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【新装版】 屍喰神楽 ~シニカミカグラ~  作者: 八刀皿 日音
4章 新たな世界へ

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 8.〈星災〉


「……止めはしない。このまま続けていく。

 それが、こうまで言ってくれたアキに応える誠実さだと思うし……。

 そもそも今止めたところで、すでに私の思いや考えは、多くの人の心に蒔かれてしまっているんだ。

 それを、我が身可愛さで投げ出すようなマネはしたくない。いや、してはならない。

 だから、最後まで責任を持って――自ら選んだこの道を歩み、その先を見届けようと思う」



 妹ロナの問いかけに、ランディははっきりと答えを示した。

 そんな兄の、固い意志を秘めた視線を真っ向から受け止めながら――ロナはなおも問う。



「それが――〈星災(せいさい)〉へ至るとしても?」



 その一言が、どれだけの意味を持っていたのか――ランディは眉を顰め、様子を見守っていたアキもまた動揺を露わにした。



「おいロナ、いくら何でもそんな……」


「行き過ぎ、考え過ぎ――って?

 けれど、〈カタス〉がわざわざ止めようとするぐらいなのよ?

 それを撥ね除け、なおも進もうとする先に何が待つか――これを考えない方が、よほど楽観的で非常識だと思わない?」


「……そうだな。ロナの言う通りだ」



 ランディは、静かに一度頷く。



 ――〈星災〉。

 それは、基本的には『自然災害』そのものと同義である。


 唯一、その両者を分かつ要素――それが、『意志』の有無だった。


 この星が、意志を以て起こしたと感じる災害――それを人は、〈星災〉と呼ぶようになったのだ。

 誰に教えられたわけでもなく、誰が言い出したことでもなく……さらに言えば、証拠と呼ぶようなものもなくとも、ただ自然に、いつしか。

 誰からともなく、きっとそうだと感じ、信じ――それが、子に孫にと伝えられて。


 そして、かつての人がその『意志』を感じ取った原因が……『文明への回帰』だった。


 滅亡以前の世界への回帰を人々が望むとき、それを成そうとしたとき――まるでそれを阻むかのように災害が起こり、事実、そうした流れはその都度途絶えることとなり。

 ゆえに人は長い年月の果てに、いつしか古き世界への憧憬を捨て、過去の遺物を忌避し……やがて組織されたカタスの統括の下、変わらず廻る世界を生きるようになったのだった。


 そうして平和に廻る世界が長く続いただけに、今や〈星災〉そのものが、もはや人々にとって遠いものとなってもいるが……。

 そもそものカタスの行動規範と繋がっているように、決して、完全に失われた言葉でもないのである。

 いわばそれは、今の人間にとって、本能的な恐怖の一概念とも言えるかも知れない。



「だけど、それは――〈星災〉が、真実考えられている通りのものであるなら、だ」



 言って、ランディはついと視線を空に向ける。

 ……そこにまさに、この星を見続ける『意志』が存在するかのように。



「いや、あるいは……事実、〈星災〉がその通りのものであったとしても。

 ならばなぜ、我々はそうして閉じられて廻る平和な世界の在りように、違和を感じるのか。このままではいけないと思えるのか。

 ――なおさらに、私たちは……それを見極めなければならないのではないだろうか」



「つまり……兄さんは。

 〈星災〉が起こると分かっていても、止める気はないってこと?」


「それが確実で、なおかつ大規模なものだと分かれば――それはもう、即座に看板を下ろすつもりだけどな」



 視線を妹の方へと戻し……ランディは、冗談混じりに笑ってみせた。

 そうして、すぐに今度はアキに目を向ける。



「そんなわけだが……それでも私に付き合ってくれるか、アキ?」


「問題ないさ。

 それに――ヤバいと感じて逃げるのは、きっと先生より俺の方が早い」



 同じく、気負いの無い笑みを返すアキに頷き――改めて、ランディはロナと向かい合った。



「…………そう」


 そしてロナは、そんな兄たちの応えに一言呟くと――。



「重い荷物を運んできた甲斐があったわね」



 続けてそう告げるや否や。

 いきなり、抱えていた大きな布袋をアキに押し付けた。



「何だよロナ――って、重っ!?

 おい、これホントに何だよいったい!?」


「何、って……わたしの部屋にあった私物の一部だけど?

 ――あ、後でまた残りを回収に行くから、アキ、荷物持ちお願いね」



「! ロナ……まさか、お前……」



 目を白黒させながらのランディの問いかけに……ロナは、ニッと笑って応じた。



「ええ、カタスなら辞めてきたから。これからはわたしも兄さんを手伝うわよ。

 ――ホント、『やっぱりもう止める』とか言われなくて良かったわ」




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― 新着の感想 ―
つまり〈星災〉は、キングボンビー的なもの……ってコト!?
星さん、意志があるっぽいことを人類に知られる! これって、考え方によっては、決められた生き方以外認められない、究極のディストピアですよねw (認められている自由の幅めっちゃ広そうだけど)
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