勘違いなさらないでっ! 【17】
お久しぶりです。
私事でてんやわんやしてました。
24日夜に出発した馬車は3台。護衛が10人ほど騎馬で同行した。
早掛けに急いでいたので、順調に行けば明後日の夜にはイズーリの王都へ着くとライアン皇太子は言った。
だが、実際に着いたのは27日の昼過ぎだった。
「ご、ごめんなさい」
何度も聞いた弱弱しいレインの謝罪。
「大丈夫だ、ちゃんと着いた」
必死に慰めるセイド様。
それを見守るライアン皇太子とわたくし。
予定が半日遅れた理由は、言いたくないがレインの体調不良だった。
わずかな休憩と馬を途中で替えて移動するという強硬手段で、本来は4日程度かかる道のりを短縮したのだ。
新婚旅行で遠出の経験はあっても、それはゆっくりのんびりな旅行。
馬車の中で好きに寝れるとはいえ、たえず揺り動く馬車で眠れず、とうとう酔ってしまったレインを置いていくわけにも行かなかった。
仕方なく護衛の1人を先にイズーリへ向かわせ、1日の予定変更を申し入れたのだ。
あ、わたくし?
ほほほ、しっかり寝てましたわ。
話し相手として同行したレインだったが、まさかのダウン。男女で分かれて乗っていた馬車だったが、レインが倒れてからはライアン皇太子1人と、セイド様とレインとわたくしが一緒という形になってしまった。
休憩のたびにライアン皇太子は必死にしゃべっていた。
セイド様はレインの看病で忙しいので、護衛の騎士とか、わたくしとか、わたくしとか、わたくしに……。
何度か無視して遠くを見ていたが、変わらずしゃべり続けるライアン皇太子を見て、わたくしはリシャーヌ様も実は大変かもしれないと思った。
さて、初めてやってきたイズーリだったが、最初はのどかなどこにでもある農園風景だったりしていつ国境を越えたのかわからなかった。
だが、夜が明けて町というものを見たとき違和感があった。
お邸のような高さの壁がぐるっと町を囲っていたのだ。
そのまま通り過ぎて王都・アマスティへ向かったのだが、ここも遠目から見て違和感が絶大だった。
緑の農耕地の中に佇む灰色の岩、と思ったのがアマスティを取り囲む外壁だった。
しかも3重構造。
外壁のあちこちには大砲の収納が可能な穴があり、今は緊急時ではないので閉じていますとセイド様から聞いて驚いた。
分厚い壁を2つ潜り、大正門と言われる内門を潜りようやく広がった町並みは大勢の人々が行き交う、活気ある商業区が広がっていた。
大正門から白い道幅の広い道はアマスティの中心にある王城へ繋がっているそうで、こうした道幅の広い王城へ繋がる道は3本あるそうだ。
王城は更に白い城壁に囲まれていた。
そして全体的に平べったく見えた。
数階しかないような高さしかなく、広く大きな半円状の屋根が覆っており、それを背の高い塔が5本囲むようにそびえていた。華美な外見よりも機能性を重視しているといわれる話を聞いて、そのまま納得とうなずいた。
そんな王城の正門をくぐって、馬車を止めた大広間で冒頭の夫婦はお互いを慰めていた。
もちろん非公式とはいえ、ある程度のお迎えがズラリと両側に並んでいます。
あの、そろそろ立ちません?
