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第百二十話 vs空の土地神

今回はがっつり戦闘回です!

では第百二十話です!

 空の土地神(セラルタ)

 それは銀色の羽毛につつまれた巨大な鳥だった。

 黒色に光を反射する鋭いくちばしと爪は一度触れれば骨まで削り取られそうなほど鋭利であり、その全てが俺たちに向けられていた。また大きく開かれた二つの翼からは暴風と言っても過言ではないくらい強力な風が巻き上げられており、カリデラ城下町の建物全てに吹き付けられている。

 住民はギルドを出た後サシリが避難させてあるので、誰一人と外に出ているものはいないが下手をすればレンガ造りの家屋でも崩れてしまうかもしれないと思ってしまうほど、膨大な力がそこに渦巻いていた。


『随分派手な登場じゃな、空の土地神(セラルタ)


 クビロがアリエスの頭の上からその巨大な鳥に話しかける。


『ん?誰かと思えば地の土地神(ミラルタ)ではないか。なんともまあ可愛い姿になったものだな?地上の生物の頂点に立ったものとは思えんぞ?』


『ぬかせ。貴様ほど腑抜けてはおらんわ』


『どういう意味だ?』


『じきにわかる』


 クビロはそう言うと自身の力を解放し始めた。それはこの空間にある全ての影を集約し始めいるようで、今まで感じたことのないほど絶大な魔力が集められているようだ。


『その人間たちが頼みの綱ということか?フッ舐められたものだな、私も。ならばその挑戦受けてやるぞ、この空の土地神(セラルタ)がな』


 するとサシリが一歩前に出て空の土地神(セラルタ)に話しかける。


「一応聞いておくわ………。引く気はない……?私たちもあなたのような雑魚を相手にしている暇はないのだけれど…………」


『……………フ、ハハハハハハハハハハハハ!人間風情がこの私を雑魚だと?笑わせる!そこまで言われた以上引くに引けんではないか!それに初めから引く気はないぞ?貴様の後ろにあるその町。私はそこから聞こえる悲鳴が聞きたいのだ!』


「そう………。なら存分に利用させてもらうわね………」


 その瞬間、サシリの体から空の土地神(セラルタ)を遥かに越える大きな魔力が浮き上がった。それは大地を揺らし、空気を振動させ空間を締め上げる。

 それに合わせて俺たちも全身に力を張り巡らせ態勢を整え、空の土地神(セラルタ)を見つめる。

 どうやらこいつはクビロのように話が通じる相手ではないらしい。強大な力を人を苦しませることにしか使えない奴など、そこらへんに湧いている魔物となんら変わらない。


『どうした?殺気だけ見せつけておいてかかってこんのか?』


 俺はその言葉に反応するようにサシリの方を見た。するとサシリは俺たちが仕掛けるのを待っているようで、じっとこちらを見つめている。

 その顔に答えるように俺は頷くと、隣にいたアリエスに指示を出した。


「やっていいぞ、アリエス」


 俺がそう呟くとアリエスは勢いよく魔本を開き、使い慣れた大技を放つ。


氷の終焉(アイスインフェルノ)!!!」


 アリエスの魔力は空の土地神(セラルタ)の遥か上空に集められ、雪と氷の雪崩を具現化する。

 俺たちはそれと同時に空中へ飛び出し散開し、その様子を眺めた。


『人間にしては高火力だが、それでも甘い』


 瞬間、空の土地神(セラルタ)は自身の纏う風をアリエスの魔術に打ち放つと、その魔術を相殺した。

 だが攻撃はまだ終わっていない。というより始まったばかりだ。

 俺はそのまま空の土地神(セラルタ)の前まで転移で移動すると、右手に持っているエルテナで奴の眉間を切り裂いた。


「はあああ!!」


 それは見事にヒットし鮮血を巻き上げるが、それは対したダメージになっておらず、怯んですらない。

 次にエリアとルルンが左右から挟みこむような形で片手剣とレイピアを振るう。

 それは一撃一撃が正確に計算されており、空の土地神(セラルタ)の注意を誘うような攻撃になっていた。


『ちょこまかと動きおって!!!』


 空の土地神(セラルタ)はそのまま翼を捻るように動かすとエリアとルルンを吹き飛ばした。


「「きゃあ!?」」


 その威力は二人にとって大したものではないが、やはり巨体から放たれる衝撃は人間にはなかなか打ち消せるものではない。

 それでも二人は地面に叩きつけられるギリギリで踏みとどまりなんとか持ち直した。


「ではこれならどうだ、空の支配者よ」


 先程アリエスが魔術を放った地点に移動していたキラが右手に根源を集めながら、空の土地神(セラルタ)に呟く。それは一瞬にして魔力の流れを歪ませ、圧倒的な存在感を示した。


