び俺に対してその攻撃を勢いよく放ってきた。


姫の終笑スラストフェルレクイエム!!!」


 それはまたしても強大な力を帯びながら俺に向かって打ち出された。

 アリスの言ったように俺はこれ以上この攻撃を受けるわけにはいかない。いくら神妃の力で再生できるとはいえ、攻撃の質が神に近くなっているので俺とて完全なノーダメージとはいかないのだ。

 ゆえに俺は心の中で一つの決心をすると、リーザグラムを鞘に納め再生した右腕にエルテナを呼び戻す。

 そして静かに立ち上がると、そのままその攻撃を自分の体を晒すように迎え撃った。

 アリスの攻撃は間違いなく俺に直撃し、本来であれば完全に俺の体を粉砕するはずの威力を秘めている。

 

 しかし現実はそんなに思い通りにいかない。


「ッ!?そ、その力は神妃の!?」


 俺は自分の体に当たって消滅したアリスの力を振り払うと、そのまま無傷の状態で砂煙の中から姿を現した。


「神妃化を上昇させた。こうなった以上、俺も手加減はできんぞ?お互いに朽ち果てるまで死力を尽くすしか道はなくなったということだ」


 リアの口調が乗り移ったその姿は、第四神核を倒した状態とまったく同じものだった。




 こうして俺とアリスの全力の戦いは続いていく。


次回はハクとアリスの戦いの続きになります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!


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