表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
70/122

勘違いなさらないでっ! 【50話前半】

 体調不良で遅れました。

 すみません。しかも前半。


抜け字発見!! 執事のクオーレです。修正しました(9.17)。

 家に戻っても、メデルデア国からのお客様はなかった。


 それから比較的穏やかな日々が三日ほど続いた。


 ライルラド国の陛下の祝典は滞りなく終わり、各国からの来賓客も次々に帰路についている頃、我が家にはまだサイラスがいた。


「ねえ、いつまでいるの?」

 アシャン様とお茶をしていたら、ひょっこりやってきて席についたサイラスに、わたくしは「邪魔」といわんばかりに眉をひそめる。

「ん、そうだなぁ。明後日には帰らないと、マディウス兄上から小言が届くだろうな。お前も来るか?」

「ちょっと前に帰ってきたばかりよ。行くわけがないじゃない」

 バカバカしい冗談、とわたくしはお茶を飲む。

 そうだな、と軽く笑いつつサイラスは、ちまちまとクッキーを食べるアシャン様へ言う。

「アシャン、お前も帰るんだぞ」

「え?」

 まったく帰る気がなかったらしいアシャン様が、ぱちっちりとその三白眼気味の大きな目を見開く。

「……嫌」

 スッと目を細めて視線をクッキーに戻すアシャン様に、サイラスがわざとらしくため息をついて肩をすくめる。

「アシャン、俺ができないのにお前が居続けることはできないだろう?」

「あら、アシャン様なら問題ないわよ。なんだかんだでナリアネスを始め、トキもアンバーもよくやってくれているわ。連れて帰るなら、あのティナリアに好かれようとしている勘違い男を連れてってちょうだい」

「そんなのがいるのか?」

 ちょっと驚いたように、サイラスはアシャン様の後ろに控えるナリアネスを見る。

 申し訳なさそうにナリアネスは頭を下げ、肯定した。

「無理があるだろう。確かティナリアの好みは鍛えた体の持ち主ではなかったか?」

「……ええ、まあ、そうね」

 姉としても肯定しづらいが、ティナリアの理想という男性像は父に近いものがある。父が知ったら大喜びして泣きそうだけど、顔に関しては笑顔を見せてくれるならと許容範囲が広い。

 ティナリアに恋焦がれている貴族男性には悪いが、細身を美徳とする傾向の強いライルラドの貴族男子には、なかなか候補がいないのが現状ね。

「ふぅん、強化訓練隊にでも推薦してやろうか。一年持つならそれなりの根性と肉体は得られるだろう」

「余計なお世話よ」

「一年持てば、の話だがな」

 ニヤニヤ笑うサイラスの顔からして、その強化訓練隊とは根性がなければ勤まらないところみたい。たぶん、あのシーゼットとか言う男は……無理ね。

「で、アシャン。お前の話に戻るが、母上からも期限を設けられているはずだろう?」

「え? そうなんですの?」

 サイラスと同じようにアシャン様を見れば、ばつが悪そうにそっと目線をそらす。

 そんなわたくしを見て、サイラスが呆れたように「アシャン」とつぶやく。

「お前、シャーリーにも言っていなかったのか」

「わたくしがいただいた手紙にも、それらしいもの書いていなかったわ。だからてっきりお迎えがくるのかと。まさかお迎えがあなただったなんて」

 なんだかアドニス様とやらが急に来られなくなったのも、裏で王妃様が仕組んだんじゃないかって思ってしまう。

「じゃあ」

 諦めがついたらしいアシャン様が、じっとわたくしを見る。

「最後。パーティーがしたい」

 引きこもり症のアシャン様からのおもわぬ提案に、わたくしやサイラスはおろか、エージュも素で驚く。

 そんなわたくし達を見回して、少しうつむき加減で小さくつぶやく。

「……急、過ぎた」

 自分でも無理なこととわかっていたらしいが、人見知りのアシャン様がパーティーがしたいなんて驚きだわ。

 もしかしたら、昨夜夜会に出かけたわたくし達を、本当はうらやましかったのかしら。

 着替えたティナリアを褒めて、わたくしの家族を見送ってくれたと聞いたのに。

「アシャン、それが本気ならイズーリに戻って夜会に出席すればいい。お前はデビューだけすませて、それっきり出ていないからな。まだ少し出る機会があるはずだ」

「……」

 アシャン様は「そうじゃないんだけど」とでも言いたそうな複雑そうな顔をサイラスに向け、何も言わずにまたうつむいてしまった。


 その後はたわいもない話をして終わったのだけど、わたくしはずっと考えていた。

 アシャン様がしたいと言った大事な一歩だし、このままでいいのかしら?

 おそらく明日の晩餐はお別れということで、いつもより豪華になるだろう。こういうことに関しては、父より母に相談したほうがいい。

 わたくしはさっそく母に相談した。



「まあ、姫様がご自分で?」

 母も目を丸くして驚く。

「そうねぇ。失礼にならなければ、ホームパーティーくらいなら間に合うんじゃないかしら? 豪華絢爛な夜会をご覧になっていらっしゃるから恥ずかしいけど、姫様の夜会出席のための訓練ってとこかしら」

「訓練、ですか?」

「ええ」

 にっこりと母はうなずく。

「姫様がパーティーに興味を持った、ということはすばらしいことよ。イズーリ王妃様からのお手紙にも、姫様の人見知りをとても気にしているようなことが書いてあったわ。

そんな姫様がご自分でおっしゃったのだから、まずは身内だけでやりましょう。パーティーや夜会はちょっと人間関係でいろいろあるけど、楽しいこともあるって知っていただかないと」