で、そろそろ周り気づきましょうよ。
わたくしが冷たく視線を送ると、びくっとセイド様が小さく震えてこっちを見た。
「あっ」
マヌケな声が出たのは聞かなかったことにします。さっさとお立ち下さい。
周りに人がなければ、顎でくいっと指図してたかもしれませんわ。
もしくはあの靴に履き替えて足蹴にしてやります。
ようやく立ち上がった2人を引き連れ、ライアン皇太子を先頭にわたくしが続き、セイド様とレイン、そして護衛から2人が選ばれ入城した。
ちなみにお兄様は選ばれてなかった。さすがに縁故は通用しない。
当初の予定ではなんとか公爵という方のお邸に入り、そのままそこで登城準備をして朝イズーリ王室の皆様と拝謁するはずだった。
どうぞこちらへ、と急いで通された部屋で着替え、髪を結いなおす。
まだ少し顔色の悪いレインはいつもより明るいチークで誤魔化し、わたくしはなぜかサイズぴったりに用意されていたドレスを押し付けられ、さらに髪に飾りをつけようとするメイドをどうにか断って立ち上がった。
青紫のドレスはシンプルながら、光の当たり具合で黒く見える不思議な色合いだった。
この国でサイズを測らず作れると言ったら、あのマダムの店しかない。サイラスは怪我をしたと聞いたが、指示をだせるくらいなのだろうか。
少しだけホッとし、わたくしは謁見の間へと案内された。
大きな円形状の部屋が謁見の間だった。
毛の長い赤い絨毯が敷かれ、奥の数段高い位置には国王と王妃が座っており、その横に若い男性の姿があった。
天井から壁伝いに大きなタペストリーが飾られており、その前に座る国王と王妃が立ち上がった。
「どうか楽に」
国王の言葉に、ライアン皇太子を始めとするわたくし達はゆっくりと顔を上げた。
あらまぁ、というのがわたくしの感想。
黒髪で鍛えているのだろうがっしりとした体型で、キリッとした眉と口ひげの似合う国王陛下。
栗色の長い髪を真珠のネットで覆い、慈愛のある微笑を絶やさない美しい王妃。
国王陛下に良く似た顔立ちで、長い黒髪を緩く束ね黒い瞳の上背のある優しい騎士のような王子。
彼らにあの凶悪な目つきはなかった。
むしろあるのは優しさに溢れるものだ。
おかしいわね。サイラスは兄王子達と同腹なはず。
彼の目つきはどこからの遺伝だろうか……。
わずかに視線をそらしたまま、ライアン皇太子の挨拶を黙って聞いていた。
やがて自己紹介が始まり、王妃の横にいるのは世継ぎの長兄王子マディウス様とのことだった。
「遠路来て頂いてありがたいわ。早速サイラスの部屋へ案内させるわ」
悲しげに言った王妃様だったが、なぜかハンカチで目元を拭きながら値踏みされるように見られているような気がした。
そしてあぁ、と気がついた。
……ごめんなさい、王妃様。
こんな凶悪な目つきの娘に末息子が求婚しているなんて、本当は卒倒しそうなくらいなんでしょうね。大丈夫ですよ。息子だけでも凶悪な目つきなんですから、孫まで凶悪な目つきが遺伝しそうな妻なんて絶対反対ですよね。がんばって反対なさって下さい。応援してます。
おそれいります、と頭を下げつつ心の中でしっかり王妃様を応援しておいた。
ついでにいえばどんな女かもご存知のはず、とわたくしは無表情のまま黙っておいた。
本当ならここで国王や王妃様に目線は合わせないにしても、謙虚さなり頬笑みなりを浮かべてよい印象を植え付けるのが正当なのだろう。
だが、あいにくとそういう器用さはない。
わたくしが謙虚であろうとすれば何かを企み、微笑めばそれは誘っているのだといわれている。
ようするにやるだけ印象が悪くなる。
だったら無表情が1番だ。
早々に終わった国王陛下との謁見。サイラスが養生しているという部屋へは、マディウス皇太子が自ら案内してくださった。
無言で進む5人と、謁見の間からイズーリの近衛3人が増え10人で歩いて行く。
ふと丸い窓から外を見たとき、わたくしはハタッと違和感を覚えて立ち止まった。
わたくしの後ろにいた騎士からカチャリ、と甲冑の音が止まる。
