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第二百五十二話 王選五日目、一

今回はシラが大きな動きを見せます!

では第二百五十二話です!

 シルが王選に参加を表明した初日である王選四日目は終了した。

 結果的にアリエスたちの甲斐あって統制の檻はシラほどではないがそれなりに広がっており国民の一割程度が耳を貸すようになってきている。

 とはいえその統制の檻は一度解除してしまうとシラに押され負けてしまう可能性があったので、夜の間も発動し続けなければならなかった。

 さすがにそれをキラやアリエスたちに任せるというのは苦行すぎので、そこは神妃化した俺が全て補っている。

 というのも神妃化というのは基本的に神の領域に自分の存在を近づけるものなので睡眠はおろか休息すら必要がなくなる体に変化する。つまりみんなが眠っている間は俺が一人でその力の制御をやっているというわけだ。

 初めはかなり心配されたが、言ってものこり四日程度なので問題はないと言って納得させ作業に移った。

 また俺がこの能力を制御できるうちに可能な限りの出力でその勢力を拡大させる必要がある。キラやアリエスたちに任せるのも悪くないのだが、俺ほど無尽蔵に魔力が湧いて出てくるわけではないのでどうしても限界が来てしまう。ゆえに俺が出来る範囲でそれを増幅しているということだ。

 そんなこんなで王選の四日目は終了し五日目に突入する。

 四日目はさすがにシラサイドもこちら側に何かを仕掛けてくることはなかった。だが一夜明けた五日目ならば何を仕掛けてきてもおかしくはない。

 俺はそう考えながら朝陽が上ってくる窓を見つめながら顔を洗い獣国での朝を迎えるのだった。








「シル様!私はあなたを信じています!どうかこの獣国をお導きください!」


「シラ様もいいが俺はシル様派だぜ!頑張ってくれよ!」


「私もシル様を応援します!私の票はシル様のものです!」


「あ、ありがとうございます!頑張ります!」


 王選五日目午前九時。

 獣国の中央広場では昨日と同じくシル、エリア、ルルン、イロアを含めたパーティーが演説を開始していた。

 しかし昨日と格段に違ったことは確実に支持者が増えてきているということだ。今ではエリアやルルンが抑えなければシルの体を吹き飛ばしてしまいそうなくらいの人が集まってしまっており、一種のライブ会場のような空気になってしまっている。

 俺はそれを昨日と同じ上空から見ていたのだが、となりに浮いている翼の布(テンジカ)の上からそれを眺めていたアリエスが俺の方を向きながら呆れた表情で話しかけてきた。


「ハクにぃ………。私たちが寝てる間になにしたの?」


「なにって、普通に統制の檻を制御していただけだが?」


「ど、こ、が普通のなの!?私たちが昨日必死に頑張ってた時よりも効果出てるよ!?」


 アリエスは少し期限を悪そうにしながらそう呟いてくる。

 と言われてもなあ………。

 元々の魔力量が圧倒的に違うし、そもそも神妃化を実行しながら制御していたのでその効率は比べるまでもなく高い。

 ゆえに仕方がないことなのだが、アリエスはそれに関してご不満のようだ。

 すると同じく翼の布(テンジカ)の上から地上を眺めていたキラはアリエスを落ち着かせるように言葉を吐きだす。


「まあそんなに怒るな。妾たちが目指している目標はシルを勝たせることだ。それに近づいたというならばむしろ本望だろう?」


「ま、まあそうだけど………」


「それにハクは日中なにかやることがあるんだから、今は私たちが頑張るしかないのよ」


 サシリはキラの言葉に被せるように呟くと俺の方に一瞬だけ目線を飛ばし小さくウインクしてくる。

 あー、なるほど。サシリも気づいたのか。

 まあキラがわかったのならば教えているかもしれないし、特段黙っていなければいけないということではないので俺はサシリのウインクに軽い頷きで反応し三人に言葉を投げかける。


「おそらく今日が正念場だ。シラたちも何を仕掛けてくるかわからない以上油断はするなよ」


 俺はそう言うとそのまま翼の布(テンジカ)の傍を離れ、獣国の空を駆けていく。そのまま獣国の中にある宿屋の前に転移をすると着ているローブのフードをかぶり隠蔽術式で姿を隠すと獣国の街を歩き始める。


『で、今日は一体何をするのじゃ主様?』


『特段、やることというのはないんだけどとりあえずは観察だな。上空から見ていてもいいが、やはり近くに近寄ってみないとわからないこともたくさんあるはずだ。てなわけでシルたちの近くに接近するぞ』


『了解じゃ』


 俺はリアとの会話をそこで切り上げるとシルたちがいるであろう中央広場に足を向けた。すでにそこには大量の人だかりと七人の候補者が出そろっており、シルだけでなくシラも活動を開始しているようだ。

