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第二百八十話 vsオナミス帝国、二

今回はイロアたちSSSランク冒険者がメインです!

では第二百八十話です!

 ハクが拓馬と戦闘を開始したころ。

 丁度その後ろにいたイロアたちSSSランク冒険者も剣を抜き自らの体を動かしていた。既に馬車から降り自由に身動きが取れるような態勢に入るとイロアたちは各々が持っている武器を振り上げながらとてつもないスピードで帝国兵を蹴散らしていく。


「ハッ!雑魚ばっかりだな、おい!」


「今のところはね。だけどおそらくこれからが本番だ」


 ジュナスは前半から飛ばして動いているジュナスの隣に立ちながらそう呟いた。そしてその瞬間、ジュナスの頭上に殺気が迫ると風を切るかのように剣線が走る。


「ッ!」


 ジュナスはそれを何とか回避するとバク転を何度か繰り返し距離を取る。そしてその攻撃を仕掛けてきた張本人を睨みつけながら言葉を呟いていく。


「ようやくお出ましかな。オナミス帝国騎士団の方々?」


 すると全身鎧に包まれたその男はその声に一瞬だけ驚くと笑うかのような声色で反応を示す。


「ほう、天下のSSSランク冒険者が俺たちを知っているとはな。えらく有名になったものだ」


「油断しすぎだ」


 しかしそんな男の背後に回っていたイロアが自分の持っている黄金色の長剣を横一線に振りぬき攻撃を放つ。その動きは気配を感じさせる暇すらなく、本来ならば防御することも避けることも叶わない一撃だった。

 だが。


「ふん、こんなものかSSSランク冒険者というのは」


「なに!?」


 渾身の一撃を叩き込んだイロアの長剣はその騎士が差し出した左腕の籠手に激突し、傷一つ付けることなく受け止められてしまう。

 そしてその騎士はイロア目掛けて自分の件を流れるような動作で抜き放つと、それを無造作にイロアの体に打ち付けてきた。


「ぐっ!?」


 その攻撃は咄嗟に引き戻した長剣によって阻まれるが、イロアの腕にはかつて感じたことのない重さが圧し掛かってきた。


(こいつ………。スピードはともかく攻撃力と防御力はかなりのものがあるな。油断はできない)


 だがそんなイロアと入れかわるようにザッハーとジュナスがお互いの武器を突き合わすような形で攻撃を放っていく。

 しかしそれはまた違う乱入者によって防がれてしまった。


「チッ!お前らも騎士団か!」


「そうとも、我々は決して一人で戦っているのではない。貴様らと同じく団体で戦闘に臨んでいる」


「そして数では負けていても個々の能力が勝っている私たちに軍配が上がるのだ!」


 ジュナスとザッハーの一撃を防いだのは今戦っている騎士と同じ格好をした新しい騎士のようで感じられる力もSランク冒険者を軽く超えているようだ。


「なら、その力見せてもらおうかな」


 ジュナスは新しく登場した二人の騎士を見つめうるとそのまま剣を中段に構え戦闘を再開する。それはイロアとザッハーも同じで息を合わせるように騎士たちに向かって武器を振るっていった。

 さすがに一対一という状況であれば冒険者の中で最強であるイロアたちは常に優勢に立ち続けることが出来るようで、体に傷を作りながらもじりじりと戦況を傾けていく。

 しかしそれでも追いつめられているのは逆にイロアたちであった。


「くそが!どんな攻撃を与えても攻撃が通らねえ!硬すぎるぞ、こいつら!!!」


「焦るな、ザッハー!絶対に弱点はあるはずだ。それを見極めろ!」


 そう、この騎士たちの攻撃、スピードについていくことは出来てもイロアたちの攻撃は全て騎士たちの身に纏っている鎧によってガードされてしまうのだ。魔力を練り上げた一撃も何故だか鎧に触れた瞬間、消滅するようにその威力を失い無力化されてしまう。


「ふはははは!無駄だ!貴様らの攻撃は俺たちに通らない。いい加減諦めることだな!」


 騎士の一人が尚も鋭い攻撃を放ちながらそう呟いてくる。顔は見えないがその表情はおそらく笑っているようで、それがさらにイロアたちの苛立ちを増長させた。


(何が起こっている?あの鎧は私の不意打ちであった初撃も防いで見せた。ということはこいつらの意思で発動しているものではないのか?)


 イロアは繰り出されてくる攻撃を避けながらそう考えていたのだが、ここでSSSランク冒険者序列第一位のジュナスが今までの行動パターンを変えるような動きを取り始めた。

 それはわざと相手の動きを誘導するようなものでさすがの騎士団もその動作にはついていけずあたふたしている。


「こ、この、ちょこまかと!」


 そしてジュナスは何かを見つけたような表情を咄嗟に浮かべると、冷酷な言葉で戦いの終わりを呟いていく。


「もらった」


「なに!?………ゴハッ!?」


 ジュナスが放った攻撃は見事に鎧のつなぎ目を穿っており、それをまんまとくらってしまった騎士は体に着けていた鎧を全て剥がされ、無防備な体に攻撃を受けてしまう。


「確かにその鎧は強力だけど、さすがに装着具までは強化されていないようだね。ようはそれを切ってしまえば君たちに防御する手段はないってことだ」


「く、くそ!?」


 その事実を突きつけられた二人の騎士はすぐさま態勢を立て直して距離を取ろうとするが、それをSSSランク冒険者が逃がすはずがない。


「遅いぞ?」


「逃がすかよ」


 イロアとザッハーは逃げようとしている騎士たちの鎧に向かって的確な連撃を次々と繰り出していく。それは騎士たちの鎧にある装着具を全て破壊し、生身を曝け出させると二人同時に鳩尾に向かって蹴りを放った。


