表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新装版】 屍喰神楽 ~シニカミカグラ~  作者: 八刀皿 日音
4章 新たな世界へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

107/114

 1.始まりの本


ただ存在するだけの状態を、生きているとは言わない。

明確な意志を持って『生きて』こそ、人は自らを生きる。

その『生』に、必ずしも『死』の介在は不可欠ではない。

人は、死ぬがゆえに生きるのではない。

自らの道を生きようとするからこそ、『生きる』のだ。




「……R・ウェルズ著、新世生命論――か……」



 石造りの壁と溶け合うように迫り出した木の根……その洞に、抱かれるように挟まっていた古い古い本を、若者はそっと閉じる。


 いつ風化し崩れ去ってもおかしくないほどのその本は、もはやまともに文字を読むことすら出来ないものだったが……彼にとっては問題では無かった。

 それが本であり、記された内容が『事実』として存在するのならば――『詠み取る』ことは可能だからだ。


 そして、仮にそれすら不可能だったとしても……彼にとって、その本は。

 一字一句、内容を憶えているものだったのだから。



「どうです? 何か見つかりましたか?」



 もとはドアにあたる箇所だったらしい空間を抜けて、隣室から、彼と同年代の女性が姿を現す。

 その彼女に、彼は手にしていた古い本を軽く掲げてみせた。


「それは……もしかして?」


「恐らくはね。

 もっと詠み解いてみなければ、はっきりとは分からないけど」


「なら、やはりここが……」


「ああ。

 『記憶』から推測される、〈始まりの地〉で間違いないだろうね――」


 若者は、愛おしむように古い本の表面を撫でる。


 ――これを読んで、受け継がれて、根付いていた……〈想い〉。

 人々の、自らの中に確かに存在する『それ』への気付きが。


 きっと、今の我々に繋がっているのだ――と。






     *     *     *



 ――彼がその『本』を見つけたのは、まったくの偶然だった。


 地下の食料貯蔵庫を拡張しようと土を掘り進めた結果発見した、数千年前のものと思われる小さな『部屋』。

 もはや遺跡と呼ぶべき、そんな果て無き歳月を閲した部屋の一角に……その本はあったのだ。


 みだりに過去の遺物に触れるべきではない――それが、今を生きる人々の常識だった。

 しかし彼は、その本に手を伸ばした。

 生来の探究心を以て、時間を掛け、失われた言語で記された本を読み解いた。


 そして、彼は気付いた――気付いてしまった。


 そう、教え諭され、学んだというよりも……それはまさに気付きだった。

 気付いたのだ、天啓の如くに。

 ――自らの内に、連綿と受け継がれてきたものが、確かにあることを。


 それは――

 どれほどの歳月がかかろうと、正しく発露させなければならないものだった。

 このまま眠らせていてはならないものだった。


 ならばこそ。

 そのために、すぐにでも行動していかなければならないのだ――と。


 奇しくも、己と同じ名を持った本の著者に……その背中を押されるように。

 今の世界では、『変わり者』と同義である『学者』を自称する若者――ランディは、自らの決意を固めたのだった。




 そうして、世界は、人間は。

 再び、新たな始まりの一歩を、踏み出していく――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>人は、死ぬがゆえに生きるのではない。 >自らの道を生きようとするからこそ、『生きる』のだ。 ボンクラさんらしい一文ですね。
いやはや、なかなかの年代ジャンプ幅が来ましたな。 ホモサピエンス滅んで次の人類になってそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