表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】 屍喰神楽 ~シニカミカグラ~  作者: 八刀皿 日音
4章 新たな世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

113/114

 7.その道の、その教えの、是非


「……気付けば、結構な人が来るようになったなあ」



 50人ほどの聴衆が、空き地から立ち去っていくのを見送りながら……アキは、彼らを相手に自らの思いと考えを語っていたランディに歩み寄る。


 ――そもそもは教師として、子供たちにささやかな知識を教えていたランディ。

 そんな彼が〈新世生命論〉をきっかけに、新たな『人の在り方』についても教え、諭すようになり……。

 やがて、子供たちから伝え聞くその教えに興味を抱き――直接に話を聞いてみたいと彼のもとを訪れる大人たちも、徐々に増えて。

 今ではこうして……手狭なランディの家ではなく、近場の空き地で講演を行うほどになっていたのだった。


 もちろん、そもそもが過去の知識に興味を持つ『変わり者』と知られていたランディである、その言動を〈庭都(ガーデン)〉にとって『よくないもの』として避ける者もいたが……むしろそちらの方が、今のところは少数であるらしい。


 そして――ランディの講義を聴いて、帰って行く人々は。

 その多くが、何かが腑に落ちたような、同時に何かを考え込むような……そんな表情をしていた。


 それを見ると、アキは……大なり小なり誰もが同じだったんだな、と思う。

 誰もが、自分のそれと同じような『違和感』を、心の奥底に隠し持っていたのだ――と。


 ……以前、あの不思議に懐かしい少年が、言っていたように。



「お疲れさん、先生。

 今日も好評だったみたいで良かったよ」


「好評、という言い方が正しいかは難しいところだけどな」


 アキに声を掛けられ、ランディは苦笑混じりに答える。



「けれども、みんなが真剣に耳を傾けてくれるのはありがたいことだ。

 ――それもアキ、君が私に賛同してくれたお陰だよ」



 まだ残っていた子供が、自分に手を振ってくれるのに応じて手を振り返しながら……ランディがそう告げると。


「俺はただ、俺が正しいと思ったようにしただけさ」


 それだって、あの少年が背中を押してくれたからだしな――。

 そんな続く言葉は飲み込み、アキは小さく肩をすくめた。



「だが君が賛同してくれなければ私は、こうして、自分の思うことを行動に移していたかどうか分からない。

 ……それにねアキ、君は君が思う以上に、人を惹きつける人間なんだ。

 そんな君が、私の一番の賛同者として協力している――その事実も大きいんだよ」


「おいおい先生……そんなに俺を持ち上げたって、出てくるのは昼メシ代ぐらいだぞ?

 それも、ごくごくたまに、だ」


 答えてアキは、子供のように快活に笑うと――自らの二の腕をぽんと叩く。


「すべては、先生がちゃんとみんなの――人々のためにって、真摯に向き合ってるからだよ。

 俺が出来ることなんてせいぜい、難癖付けて腕尽くのケンカ吹っかけてくるようなヤツがいたら、ブン殴って止めるぐらいのことさ」



「――なら、近いうちにそっちの方でも活躍するときが来るかもね」



 唐突に投げかけられた、見知った声に二人がそちらを振り返ると……。

 そこには、何の荷物なのか――大きな布袋を抱えた、見知った少女が立っていた。



「「 ロナ!? 」」



「何よ、そんなところまで仲良くお揃いで……妬けちゃうわね?」


 声を合わせて驚くアキたちの様子に、ロナは冗談混じりに苦笑する。



「何でお前、ここに……〈カタス〉の仕事は?」


「いわば、これがまさにその仕事の一環――ってやつよ」



 アキの問いに答えつつ、ロナはランディに目を向けた。

 そして当のランディは、それで妹の言わんとしていることを察したらしく、なるほど、と頷く。



「……私のしていることを、カタスが煙たがり始めた――ということかな。

 その上で、妹のお前を説得に向かわせた、と。

 いずれは、そういう話も出るだろうとは思ったが……」


「思ってたよりも早かった?

 じゃあ、それだけ影響が広まるのも早かった――ってことでしょうね」



 ロナは兄に頷き返すと――そのままアキに視線を移す。



「……っていうかさ、アキ、あなたは〈イクサ〉の方で何か言われてないの?

 兄さんの活動に関わることで、注意とかさ」


「うちの隊長は、ああ見えて大らかだからな……。

 仕事をちゃんとこなして、なおかつ、直接的に人々の生活を脅かすようなマネをしないなら、この程度のことで首突っ込んできたりはしねえよ。

 ……まあ、こうしてカタスが、先生の妹のお前を遣いに寄越すぐらいだ……この先どうなるかは分からんけどな」



 言葉通りならそれなりに大ごとのはずだが、ちょっとした日常の些事のように軽く語って――アキは小さくパキンと指の骨を鳴らす。

 いざとなれば、それこそ先にロナが仄めかしたように、力に力で抗するのも覚悟の上だと言うように。



「おいアキ、君は――」


「今さら『もう関わるな』は無しだぜ先生。

 ……さっき言ったばっかりだろ?

 俺は、俺の正しいと思ったことをやるだけなんだよ」



 ランディが表情を曇らせると――アキは気負い無く軽やかに笑みながら、その背中を叩いた。



「ま、アキ――あなたならそんな風に言うだろうとは思ってたわ。

 ……で、肝心の兄さんはどうする?

 こんなアキを巻き込んででもこのまま活動を続けていく?

 それとも――もう止めにする?」


「私は――」



 妹の問いに、しばしの間を置いて――。

 ランディは改めて、その目を見返した。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
兄妹キャラは、ボンクラさんの作品には欠かせませんからね!
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