根源の明かり(フルエテハイトナレ)


 キラの根源は虹色の光を放ちながら空の土地神(セラルタ)の体に叩き込まれる。その攻撃は太陽の光と同化し、さらに煌びやかな光を帯びながら 空の土地神(セラルタ)にダメージを与える。


『ぐがああああああああああ!?』


 これはさすがに大分効いたようで叩き落すまでには至らなかったものの、奴の体のいたるところに傷を作らせていた。


『き、貴様!?その力は精霊女王か!?』


「だったらどうした?お前が妾たちに戦いを挑んだ事実は変わらんぞ?」


『ぬかせ!この程度でくたばるほど柔ではないわ!』


「それじゃあ、余所見は厳禁だな」


 俺はその隙に奴の懐の中に入り込んで剣技を放つ。


黒の章(インフィニティー)


 今はエルテナしか装備していないので不完全な状態にはなるがそれでも俺の剣は目で追えないほどのスピードで煌き、空の土地神(セラルタ)の体にさらなる傷を作っていく。

 そしておまけというわけではないが、拘束用にあの力も使っておく。


戦火の花(カマラチャクラ)


 それはいつも通り無数の花を展開すると、奴の生気を無条件で吸出し生命の時間を削る。


『ぐっ!?な、なんだこれは!?体の力が抜けて……』


 そして次に今まで動いてなかったシラとシルが同時に攻撃を仕掛ける。二人の手に握られている神宝が縦横無尽に空の土地神(セラルタ)の体を切り裂きダメージを蓄積させていく。

 俺はその姿を見ながら、ずっと空中で眺めている血神祖サシリの隣まで移動し問いかけた。


「この程度のレベルの奴にわざわざ警戒する必要はなかったんじゃないのか?」


 考えてみればクビロのときでさえ戦火の花(カマラチャクラ)一つで片がついた。それは油断をさそった不意打ちではあったが、空の土地神(セラルタ)がクビロと同じくらいの強さだとすれば、さすがにこの状況は負けるはずがない。

 だがサシリはいまだに厳しい表情をしており、警戒は解いていない。


「まだよ………。地の土地神(ミラルタ)が影を操れるように…………空の土地神(セラルタ)にも特有の力がある。それがまだ出てきてない…………」


 確かに風は操っているものの、その全容が全て出てきたかと言われればまだ確認されていない。

だが今のこの局面からひっくり返せるほどのことが起こるのか?

俺はそう思いつつ、気配創造をさりげなく発動させ、なにが起きてもいいように周囲の気配を集めだした。


『ちょ、調子にのりおって!!!いい加減鬱陶しいわ!!』


 瞬間、空の土地神(セラルタ)を中心に竜巻が巻き起こり、シラとシルを吹き飛ばす。


「くっ!?」


「ッ!?」


 二人は近くにいたエリアとルルンに受け止められるような形で何とか衝撃を殺し、態勢を立て直しているようだ。


『所詮は人間である貴様らが私に敵うはずがないのだ!』


 いや一部精霊も魔物も混ざってますけどね……。

 俺がそう冷静に突っ込みを入れていると、途端に空の土地神(セラルタ)から今まで感じたことがないほどの絶大な魔力が湧き上がり、奴自身を包み込んだ。


「ようやく……くるみたいね………」


 俺はサシリの言葉に頷くと、もはや無駄にしかならないであろう戦火の花(カマラチャクラ)を解除し、新たな攻撃に備えた。

 確かに戦火の花(カマラチャクラ)は空間を遮断し生気を吸い取るのだが、もはやあのレベルまで到達してしまうと、生気をどれだけ吸ったところでまた溢れてきてしまう。つまり完全な鼬ごっこ状態になってしまうので、余計な魔力を使わないためにも俺は戦火の花(カマラチャクラ)を解除したのだ。