「どうした、ジロンド嬢」
ライアン皇太子も立ち止まって振り向く。
「あ、いえ、なんでもありませんわ」
と、いいつつわたくしは外から目が離せなかった。
なにかしら、とわたくしが違和感を必死で探そうとしていると、軽やかな声が前からかけられた。
「どうやらお気づきになったようだ。初めて来た女性が気づくなんて初めてですよ」
そう言われて、わたくしは気がついた。
視線を外からマディウス皇太子へ向ける。
「上がりましたのね」
微笑が深くなり、どうやら肯定ということらしい。
「え?え?」
レインは何がなんだかわかっていない。
ライアン皇太子とセイド様も黙っているから、多分彼らはこの仕組みについて知っているのだろう。
階段は使わなかったが、おそらくこの廊下はほんの少しずつ傾斜しているのだ。だから歩いているといつの間にか上や下の階になっているのだ。謁見の間に入る前には階段もあったが、あの階段が今いるこの階に繋がっているかは不明だ。
「足を止めてしまい申し訳ありません」
「いえいえ、止める価値は充分にありましたよ」
マディウス皇太子の言葉がどういう意味かわからないまま、再びわたくし達は歩き出した。
やがてたどり着いた両開きのドアの前には、騎士が2人並んで立っていた。
マディウス皇太子の姿を確認すると、彼らはサッと足を広げた姿勢からピッと背筋を伸ばして敬礼した。
「変わりはないか?」
「はっ、ございません!」
マディウス皇太子はそれを聞いてわたくし達を振り返った。
「まだ目覚めていないようだ。準備はいいかな」
それはわたくしやレインに言われた言葉のようだったが、小さく頭を下げた。
マディウス皇太子がうなずくと、左に立っていた騎士がドアをノックした。
すぐにガチャリとドアが両開きに開かれた。
そしてわたくしは謁見の間にいたとき以上に、顔の表情筋をこわばらせた。
明るい室内はお見舞いであろう、様々な花達に彩られていた。もう、壁にそってズラリと並べられている。
残念だが、サイラスにはまったくもって似合わない部屋だった。
そろそろと歩みを進め、奥に見える大きな白い寝台に進む。
パタン、と小さな音を立てメイド2人がドアを閉めた。そして彼女らはそのまま静かについてきた。
「サイラス」
と、ライアン皇太子が沈痛な面持ちで声をかけた。
セイド様も眉間にしわを寄せている。
レインは側によることができないようで、セイド様の後ろにそっと移動して胸の前で手を握り締めていた。
そしてわたくしは寝台のすぐ近くまで歩み寄った。
サイラスは胸まで白い掛け布をされていたが、顔の右半分を覆った分厚いガーゼに、頭はほとんど覆い隠すように包帯が巻かれている。よく見れば首にも赤い傷があるが、これは軽そうだ。
「完全に意識がなかったのは2日。今は時折り目が覚めるようだが、それも短い。怪我はご覧の通りだが、頭部は右側頭部を6針縫っている。右手は骨折、全身打撲といったところだ」
淡々と説明したマディウス皇太子に、ライアン皇太子が痛ましいと呟きつつ目線を上げた。
「何が起こったかお聞きしても?」
「撤退途中で愚鈍な隊があったので直接指示に戻ったところ、なんとも運が悪いことに落石事故にあったということだ。もともと長雨で地盤がゆるんでいたことが原因らしい」
言葉もなく、ただ時折り「うっ」と小さく呻くサイラスを見守るだけの時間が過ぎた。
誰も言葉を発しないので、サイラスが時折り眉間にしわをよせているのを黙って見ていた。
「お苦しそう……」
蚊の泣くような小さなレインのつぶやきに、わたくしはとうとう我慢できずにつぶやいた。
「耐えられないわ」
思ったよりわたくしの声は通ったようだ。
なんだかよくわからないが、さっき廊下のからくりを呟いた時と同じ目でマディウス皇太子がわたくしを見た。
その目線を避けるようにサイラスを見ていたのだけど、やっぱり見逃してくれなかった。
「思ったより重傷で驚いただろう。やはりご令嬢にはショックだったようだね」