 母の目がキラキラと輝きだす。

 すでにどう言ったものにするか、その手配は、と頭の中で組み立てられているのだろう。

「そうだわ。ちょうどいいからあなたも教えてあげるわ」

「え?」

 スクッと立ち上がって近づいてきた母が、わたくしの腕をとる。

「はい、立って。これからクオーレ(執事)と打ち合わせよ。パーティーのテーマは、そうねぇ。『夢』だわ。かわいらしく、なんだかすぐにダンスしたくなるようなものにしましょう。明日の夜のお天気はどうかしら。中庭を開放して奥行きを出したいわ」

 楽しそうに語り出した母から有無言わさず立たされると、そのままズルズルと引っ張って行かれて打合せに参加させられた。


「楽団の手配と曲目ね。あとは飾りだけど間に合うかしら」

 母は時間がないからと、みずからスケッチブックに飾りのデザインを描いていく。もちろん専門ではないから「こうして欲しい」という要望を書いていくことがほとんどだけど。

 そばで聞いてだいたい母のイメージがつかめていたわたくしに、飾り付けのすべてがまかされることになった。

「これはわたくしのイメージだけど、あなたがアシャン様のためを思って見た時に、なんだか違うと思ったら変えてちょうだいね。誰かをおもてなしする、大事なことなんですから」

 そう言って母は料理と食器の打ち合わせへと話題を変え、料理長と議論し始める。

 母のイメージは広間が『春』そして中庭が『秋』。

 大騒ぎのような部屋の中に、アンが出入りの花屋を連れてやってきた。

「急がせて悪いわね」

「いえ、ご用命とあらばすぐにかけつけ致します」

 細身の中年の主人がにっこりと笑う。

 さっそく母の描いたスケッチを手に、花屋の主人と広間へと向かう。

 今日は天気がいいので、パーティー当日のように中庭へ抜ける窓を開放していた。

 スケッチを見せながらいろいろ説明していると、広間は滞りなくすんだが中庭にはなんとなく物足りなさを感じた。

 花屋の主人が簡単に花の種類や大きさ、色なんかを書いているんだけど、アシャン様を思い浮かべると何かが足りない。

「……何かしら。何かが足りないわ」

 うーん、と腕を組んで考えてみる。

「実をつけた枝を飾るのはいいのだけど、何か別のものも飾れないかしら。お招きする方がふわっとしたものがお好きなの」

「ふわっとしたものですか?」

 花屋の主人も考え出す。

「そぉですねぇ。小さな編みカゴに綿をつけたものを作って枝にいくつかつけましょうか?」

「綿?」

「はい。ちょうど収穫時期ですのですぐに手に入ります」

「綿って植物よね? それをそのまま飾れないかしら」

「綿、をですか」

 花屋の主人はちょっと考えて、中庭とスケッチを交互に見た。

「綿自体は正直飾り物としては扱いませんが、枝を色紙で覆ってみた目を良くすればどうにかなるかと。ただ、白い綿が雪に例えられるかもしれません」

「そう。じゃあ中庭の『秋』を『秋から冬』に変えてちょうだい。そして広間の『春』へつなげて」

「かしこまりました」

 そう言って花屋の主人は大慌てで帰って行った。

「さて、次は、と」

 楽団との打ち合わせは母と一緒にとなっているから、と考えていたら、近くに控えていたアンがそっと話しかけてきた。

「お嬢様、招待状はどうなさいますか?」

「招待状? 身内だけでするのだから考えていなかったわ」

 必要かしら、と考えてふとこのパーティーの準備自体がアシャン様に言っていないことだとようやく気がつく。

 それに、たとえ身内の誕生日パーティーだろうと、両親はわたくし達に招待状を送ってくれた。

 幼かったわたくし達は、まるで大人の夜会に招待されたかのようにはしゃいだ思い出がある。

「……急いで町に行くわ。あと、マニエ様をご招待できないかしら。アシャン様とも面識があるし、お話があっていたもの」

「それは喜ばれると思います」

「お母様に言ってくるわ!」

 わたくしはさっそく母に話し、了解を得て急いで町へと向かい、こった模様の施された夜会向けの物ではなく、あえて貴族の子どもの誕生日パーティーに使用されるようなかわいらしいものの中から選んだ。

「羊柄があってよかったわ」

 ピンク色の厚手の紙の縁は一定間隔に切り取られ、真ん中にはさんである白い紙が羊柄となって見えている。

 濃い目のワインレッドのリボンがついたピンクの封筒も準備し、母には楽団との打ち合わせには出られないと伝えて招待状作りに没頭した。

丁寧にかき上げていったのだけど、ちょっと納得いかないものもできた。

まあ、それはサイラスにあげることにする。サイラスには失敗した物で十分だわ。



 読んでいただきありがとうございます!!


 ツイッターではつぶやいているんですが、なんか原因不明の体調不良に悩まされております。全身の倦怠感と痛み、食欲不振。

 血液検査までしてるんですけど、炎症反応だけがやや高い。

 ナニコレー!? です。


 そんな中ですみませんが、50話前半投稿です。

 前話で言っていた、シャナリーゼにケンカ売る人は……次話になりそうです。

 期待していた方々、ごめんなさい。


 とうとう先週9/12(土)に【勘違いなさらないでっ!】③巻が発売されました!!

 一緒に発売となった【お前みたいなヒロインがいてたまるか!】白猫様は秒速重版!!  

 う……うらやましいぃっ!!(←本音www)


 いやいや、お前は更新頑張れよ、ですな。

 とりあえず ツイッターは更新してますんで、よかったら遊びに来てくださいね。さあ、連休中に後半いくぞー!!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