 するとその暴風が次第に薄れ始め、奴の姿が露になる。

 それは先程のような銀色の翼ではなく、金と銀が混ざったような姿に変身しており、黒かったくちばしや爪も赤色に変色していた。

 その体から迸る力はクビロの全力状態と同等かそれ以上の出力が感じられ、もはや俺やキラでなければ対処しきれないレベルの存在に昇華していた。


『フハハハハハ!これで今までより全力で戦うことができる!!どうだ地の土地神(ミラルタ)?その陳腐な体では私に攻撃することも出来まい!』


 空の土地神(セラルタ)はクビロを見下しながらそう呟く。

 しかし対するクビロは至って冷静で、自分が練り上げた魔力を影に変換して攻撃を開始した。


『まだわかっておらんようじゃの。貴様の末路は既に決まっておる。この場にいる最強の存在が動いておらんことに気づいていない貴様ではそれを回避することも出来んわい』


 クビロの攻撃は地上にある影から無数の刃を生成し、それら全てを空の土地神(セラルタ)に放った。

 それは全てではないが空の土地神(セラルタ)の体に突き刺さりダメージを与える。


『所詮は空も飛べぬ蛇ごときに言われる筋合いはない!現に私の力はこの空間を完全に支配している!』


そう言った空の土地神(セラルタ)はさらに風を自身に纏わせると鎌鼬のような刃を大量に生成し、それを全て俺たちに目掛けて放ってきた。

 さすがにこれはまずいな、と判断した俺はエリアやアリエスたちに向けられた鎌鼬を気配創造で作り出した刃で全て弾き落とし、残った刃は空の土地神(セラルタ)に突き刺しておいた。


『ば、馬鹿な!?』


 これは第二神核ですら防ぎきれなかった攻撃だ。

 たかだか土地神に対処できるものではない。

 そろそろ決着をつけようかな、と思っていた矢先。

 とうとう血神祖が動き出した。

 俺の目でも捉えられるかわからないスピードで空の土地神(セラルタ)の前に移動するとその額に静かに手を当て一言呟いた。


煮え立つ血線(ブラッドライン)


 その瞬間、今まで俺たちの攻撃を受けるだけだった空の土地神(セラルタ)の体が一瞬震え、刹那の時の後に全身が真っ赤に染まった。


『ぎゅがああああああああああああああああ!?』


 それはまはや声にならないような悲鳴で、あの圧倒的なまでの風も魔力もその一瞬で消し飛んでしまう。

 よく見ると空の土地神(セラルタ)の体に走っている血管が全て引きちぎられているようだ。それも外部的に剣で切り裂いたようなものではなく、内側から崩れるように破れていた。

 この光景は俺もキラもその他全員、予想してなかったことで目を見開いている。

 だがそれでも空の土地神(セラルタ)はしぶといようで目を半開きしながら空中を浮いていた。


『ぐ、がはっ………。ま、まだ、私は………。ま、負けんぞ……』


 するとその前に立っているサシリが俺のほうに振り返り、目で訴えかけてくる。

 それは止めを俺に任せるというもので、左腕をくいくいと空の土地神(セラルタ)に目掛けて動かしていた。

 ここまでやったんだったら、最後くらい自分でやればいいのに………。

 俺はそう思いながらため息を吐き出すと、一応シュエースト村の病の件がかかってるので大人しくその指示に従うことにした。

 そのままプチ神妃化を俺は自分の体にかけ、転移で奴の頭上に移動するとよく聞こえるように大きな声で最終通告を言い渡した。


「お前の負けだ、空の土地神(セラルタ)。大人しく眠ってろ」


 俺はそれだけ告げると右足を振り上げ、全力でその脳天に叩き落した。

 それは完全に空の土地神(セラルタ)の意識を奪い、とてつもない衝撃と共にカリデラ城下町外にある地面に奴の体をめり込ませる。






 こうして三大土地神の一角である空の土地神(セラルタ)との戦闘は幕を下ろしたのだった。


次回はサシリの過去について書いていきます!

誤字、脱字がありましたらお教えください!

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