「いいえ、思ったより顔が綺麗で驚きましたわ」
こんな時に、とセイド様が目線でわたくしを非難してきた。
マディウス皇太子も少し目を細めた。
「言いたいことがあるなら構わないよ」
「まぁ、ありがとうございます」
それは心からの言葉だった。
わたくしはすぅっと浅く息を吸うと、ちらりと小さな窓を見た。
「窓を開けてよろしいでしょうか」
「なぜ?」
おもしろそうな目で見られているのに気づき、わたくしはそっと鼻の前に手を添え盛大に顔をしかめた。
「臭いですわ、この部屋。吐きそうです」
これにはレインはもとより、男3人にメイド2人も固まった。
「まったく何ですこの匂い。花をおけばいいってもんではありませんわ。お見舞いだか拷問だがわかりかねますわ。ほら、サイラスサマも痛みというより、この匂いでうなされているんじゃありませんの?わたくしでしたら、目覚めてもすぐ具合が悪くなってしまいますわ」
それに、とわたくしは壁一面、そして寝台近くまでわさわさと生い茂るように置かれている花達を見渡してうんざりした。
「お見舞いだと花を贈ればいいってわけじゃありませんでしょうに。なんだってこんな香りの強いものばかり贈られたのでしょうか。外見だけ立派なものを選んで、相手を考えてませんのね」
良く見れば寝台近くの花はどれもこれも大きく見た目が派手なものばかりで、同時にその香りも強いものが並んでいる。対して入り口辺りには小さな可憐な花や、匂いの少ない花が置かれているようだ。
「臭い、か。香水に比べればマシだと思うがね」
なぜか食ってかかるように言ってきたマディウス皇太子に、わたくしはおもわずふふっと笑みを浮かべた。
「全くですわ。香水を嗅ぎなれた殿方達にはこの匂いはマシでしょうが、生憎と出不精なわたくしめには拷問ですわ」
遠回しに「無駄にモテて鼻のイカレた男にはわからないでしょうね」と嫌味を返した。
どーだ、と見上げた先にいたマディウス皇太子は、じぃっとわたくしを観察した後口を手で覆った。
そして次の瞬間、不安げにわたくしとマディウス皇太子を交互に見ていたライアン皇太子とセイド様は、びくりと肩を震わせた。
「プハッ!アハハハッ!!」
右手で口を、左手は腹部を押さえマディウス皇太子は身をよじって笑い出した。
「お、お前達、く、臭いらしいぞ。早く窓を、アハハハ!」
どもりながらもメイドに指示を出し、若干涙の滲んだ目でわたくしを見た。
「花はどうする、シャナリーゼ嬢。捨てるか?」
「もったいないですわ。必要最低限だけ残してあとは……そうですわね、わたくしなら贈った本人が見えないところにでも飾りますわ。例えば使用人に下げ渡します」
「よし、そうしよう!」
まだ笑いながらも近くの花籠を足で小突く。
「こいつは侯爵からの贈り物だが、当人は食えない狸だ。サイラスもあまり好きじゃないし、こうして贈ってきたのだって上っ面だけだ」
「そんなもの側に置いたら余計具合が悪くなります。さっさとどかしてください」
「だがこっちの花は親身に心配している軍関係者の侯爵からだ」
「匂いのきついこの花だけ抜いて置けばよろしいですわ」
「こっちは……誰だ?おい、リスト持って来い!」
メイドの1人があわてて部屋を出て行った。
ようやく笑いが止まったマディウス皇太子は、ゆっくりとわたくしを見た。
「遠慮のない令嬢だ。呼んでよかった」
「おそれいります」
と、形だけ淑女の礼をとって答えた。
やがてエージュがメイドとともにやってきた。
「リストは持ってきたな。ではお茶にしよう。あぁ、シャナリーゼ嬢、後は頼んだ」
「は?」
と、声を出したのはライアン皇太子とセイド様。わたくしはなんとか声を飲み込んだ。
「マディウス皇太子?それはどういう……」
「言い出したのはシャナリーゼ嬢だからな。それに彼女はサイラスの婚約者候補なのだから、そのくらいしてもいいだろう」
さも当然と胸を張るマディウス皇太子に、わたくしは失礼ながら冷たい視線を浴びせた。