 シラの隣には昨日見たラミオとかいう騎士の姿もあり、まだシルよりも人気を集めているらしくシルの二倍以上の支持者に囲まれていた。

 その周辺には多くの兵士のような人間の姿もあり明らかに警戒の色が感じられ、シルという新たな対抗馬に危機感を抱いているようにも見える。

 ふむふむ、見えないところにも何人か兵を忍ばせているみたいだな。

 気配探知を発動してその空間を見てみればシラを守るように数十人の護衛の気配が感じられ、いつでも戦闘態勢が整っているといわんばかりの状況が出来上がっていた。


『異様と言えば異様かのう?』


『まあな。普通現国王の推薦状が出されていたところでたった一人の立候補者にこれだけの戦力を割くというのはありえないだろう』


『まあそうじゃな。だが動きがない以上こちらも動けん』


『だな』


 まあ仮にその護衛たちが一斉にシルを落とそうと攻撃を仕掛けてきたというならば全力で叩き落とすが、用意周到な獣国の連中に限ってそのようなことはあり得ないだろう。

 俺はその後もシルに対して危害を加えてくるものがいないか見回りながら獣国の街をうろうろしていたのだが、結局動きはなく王選五日目の午前中の日程は終了した。

 さすがに一日中ぶっ通しで演説をするわけにはいかないので一時間ほどシルたちも休憩に入るようで近くに設置されたテントの中で休んでいるようだ。

 俺もその中に入り休憩を取る。


「このままいけばシラの人気なんてすぐに追い抜いちゃいますね!」


「そうだねー。今の段階でも相当な支持を集めてるし、それこそ逆転も夢じゃないかもしれないよ!」


 ずっとシルの傍にいたエリアとルルンは自分たちの汗をぬぐいながらそう呟くと、嬉しそうな表情でそう呟いた。

 俺は椅子に座ってお茶を飲んでいるシルに対してその体調を確かめるように顔を覗き込むと出来るだけ優しく声尾をかける。


「シル、体は大丈夫か?今日もかなり熱いし気分が悪くなった言えよ?」


「はい、今のところは大丈夫です。姉さんも出てきましたし私も負けてられません!」


 一応顔色は普通なのでまだ大丈夫かもしれないが、基本的にシルは体が強いほうではないので注意は払っておいたほうがいいだろうう。俺はそれをイロアに伝え情報のやり取りを開始する。


「そっちは何か異常はあったか?」


「いや、とくにはない。強いて言えばシラ君サイドがあまり動きを見せないというところか」


「俺も同じだな。特に変わったことはない。それこそ何故ここまでされてシラたちが何もしてこないのかというほうが気になる」


 シルが王選に参加してからもうしばらくして一日が経過しようとしている。その短い時間でまだシラの人気は越せないにしてもその三割ほどの支持を傾かせているのだ。

 俺が獣国サイドであればとっくに動き出していてもおかしくはない。シラたちからすればこのままの票数を維持しつつ逃げきるのが最善手だ。下手に俺たちを蹴落とすことを考えずひたすら自分たちの票を保ち続けることが大切なことだろう。

 しかし今のシラたちはまるで俺たちの動きを窺っているかのような沈黙見せている。これが何を意味しているのかはしらないが、少なくともいい方向には転がらないはずだ。

 俺はそう考えると休憩もそこそこに偵察でも始めるかなと思っていたのだが、その瞬間大きな魔力の流れが俺の気配探知に流れ込んできた。


「ッ!?な、なんだこれは!?」


「どうかしたのか?」


 いきなり大きな反応を示した俺に対してイロアは怪訝そうな表情を向けて言葉をかけてくる。それはエリアやルルンも同じなようで事の真意を確かめるような視線を向けてきた。

 だが唯一シルだけは一体何が起きているのかを理解しているようで、冷や汗を流しながら言葉を発する。


「こ、これは姉さんの………。統制の檻………?で、でもこんな強力な波動は今まで出してなかったはず………」


 俺はその言葉を聞くとすぐさまテントの中から転移を実行し上空に浮かんでいる翼の布(テンジカ)にいるであろうアリエスたちの下に転移した。


「おい!どうなっている!」


 俺は転移した瞬間、滴るほどの汗を流しているアリエスとサシリ、そしてキラに向かって確認を促す言葉を吐きだした。


「わ、わからないの!で、でもとてつもなく強力な力が私たちの統制の檻を押し返してる!」


「なんだと!?」


 俺は翼の布(テンジカ)の上からその地上を眺めるように魔眼を発動しその現場を見てみる。すると明らかにシラのものとは別の力がシラの統制の檻を後押しするように膨れ上がっていたのだ。

 俺は咄嗟にアリエスたち三人に回復を施すと、そのまま魔力のパスを俺に移行させ自分の魔力をつぎ込んでいく。

 チッ!とんでもない力だな。神妃化しなければ押しつぶされてしまう。

 するとその光景を汗をぬぐいながら見ていたキラは俺の顔色を窺うように言葉をかけてくる。


「何やらよくわからない力が渦巻いているが、マスターの魔力で対抗できるか?」


 その問いにはすぐに答えることが出来なかった。なぜなら俺が魔力を注ぎ込んでいるのにそれがまるで侵食されるかのようにどんどん潰されていくのだ。

 それは言うなれば統制の檻のために開発されたような力で単純な力の大小ではなく力の性質の相性がそもそも悪いように感じられる。


「いや、多分無理だ。魔力量ならば負ける気はしないが、それ以前にあの特殊な魔力は俺の力を食いつぶすような動きを見せている。このままだとおそらく押し返されてしまうはずだ」


「そ、そんな……」


 アリエスは顔色を青に傾けながら俺の言葉に反応を示してくる。

 俺はそんなアリエスの隣でひたすらシルの統制の檻に力を注ぎ込みながら、この現象の原因を考えていく。


 一体これは何が原因になってるんだ。

 動き出したのはいいが、これじゃ対策の使しようがないぞ。


 シラサイドが見せた予想外の一手は俺たちの思考を大いに混乱させるのだった。









 視点を変えてシラ陣営。

 そこには見慣れない赤色の宝石が接着された腕輪を右腕にはめたシラがシルたちと同じく休憩室のテントで羽を休めていた。


「ミルリス一族がこの獣国に残していた統制の檻の力を増幅させる腕輪。さすがにこれを予想することは出来なかったでしょう、ハク様?」


 シラはラミオを傍に置きながら静かにそう呟くと、腕輪を撫でるように触れながらその効果が表れてくるのを待つのだった。


次回も王選の五日目になります!

誤字、脱字がありましたらお教えください!



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