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小話 ~ サイラス、プッチィとクロヨンと再会する ~

 ご無沙汰しております。

 本編ではありませんが、前話の閑話的な話としてお楽しみいただければと思います。


 今日も元気にランラララーン♪ と、ごろごろ転がっていたら、突然ドアが開いた。

 ボクもクロヨンもびっくりして「なにごと!?」とばかりに、毛を逆立てて振り向いたら、ニンゲンのオトコが二人入ってきた。


 ん? 一人は座ってるなぁ。でも、イスじゃないね。アレ何? 両脇にでっかい輪っかがついてるんですけどぉ。


 ボク達は顔を見合わせる。

「お、いたいた」

 座っているオトコがなんか言った。

 うわ。目つき良くないね。

「なんかびっくりした顔して固まってるぞ」

「ウィコットは、もともと驚くと固まってしまう動物です。サイラス様の私邸にいるウィコット夫婦は珍しくあなたに警戒心がありませんが、だいたいこれが普通です」

「ふーん」

 とくになんとも思っていないらしく、座ったオトコ(サイラス?)のイスが動き出す。


 こっこわっ!! 勝手に動き出したよ!!


「フッシャァアアアア!!」

「!」


 威嚇したボクの横で、クロヨンがビクッと体を震わせてボクを見る。

「みぅう『どうしたの、プッチィ』」

「みゃうううっ! 『だってこいつら怖い!』」

「みぅう『うーん。でもこのヒト見たことあるよ』」

「みう? 『えー?』」

 ボクは胡散臭そうにニンゲン達を見る。


「おい、エージュ。ちび(イチ)がすごい目でこっちを見てるぞ」

「本当ですね。まるでシャナリーゼ様が乗り移ったかのような疑いの目です」

「あいつ……どんな飼育してるんだ」

「お部屋を見る限り、大変丁寧にされているようですが。ウィコットも飼い主に似るのでしょうか」

「似るといっても、ここ数か月だぞ」

「さすがシャナリーゼ様。影響力が半端ありませんね」


 こそこそとボクの睨みを恐れてニンゲン達が話している。

 時々シャナの名前が出るんだけど、こいつらシャナの知り合いなの? 目つきが良くないオトコでいいヒトはシャナのお兄さんくらだと思うけど、姿違う気がする。ボクらウィコットから見ればニンゲンあんまり大差ないよね。髪の色とかフクとか声くらいかな。あ、でもこいつらシャナのお兄さんじゃない。だってニンジン持っていないから(絶対的自信)!


「フッシャアアアア! 『やっぱり敵!』」

 もう一度威嚇する。

「うぉ。チビ一がやけに攻撃的だな」

「本当にシャナリーゼ様そっくりになりましたね」

「今度髪飾りを贈ってみるか。こいつのリボンとチビ二の首輪もおそろいで」

「ついでにご自分のチョーカーもお作りになりますか? 家族のようにお揃いに」

「バカ言え。 俺は飼い主がいい」

「…………(はぁっ)」

「……お前、今心底呆れただろう。真に受けるな」

「いえ、わかっておりますよ(半分本気でしたでしょ)」


 またなんか話している。

 よし、いまのうちに――――って、あれ? クロヨン!


 逃げようとしたら、クロヨンがトコトコとあいつらに近寄って行っちゃった。

「みぅうう! 『危ないよ!』」

 ボクが注意すると、クロヨンはちょっとだけ振り返ったけど、結局そのままイスのオトコのそばまで行っちゃう。


「みぅ」

「お、チビ二。久々だな」

 手を伸ばし、グリグリとクロヨンの頭をなでる。

 なでられたクロヨンは気持ちよさそうに目を閉じる。

「みぅ『ねぇ、プッチィ』」

 なでられながら、クロヨンが振り返る。

「みぅううう、みうみう『このヒト前のご主人様だよ』」

「み? 『え?』」

 ボクの頭にハテナマークが咲き誇る。

 そりゃあ、クロヨンは頭がいいけどさ、ボク区別つきません。

「みうう、みみ『ほら、オトーサンの匂いがする』」

 そういってクロヨンが近づいたのは、イスオトコの足元。

「みぅう!? 『本当!?』」

「みう 『うん!』」

 いくらボクでも家族は覚えているもんね!

