書籍化お礼小話 ~ プッチィの日記 0 ~
本編更新となりませんでした。
申し訳ありません。
書籍発売日間近ということで、お礼の小話を投稿いたします。
☆1・ボクの疑問!
ボク、プッチィ。おとーさん達と暮らしていた時は『チビ一』て言われてた。クロヨンは『チビ二』で、妹は『チビ三』。
今日も窓からお日様が入る温かい場所に寝転がり、日向ぼっこをしている。
でもね、クロヨンはいっつも先に温まって、早々に日陰に入るんだ。ボクはまだ余裕だけどね。
だらーん、と寝そべって、今にも溶けちゃいそうなくらい幸せなボクだったけど、一つ疑問があるんだ。
『ねぇ~、クロヨ~ン』
『なに?』
しっぽのお手入れをしていたクロヨンが、手をとめてボクを見る。
『ボク、このまま寝返りしたいんだ』
『すれば?』
『頭のコレ、邪魔なんだよねぇ』
『ああ、ソレかぁ』
言えばクロヨンもすぐ納得してくれる、邪魔なコレ。
表紙を見てくれたヒトはわかるだろうけど、ボクの頭の後ろには、でっかいリボンがついている。
……ボク、オスだよ。
クロヨンにもリボンがある。
でもそのリボンは首をくるって回って、首の下で銀の飾りでとめた青い小さなもの。リボンというより、紐。
ボクの顔の周りの毛が長いのが理由みたいなんだけど、コレ、寝返りすると邪魔なんだよねぇ。
毎日リボンをといて、ブラシをかけてくれて、また違うリボンで結ばれる。
これっておかーさんと妹がしていたから、メスがするものだよね?
……ボク、オスだよ? (二回目)
『プッチィはリボンたくさん持ってるよね。よかったじゃん』
クロヨンは青と黄色の紐を持っている。ボクはもっとたくさんのリボンを持っている。
『交換しようか』
『しなーい』
褒めときながらいらないって――クロヨンのバカ!
『こっち来い、クロヨン!』
『わぁ! 嫌だ、暑いんだってば!』
怒ったボクは、嫌がるクロヨンを日向に引っ張り出す。
そしてそのままクロヨンの上に、どーん、とのしかかってやる。
『重い!』
下でクロヨンがジタバタもがくけど、ボクは気にしなーいもんね。
その後、ぐったりしたクロヨンを、シャナとアンが優しくなでたり、何かを持ってきて体に当てたり、お水まで飲ませていた。
その間、ボクはぽつーん、と取り残されていた。
なんか、じぇらしぃいい!
。・☆。・☆。・☆。・☆。・☆
☆2・シャナの妹ってコワい!
「プッチィはどうして、ヌイグルミをボロボロにするのが早いのかしら」
シャナが耳のとれたイヌのヌイグルミを手に、うーん? と首を傾げる。
「よっぽどヌイグルミが好きなのですねぇ。仲間だと思ってじゃれているのですよ」
違うよ、アン。
「そうかしら? むしろ恨みがこもっている気がするけど。まだ根に持っているのかしら」
正解だよ、シャナ。
「まさかそんな。ウィコットは忘れっぽい動物、とサイラス様からいただいた飼育書に書いてありましたよ」
「そうよねぇ」
……甘いね、ニンゲン。
いくらボク達でも、あのコワさは忘れない。
ボクもクロヨンも、実はヌイグルミがコワい。
シャナ達が持ってくるのは小さいから、ついつい仕返ししてしまうんだ。
――そう。コワいのはシャナの妹が持っている、あの大きなヌイグルミ。
ここに来てすぐだったけど、シャナの妹が一人でやってきたんだ。
ボクとクロヨンは、いつものように興味津々で近づいてみた。
「まぁ、お姉様の言うとおりね。本当にヌイグルミのようにかわいらしいわ」
まったくコワさのないそのヒトは、笑顔でボク達をなでてくれる。
シャナとは違ったほんわかしたヒトで、ボクとクロヨンはすっかり気を許していた。
「そうだわ。ちょっと待ってて」
そう言って一度出ていった。
『なんだろう。ニンジンかな?』
『プッチィは食いしん坊だね。でもそうだといいね』
ボク達はワクワクして待っていた。
やがて戻ってきたシャナの妹は、ボク達の期待を盛大に裏切ったものを持ってきた。
「じゃーん! 特大ウサギさんよ。背中に乗せてあげるわ」
『『は?』』
あっという間に、ボク達は大きなウサギのヌイグルミにくくりつけられる。ちなみにボクが背中で、クロヨンが前。
「はーい。ぴょんぴょん、ぴょーん!」
シャナの妹がボク達をくくったヌイグルミを、大きく上下させる。
「「みぃいいいい!?」」
ボク達は悲鳴をあげる。
コワい! 足が『ユカ』についていないのに、目の前の景色がガクガク揺れる!
笑顔のシャナの妹は、全然手を休めない。
「まぁ、楽しいのね」
「みぃいいい! 『ちがぁうう!』」
良く見て、ボクのしっぽ、ボン! てなっているから。クロヨンだって――ん?
静かなクロヨン。
もしかして、シャナの妹の言うとおり楽しんで――なかった! 目が変! 口も半開きだし、手足がぶらーん、となっているし。
「あら? 寝ちゃった?」
手をとめたシャナの妹が、ふふって笑う。
ちっがぁあああう!
気絶しているんだよ! もう、あっち行けぇえええ!!
「みうみぅうう!」
気絶したクロヨンを巣穴に寝かせているシャナの妹に、ボクはヌイグルミの背中から怒って抗議する。
「ふふ、大丈夫。次は逆ね」
全然聞いてない!
今度はボクの背中に、ヌイグルミがくくりつけられた。
だらりと顔と長い耳がボクの顔の横に垂れ下がり、黒い目が不気味にボクを見てる。
「ふみぃいいいい! 『ぎゃああああ!』」
ボクは一目散に走り出した。
「あら、楽しそう」
そんなわけないだろぉおおおお!
いくら走っても、ヌイグルミは振り落とされてくれない。
ボクが涙目になった頃、シャナが急いでやってきた。
「何してるの、ティナリア!」
「遊んでますの。あんなにはしゃいで、ふふふ」
「怯えてるじゃないのっ!」
ボクはシャナの胸に飛び込んだ。
すぐにヌイグルミを外してもらい、ボクは必死にシャナにしがみつく。
シャナの妹なんか大っ嫌いだぁああああ!!
この日、ボク達は外見に騙されてはいけない、と身をもって知った。
――時々忘れちゃうけどね!
読んでいただいてありがとうございます。
以前絵を頂いた、天満あこ様のウィコットは猫のような感じでしたが、書籍のウィコットは犬のようだと思いました。どちらのプッチィもヤンチャそうです。
リボン……(詳しくは活動報告にて)日暮様の表紙の絵を頂いた時、一番目に付いたものです。ナイスです、日暮様! ありがとうございます。