「ガハッ!?」


「グフッ!?」


 その打撃をもろに食らった騎士はそのまま地面に倒れこむようにして気絶してしまった。

 しかし依然としてイロアたちの表情は晴れることはない。


「これで三人か。なかなか先が重いな」


「ふん、こんなよくわからねえ鎧で俺たちの攻撃をガードしようなんて生意気な奴らだ」


「だけど、確実に数を減らさなければ先に進めないよ。これからも慎重に……ッ!?」


 ジュナスが三人の意思を統一しようと言葉を発しかけた瞬間、イロアたちの頭上に巨大な魔法陣が浮かび上がった。

 それは空魔法のような色をしており、込められている魔力もかなり多い。


「ここで魔導師団の魔法か!」


「マズい、これは避けられない!」


 イロアたちは完全に不意を突かれるような形で、体を固まらせてしまう。

 おそらく帝国側の狙いとしてはSSSランク冒険者の集団をこの魔法で一掃しようという考えなのだろう。騎士団のメンバーを何人か囮として使い、その隙に後方で控えている魔導師団が魔法を放つ。コンビネーションとしては悪くない戦法だ。

 実際に今のイロアたちにこの魔法を対処する手段はない。いくらSSSランク冒険者であろうとここまで近距離で魔法を発動されてしまえばひとたまりもないのだ。

 そしてついにその魔法が発動し、三人を水色の光が飲み込んでいく。

 しかしSSSランク冒険者とてこのまま終わるほど柔ではない。


「はーい、イナアちゃん華麗に参上!」


 そんな三人を守るように横から飛び出してきたのはSSSランク冒険者序列五位のイナアだ。

 イナアはそのまま発動された空魔法に向かって自分の双剣を振りぬくと、その魔法は一瞬にしてはじけ飛んでしまった。

 イナアの双剣はかなりランクの高い魔剣で、複数の能力が宿っている神宝級の武器なのだ。そして今回はその能力の一つである「魔法霧散」を使用した。

 その力は魔力で編み込まれたものならば、その双剣に触れた瞬間消滅してしまうという破格の能力だ。魔力で作られたものなら基本的に何でも消滅可能でアリエスの氷の終焉(アイスインフェルノ)ですら破壊することができる。

 しかし魔力とはいっても対象はこの世界にある魔術、魔法にしか効果を現さず、ハクの力やキラの根源、サシリの血の力のような特殊な場合はその効果を出すことは出来ない。

 しかし今のようにごく普通の魔法であれば無条件で消滅させることが可能だ。


「へへへ、ちょっと危なかったね、気を抜きすぎだよ」


 イナアはイロアたちに笑いかけながらそう呟いてくる。その表情はまったく殺気を含んでおらず天真爛漫な顔を浮かべていた。

 これがイナアの強みであり武器でもある。イナアはどんな時でもその精神状態を変えない。それが仮に命の危険が迫っていたとしても平気な顔で笑みを作り出すだろう。

 それは常に危険が隣にある戦闘という場ではとてつもなく大きな力となる。何が起きても自分本来の力を出すことができるのだから。

 そんなイナアに半分呆れながらもイロアたちは感謝の言葉を述べていく。


「すまない、助かった。やはりその魔剣は強力だな」


「つくづくお前はぶっ飛んでるな。普通そんな顔して戦場に立つ奴なんていねえよ」


「まあまあ、今回はイナアのおかげで助かったんだからよしとしよう」


 ジュナスは小言をこぼすザッハーを落ち着かせると、その魔法が放たれたであろう方角を眺める。


「今の魔法は………。どうやら帝国内から放たれたみたいだね。これは少し厄介そうだ」


 そのジュナスの目は青く輝いており少しばかり魔力が流れている。


「でたな、魔眼持ち。最強の魔眼とも称されている『彩眼』をこうも惜しみなく使われると帝国の連中も哀れだなあ」


 ザッハーはそんなジュナスを見ながら訝しげな表情でそう呟いた。

 彩眼というのはこの世界に存在する魔眼の中でも頂点に君臨している力だ。その能力は全ての魔眼の能力を使用できるというもので、ギルの観察勘もエリアの魅了の力も行使すること出来る。しかし元々根本の性質が違うためハクが使っている魔眼の再現は出来ず、直接死を叩き込むような真似は出来ない。

 だがそれでも彩眼というのは強力で、今も魔力の流れを視認化し発生源を突き止めたのだ。やろうと思えば睨むだけで建物を破壊したり、爆風を呼び起こす力さえ保有している。

 イロアはその言葉に軽く頷くと、自分の長剣を肩に乗せ静かに歩き始めた。


「ならば行くぞ。私たちの目的地はあの魔導師団を倒すことだ。どのみち皇帝を打ち倒さなければならない以上、帝都内には入らないといけないからな」


 そうは言うもののイロアたちの前には依然大量の帝国兵と、どこから襲ってくるかわからない騎士団が待ち構えている。イロア達の行動に触発されるように冒険者たちも遷都王を開始しているが、道を切り開くだけの期待は望めない。

 一応そのさらに後ろではシーナ率いる軍隊が待ち構えているのだが、それが進行してくるのを待っている時間さえも惜しいとイロアは考えてしまう。

 シーナたちは戦いが落ち着いてきたころを見計らって攻め込む手はずとなっている。イロアたちが戦闘を開始してそれなりに時間が経過しているので、そろそろ動き出すはずだ。


 イロアはそのことをもう一度思考の中でまとめると、先陣を切って帝都内を目指す。

 その背中を追いかける形で他のSSSランク冒険者と、冒険者の大軍が声を上げながら進んでいくのだった。


次回はシーナとギルにスポットを当てます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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