『オトーサンの匂い』に負けて、ボクもイスオトコに近づく。


 ……あー! 本当だ!


「……おい、エージュ。こいつら俺の足というか靴を嗅いで離さないんだが」

「湿布臭いんじゃないですか?」

「お前……まだ根に持っているのか」

「いえいえ、根になど持っておりません。ただ、指揮官である上に、王族としての立場をお考えになって行動して欲しいと常々思っているだけです。上官を危険にさらした部下のその後もお考え頂ければと思っておりますが、いえ、なにも今更言うことはありません」

「…………」


 ビクッとしてボクは顔を上げる。

 なんかね、今ものすごい怖い感じがした。


「フシャアアアア!」

「「…………」」

 だから、とりあえず威嚇しておいた。

 クロヨンは「オトーサンだぁ♪」と気にしてなかった。


「こいつ、自分から寄ってきたくせに怒ったぞ」

「ますますシャナリーゼ様そっくりですね」

「……こいつ一足先に持って帰ろうかな」

「いけませんよ。男が一度渡したものを返せなんてみっともないです」

「返せではない。どうせ近い将来イズーリに来るんだ。ちょっとくらい早まってもいいだろう」

「先に手元においてシャナリーゼ様を連想するんですか?」

「嫌そうに言うな。気持ち悪い男みたいじゃないか」

「……いえいえ、なんとも思っていません」

「目をそらして言うな」

「フーッ!」

「そう警戒するな、チビイ……いや、プッチィ。エージュ、あれを」

 そう言ってイスオトコは、後ろに立っているオトコから何かをもらう。


 ……あれ? とってもいい匂いがする。


 クロヨンも気が付いて、じっとイスオトコを見上げる。

 欲しいって体全体で思って、ボクは後ろ足で立ってイスオトコにおねだりする。

「みうぅ」

「半分こ、な」

 そう言ってイスオトコがくれたのは、ボクらウィコットの大好物シュシュマの実!

「「みぃううう♪」」

 しかも粉じゃなくて実が半分。

 口の中でガリガリ噛んでご機嫌なボクとクロヨン。


 ――――数分後、お腹出してごろごろ転がりまくるボク達がいました。


「……シャナリーゼも酔わせると、少しは甘えてくれるだろうか?」

「残念ながら、ジロンド一族は酒豪の家系のようです。そして冗談でもそのような妄想はおやめください。王妃様を通り越して、マディウス皇太子殿下からお叱りを受けますよ」

「なにも既成事実を作ろうというわけじゃない。酔った女をどうこうする趣味はない」

「ただ甘えたシャナリーゼ様を見て、抱きしめて一緒に寝たいとでも?」

「…………」

「…………(反論なしですかっ!)」


 そこへドアがノックされる。

「失礼いたします。先触れで、お嬢様方がアルシャイ家別邸から出立したと報告がありました。それから、旦那様もお帰りになりました」

「では行くか」

「そうですね」


 そうしてパタンとドアが閉められる。


 ボク達はしばらくごろごろ転がり、幸せな気分のまま眠りにつく。


 ――――その後、シャナが絶叫するまで寝てた。


 いやー、シュシュマの実ってサイコー!!


 サイラス、とうとう「イスに座った男」から「イスオトコ」に省略されました。

 プッチィのいい加減はどこでも発揮されます。

 ガタイのいい目つきの良くないニンジン持った金髪オトコ=シャナのお兄さん。

 こんな簡単な式です。

 サイラスは出立前にプッチィとクロヨンの家族をしこたま撫でまわしてきました。だからなんとなく靴に匂いが……ということでw。

 

 別話を優先して書いており、大変申し訳ありませんが、このたび小話を連載させていただいております。

 読んでいただきありがとうございます。

 クスリと笑っていただけると幸いです。


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