でもマディウス皇太子には全然効かず、そして「嫌です」と態度に出しているにもかかわらず気づかない振りをしてお茶に行こうとする。
とまどうレインの背中を片手でそっと押しながら、セイド様が小さく言った。
「すまない。だがあの方の機嫌がいいのは珍しいことなんだ。わかってくれ」
「……さすが御兄弟ですこと」
諦めに近いため息で4人を見送り、残った人物へ視線を送る。
いつもどおり澄ました顔のエージュを見れば、その手には贈りものリストであろうファイルが握られていた。
「先程マディウス様より花の選定を仰せつかりましたが、お間違いありませんか?シャナリーゼ様」
「ないわ。この臭い部屋を正常な部屋に戻すわ」
「かしこまりました」
こうしてエージュの持ってきたリストを見て、下げ渡していい花達をどんどん選んだ。そして残った花は更に吟味し、匂いの強い花を抜いたり本数を減らしたりして飾りなおした。
「この方は元将軍の地位にありまして、本来なら当主となるべきだったのですが軍に残ることを決意し、弟様に家督をお譲りされました。今は参謀となっておられます」
「……詳しい話はよくってよ」
「いえいえ、どうせなら背後関係をご存知のほうが覚えやすいものです。あ、先程のうさんくさいとサイラス様が警戒されている文官の上司がこの……」
「勘違いしないでって言ってるの!わたくしはイズーリの貴族関係や力関係なんか覚える気はないの」
こんなにおしゃべりだったかしら、と疑問がわくほど口が動くエージュにため息をつきつつわたくしは花を抜き取っていた。
「あ、それ王弟殿下からのお花です」
「……早く言ってちょうだい」
抜いた花を元に戻し、わたくしはニコニコと見守るようなエージュを恨めしげに睨んだ。
「何を言いたいの」
「いえいえ、何も」
「早く言わないとそこで寝てる怪我人の傷に塩かけるわよ」
一瞬エージュのニコニコが固まったが、すぐさま口を開く。
「お見舞いに来ていただけて感謝しております」
「ふんっ、断る余地なんてなかっただけよ。サイラスが起きたら帰るわ」
明後日誕生日なのに、何が悲しくて他国で1人過ごさなくてはならないのだろう。
まぁ、1人というのは間違いだが、しかしレインもわたくしの誕生日は知らないだろう。もちろんライアン皇太子もだ。いつもは家族でひっそり、でも幸せに祝ってもらっていたのに。
知らずにため息をついていたわたくしに、エージュがそうだ、と漏らした。
「ご提案です、シャナリーゼ様」
「くだらなかったら花を頭に挿すわよ」
「明日お時間があるとお聞きしましたので、プーリモへご案内します」
ぴたり、とわたくしの手が止まった。
「……いいの?」
「はい。サイラス様に怒られますでしょうが、シャナリーゼ様が退屈なさるよりは良いかと」
「それは嬉しいわ」
あのチョコレートの味を思い出し、わたくしは思わず口元が緩んだ。
「……そうだわ。サイラスが目を覚ましそうなことを思いついたわ」
「おや、どのような?」
「あなたも手伝ってね」
「かしこまりました」
すんなり了承したエージュに何の疑問も抱かず、わたくしは思いついた作戦を頭の中で具体的に膨らませる。
夕方、ようやく選定を終え大量の花を部屋から運び出した頃、タイミングを見計らったようにマディウス皇太子達が戻ってきた。
「やぁ、すっかりすっからかんになったな!」
まだ部屋には残り香があるが、それは気にしないでおこう。
ささっと近づいてきたレインが、そっと話しかけてきた。
「贈り物リストを使ってのお勉強だったんですってね。大変だったでしょう?」
それを聞いてわたくしはライアン皇太子と談笑するマディウス皇太子を睨んだ。
……食えない方ですこと!
そしてエージュも睨んでおいたが、彼はわたくしの視線を受けてもニコニコしている。
言いたいことはわかっているようだ。
勘違いしないでね。先程の話ならプーリモに行く話以外ぜーんぶ忘れてさしあげますわっ!!
読んでいただきありがとうございます。
また近々更新しますね。




